告白を断ったら天災級ダンジョンの奥地で放置されたけど、元龍王候補の力を得たので神を越える力を研究したいと思います〜復讐とかざまぁとか考えてないので関わらないで!〜
第20話 孤児院魔術士、グリフォンを倒す
第20話 孤児院魔術士、グリフォンを倒す
「はっ!!」
ハザールさんの一閃がオークを切り裂いた。
ふむ。強化させれば一流の技術があるので綺麗にモンスターが倒せるな。
私が倒すと魔術になるので、殆ど全身丸焦げ状態になる。
これなら皮も素材として売れるモンスターを綺麗に手に入るな。
強化魔術も属性は存在しない魔術である。
マナでの身体強化を苦手とする人に対して使うのが基本的であり、研究された魔術だ。
マナを与えてしまうので、マナが無くて相手に気づかれない、そんな長所を無くしてしまう。
「ん〜」
「どうしたの?」
「いや。やっぱりマナが無いって言う長所を活かしたいなぁって」
「⋯⋯それやると大抵のモンスターと戦えなくなるんだけど。それに、アメリアの強化魔術が上手で、ここまでマナ隠せているなら本当に強いモンスターくらいにしかバレないでしょ」
自分に纏っているマナを感知出来るのか?
気配を遮断するだけじゃなくて、気配を探る力も優れているのかもしれない。
強化魔術はファフニールが自ら研究していた様で、その恩恵を授かっている。
「そうだなぁ。まぁ、マナが無い状態での訓練によって、人よりも高い技術を持つ事が出来たのは良かった事か」
「そうだね」
ルルーシュにも伝えておこうかな?
仲間達の訓練にマナを使わせない訓練法を試させて欲しいところだ。
⋯⋯あれ?
私って本当にルルーシュが何しているか分からないし知らないんだけど、大丈夫かな?
「どうした?」
「いや。あ、私エルフの里に行きたいから、明日の予定なんだけど」
「うん。何かな?」
「一緒に来ますか?」
「是非お供させて欲しい」
「分かりました。取り敢えず今日は、パーティ結成記念として戦いまくって、戦闘に慣れましょう!」
「おー!」
それから成る可く大きめのモンスターを中心に狩りを行った。
孤児院にて、シャルが話しかけて来る。
「今日はあまり汚れてないね。戦ってた?」
ただ単に走るよりも戦っている方が服は汚れないと言う不思議。
「うん。実はさ」
私はシャルにハザールさんの事を伝えた。
私の存在を完全に知らないようだったので、本当の名前を伝えている事。
でも仮面は外していない事。
そして何よりも、マナを持ってない事を。
「マナが無い人間か。信じ難いね」
「だよな。私もびっくりだよ」
ルアにも話を聞きたい所なのだが、子供達と神経衰弱をしていた。
大人気なく全力で戦うかと思っていたら、子供達に勝ちを譲っていた。
「ルアはかなり馴染んだな」
「だね。ルアはここの一員、家族だよ」
「⋯⋯」
シャルの目が、なんかすごく暖かい。
何かあったのかな?
と言うか、昨日からそうだった気がする。
昨日はピクニックをしたとかなんとか言っていたけど、何かあったのかな。
シャルがルアを信用するに至る何かが。
少しだけ悔しいと言うか、モヤモヤするな。
「な、なんじゃ? (なんか凄い睨んでるうう! 怖いい!)」
「あんまりルアを虐めないでね?」
「見てるだけで虐め判定!」
「睨んでるよ」
子供達はルアに手作りの髪飾りを与えていた。
私もなんかシャルにあげようかな。
シャルは何をあげたら喜んでくれるかな? なんでも喜びそうだな。
翌日。
私達はグリフォンと言うBランク推奨モンスターの中でもAに近いモンスターと戦っていた。
空を飛んで風の魔術を使って来るのでとても厄介なモンスターだ。
強化したハザールさんが魔術を切り飛ばしてくれるので、私は攻撃の魔術に集中する。
「落雷!」
空に顕現させた術式から雷がグリフォンに向かって落ちる。
だが、身をくるりと翻して虚しく地面に衝突する。
「だああああ! なんで初撃は毎回躱されるんだああああ!」
「ど、どうした!」
「なんでもない!」
グリフォンが咆哮をあげて私に加速して迫って来る。
その間にハザールさんが入り込んで来る。
「はっ!」
抜刀術を駆使して爪での攻撃を防いでくれる。
中々に連携が様になってるな。
近接が一人しかいないから、相手のヘイトと攻撃のブロックを一人で補ってくれている。
これも傭兵時代に培ったのかもしれない。
一体どこで何をしていたのやら。
「一秒後に離れて! 雷帝!」
私を中心に広がる雷撃がグリフォンを包み込まんとする。
しかし、ワーウルフよりも機動力が高く、そしてこの場所は野原で広い。
飛行能力のあるグリフォンは翼を羽ばたかせて真上に飛んで逃げる。
「避けられるのは想定済み!」
避けられた後の攻撃をこちとら意識してたんだ!
