第21話 ルルーシュ、戦います

 僕はルルーシュ。ただのルルーシュ。

 アメリア様から力を貰い、タルタロス教団と戦う存在である。

 タルタロス教団は世界を滅ぼす為に邪神を復活させようとしているイカれた集団だ。

 子供を実験に使い、村を滅ぼし、人を殺す。

 僕の両親も殺された。


 今は仲間も増えている。

 メンバーは人工魔人と言う教団が実験で作り出した存在が殆どを占めている。

 人間も居るのだが、人工魔人や僕よりもやはり実力は劣っていた。

 だが、人間の人達は手先がとても器用で武器や服などを作成している、裏方をやってくれているのだ。


 そして今はタルタロス教団の基地の一つを攻めようとしていた。

 今回の基地はいつものような小規模のモノではなく、そこそこ大きめの場所である。

 場所は大図書館の地下に作られている。


 「はぁ。まさか誰でも読める大量の本が保管されている場所が奴らの手中に収められていたとはね⋯⋯みんなどう?」


 中に侵入している仲間に連絡を取る。

 これは師匠に最初に教えられた属性が関係ない魔術の一つ、『念話』である。

 属性の無い魔術は誰でも特訓次第で使えるようになる。とても難しいが。

 これにより仲間同士の連絡が取りやすくなっている。

 中には最初に仲間に成った人工魔人のメンバーが入っている。


 アインが率いる部隊である。

 アインは紅色の髪を持っている女性である。

 僕含め皆が10代なのだが、日頃の訓練により体格が良く大人と見た目はさほど変わらない。


 『はい。中は一般客が多いですが、中に三名教団の者が監視に居ると思われます。時々視線を感じます』


 図書館内部に基地への入口が存在する。


 「場所は?」


 『東窓付近の席、店員に紛れて管理席、最後に清掃者に紛れて正門の真反対を掃除している者です』


 「間違いは?」


 『無いかと思われます。監視役のサイクルで定期的に来ている人と同じ顔をしております』


 図書館の方に教団のメンバーを数人、客などに混ぜて侵入者を監視している。

 決まったメンバーをサイクルしているので、全ての情報を集めていれば監視役なんて居ないも同然。


 「まずは管理席に座っている奴を処分しなさい。仮初の店員を配置して」


 『かしこまりました』


 そこが一番見つかったら厄介な場所。

 だから先に潰して、後に残りの二名も処分する。


 『終わりました』


 「了解。行くよツヴァイ」


 「はーい」


 こちらも最初に仲間に成った人工魔人である。

 最初の人工魔人はアメリア様のマナで目覚めているので、どんな人も強力だ。

 幹部的なポジションと成っている。強く決めている訳では無いが、やはり年功序列と言うか入った順番と言うか、格差は出来ていた。

 順番に中に侵入して、基地内部への道を一般客にバレないように入る。


 気配を消すのもマナの消すのも可能だ。

 そのくらいの事は当たり前に出来ないといけない。

 仲間の一人に忍者の里と言う場所で育ち、忍術を指導してくれる人がいる。

 その技法の一つに影移動があるのだが、そこまで万能ではなく、一人が内部に侵入したら皆入れると言う訳では無いのだ。


 「メンバーは揃ったようね」


 一番隊と二番隊、アインとツヴァイが率いる部隊で今回は基地に侵入する。

 外側が大きので内部も広いだろうが、このメンバーで十分だと思っている。

 何故なら、この部隊は全員人工魔人であり僕は半魔人だから。


 「な、なんだ貴様ら⋯⋯」


 「はいはい。黙ろう」


 入口の方に立っていた教団メンバーを殺す。

 コイツらには慈悲を与える必要は無い。

 本格的に中に侵入する。


 「この臭い⋯⋯」


 肉が腐ったような臭いが鼻を擽る。

 確実に人が死んでいる。しかもそれを放置しているようだ。

 カプセルには人工魔人の実験体とされた人間が入っていた。

 どれもが若々しい女性だ。中には魔石を二つ埋め込まれそうな人もいた。


 「こんな幼女まで」


 まだ六歳と言った子供まで使っている。

 流石に深々と侵入したら僕達の存在はすぐに気づかれた。


 「殺せ。少しは生け捕りにしろ」


 『御意!』


 研究メンバーなのだろう。

 実力は大したモノではなく、簡単に制圧出来そうだ。

 研究資料も沢山ありそうだ。


 「むっ」


 クリスタルナイフが飛んで来たので剣を引き抜いて防いだ。

 透き通るナイスは全く見えない。殺意を感じ取ってようやく防げる。

 僕でも殺意を感じ取れるって事は、そこまで強くは無いな。

 正確に首を狙って来たので実力者が数人居ると思う。

 普通はそうだろう。戦闘員を置かない理由がない。


 「貴様ら何者だ!」


 暗闇から一瞬で出て来た戦闘員がナイフを繰り出して来る。

 剣で防ぐ。

 戦闘員は生け捕りにするのが面倒だ。


 「我々は何者でもない。僕以外のメンバーは完全に個の名も捨てた存在。世界に見られてない裏の存在。ただ、貴様らのような外道を滅ぼす集団だ」


 「何を訳の分かるぬ事を!」


 弾き飛ばす。

 ナイフを構え直し、身体能力をしながら迫って来る。


 「なぜこのような集団に屈する」


 「それが我々の生き方だからだ」


 「そうか」


 そいつの一撃を受けて、流して体勢を崩したところでナイフを弾き飛ばす。

 どうしてこんな外道集団の味方をするのかは分からない。分かろうとも思わない。

 ただ、世界を危機に晒す集団の仲間だと言うのなら、僕は容赦なく殺す。


 「くっ」


 無防備な相手に向けて剣を振り下ろす。

 僕の体が淡く輝く。マナでの身体強化だ。

 相手も強化して防ごうとするが、その程度ではこの刃は防げない。


 「ぐああああ!」


 「⋯⋯ここも本拠地では無いのか」


 戦闘員が奥からぞろぞろと来るがそれは仲間に任せる事にする。

 僕はこの中で一番強いので、相手の中でも一番強い奴を担当する。

 ソイツは筋骨隆々の男だ。

 奥からゆっくりと剣を構えながら迫って来る。


 「僕から行くか」


 相手がゆっくりと歩くので僕から行く事にした。

 仲間を差し置いて僕を殺しに向かって来た奴は流れるように返り討ちにする。


 「全く。ただのドブネズミじゃないのか」


 「臭いな。お前からは他の奴らよりも沢山の死臭を感じるぞ」


 「ふぅん。ねぇ、なんでこんなバカな事をするんだ?」


 「それはこっちのセリフだ。お前らには人間の心がないのか? 人を殺して、それで得られるのになんの価値があるんだ。世界を脅かそうとして、なんの価値があるんだ」


 「知るかよ」


 語る言葉は少なくても構わない。

 相手から感じる殺意が全ての答えを語っている。


 「はっ!」


 相手から振り下ろされる凶刃を防ぐ。


 「ぬっ!」


 予想よりも剣が重い。


 「驚いたか? 俺は重力魔術が使えるんだよ!」


 「剣を振るいながら術式を構築したのか。戦う為に作られた存在か」


 教団の戦闘員は生まれてから戦闘訓練を受けている存在が居ると、どこかの資料で見た事がある。

 幼い頃から殺しや戦いの技術を教えられているのなら、男のような若さでもその実力の高さに納得が行く。

 だけど、この程度なら。


 「重力魔術に頼ってもこの程度の重みか。師匠は、これをマナの強化なしでも成し遂げるぞ! めっちゃ手加減してな!」


 一気にマナを込めて弾く。

 余裕の笑みを崩さないままにバックステップで距離を離される。

 それを一瞬で肉薄して剣を振り下ろす。

 剣と剣が交わり合う。


 「答えろ。お前から感じる死臭の原因を!」


 「はは! 良いぜ!」


 剣の斬り合い。

 剣術は互角で互いに決め手がない。


 「魔石は子供の方が適応しやすいって言う研究結果を知ってるか!」


 炎の魔術が剣の交わり合いの中に混ざる。

 それを避けながらこちらも水の弾丸を放つ。

 僕も剣で戦いながら術式を構築する事は出来る。

 世間ではこれを魔剣士と呼ぶらしい。


 「だから成人以上の女とかは何しても許されるんだよ!」


 「⋯⋯ほぅ」


 「楽しいぜ! 世間では犯罪行為でも、ここならバレない! 自由って最高だよな!」


 「他人の自由を奪う奴が、自由を謳歌するな!」


 距離を離して、小規模な魔術の術式を三個形成する。

 氷の弾丸が三つ、同時に奴を貫かんと放たれる。


 「魔術の技術はお前の方が高いようだな!」


 だが、戦いながらの術式構築でありながら同時に三つ、一つの魔術が誇る火力は低い。

 相手の放つマナの圧力だけで消されて攻めて来る。

 マナ総量を偽装していたのか、解放されたマナが膨れ上がった。


 「これを受けられるか!」


 「ちぃ!」


 剣にマナを流して振り下ろされる。

 武器にまでマナを流せるのか。かなりの技術があるようだ。

 でも、それなら躱せ⋯⋯僕はすぐさま避けずに防ぐ。


 「お前も俺が楽しくなる為の道具にしてやる! だからもっと楽しませろ!」


 「生憎と僕は戦いを楽しむ趣味が無い!」


 防いだ理由は至極単純、見えている斬撃が偽物だと判断したからだ。

 蜃気楼と言う技術に似ている。

 防御しないで回避していたら、斬撃をこの身で受けていた。

 元々の肉体スペックは相手の方が上か。


 「ぬお!」


 影移動を使って少し後ろに移動して距離を取った。


 「手伝いましょうか?」


 「アイン。僕を侮るな。助けは不要だ」


 「おいおい。それはこっちのセリフだぜ。そこら辺に肉塊として転がっている有象無象と俺を一緒にするな」


 「僕に取って、外道の人間なんてどれも同じだよ。⋯⋯楽しませて欲しいんだよな? 良いよ。楽しませてあげる」


 「あぁん?」


 「お前は女をいたぶるのが好きなんだよな?」


 「ああ! あの泣き叫び、助けを願う姿は滑稽だぞ! 最期の締まり具合もな!」


 吐き気のする笑い声だな。

 我が仲間達が顔を顰める。


 「僕もこの力を使いたかった」


 実戦でどこまで使えるのか、実験しないといけないからな。

 僕は剣を床に突き刺し、拳を固める。

 そのまま拳を僕の心臓に向かって振り下ろし、叩く。

 強い振動が身体中に響く。


 「あぁん?」


 不審がる男。

 この力を使わなくても奴には勝てる。その自信がある。

 でも、これは奴らタルタロス教団に知らしめる為に使うのだ。

 お前らを狙う存在は只者ではないとな。


 「ルルーシュ様!」


 アインの制止の声も僕の耳には届かない。

 一度強く揺らしたら、すぐさま起きる。

 鼓動が速くなる。


 「目覚めろ、龍の心臓ドラゴンハート!」

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