二重術式構築、昔の私でも簡単な魔術でしか出来なかった高度な技術。
でも、今の私なら強力な魔術でも可能となっている。
雷帝の他にももう一つ用意してあった術式を展開する。
「雷龍!」
私のマナが色濃く入った事により紅桔梗色の雷の龍がグリフォンに迫る。
前の猲狙の時よりも火力が低めで攻撃範囲も狭い魔術だ。
故に制御がしやすく、今では完璧にずっとコントロール出来る。
簡単には避けられない!
『ファン!』
「うっし!」
翼の一枚を貫いて破壊した。
それにより空に居られなくなったグリフォンは地面に向かって頭から落下する。
魔術を使って体勢を立て直そうとしているが、上手く出来ていない。
その今がチャンスだ。
「グリフォンの羽は高値で売れる! 行ってくださいハザールさん! 電磁加速! 雷電強化!」
二つの電属性を付与した強化魔術でハザールさんをさらに強化して加速させる。
私の得意な電属性の魔術とファフニールが研究した強化魔術の複合術式の魔術だ。
一気に加速したハザールさんは川の水のように、スラリと流れる様に、鞘から刀を抜いた。
抜刀術により放たれた一撃の一閃でグリフォンの首が綺麗に切断された。
「グリフォン討伐、完了だね」
「やりましたねハザールさん!」
グリフォンの死骸はこちらで貰って良いと許可は貰っている。
今回、グリフォンを討伐しているのには理由がある。
川を渡るための舟、最近村の畑を荒らしているグリフォンを討伐したらタダで乗せてくれると申し出があったのだ。
ギルドに依頼すると金もかかるとの事で、都合良く私達が使われた。
まぁでも、結局どちらともマイナスはないけどね。
私達は舟がタダになり、しかもグリフォンの素材を貰えるから金も手に入る。
村は畑が荒らされる事無く、ギルドに払う金よりも少ない舟の料金で問題が無くなる。
「いやぁ。まさかの臨時収入! やったね」
「凄い嬉しそうだな」
「ソロ時代から見たらBランクのモンスターの素材を売るって、多分今回が初めてなんだよなぁ」
Bランクモンスターはこれで三体目だ。
一体目のワーウルフは蘇られせて、今は何しているか不明の状態で放置。
二体目の猲狙は死体事消滅させてしまったので売れなかった。
三体目がグリフォンだ。
「そんじゃ、行きますか」
グリフォンを解体して素材を村に運んで行く。
ここで売っても大したお金は手に入らないので、村に肉を過半数寄付して、ハザールさんに許可を取ってマーカーを人目のない場所に埋めて孤児院に帰還する。
シャルに肉だけ渡す。グリフォンの肉は高級肉である。
晩御飯にハザールさんも呼ぶことを伝えて、素材をギルドに運んでお金を受け取る。
これも後で分ける為に孤児院に置いて行く。
マーカーに向かって転移する。
転移したらマーカーは砕け散る。
ハザールさんがそこで待っていた。
「おまたせ」
「それじゃ、行こうか」
「ああ!」
ハザールさんには転移魔術も見せている。
初めて見せた時は少しだけ驚いていたが、想像以上に驚いてはいなかった。
多分、転移魔術がどれだけ凄いのか理解していないのだろう。
別に承認欲求を満たしたい訳では無いから問題はないけどね。船乗り場に向かった。
「おお。冒険者さん方」
「それじゃ、よろしくお願いしますね」
「ああ。まさか肉を分けて頂けるとは思ってもみませんでしたよ。みんな喜んでいるし、うちの女房もありがとうって言ってたぜ。張り切って動かせて貰うぜ」
木製の舟を操る操縦士はちゃんとした免許を必要とする。
櫂を使うにもマナを魔石へと流して舟を操るにも免許が必要とする。
免許必須の職業だけど、安定している訳では無い。
必要としてくれる人がいないと意味が無いからだ。
それでも生活が出来る程には稼げているのだろう。
優雅な川の旅。
近くには護衛用の冒険者達が他の舟を使って一緒に向かっている。
川を挟んだ向こう側にも村がある。
「村の宿にチェックインしたらハザールさんはそこで休んでくれませんか? エルフの里には私一人で行きます」
「あぁ。分かったよ。一緒に行きたいけど、下手を打ったら足でまといになりそうだし、冒険者のパーティ関係だけでは、付いて行ってはダメな領域なんだろ?」
「ありがと。すまないね。ここまで同行させて」
「いや。ここは初めて来るし問題ないよ」
良い人だな。
本当なら一緒にエルフの里に行こうと思ったのだが、彼女の言う通り本当に足でまといになる可能性があったので同行させないでおく。
もしかしたら戦いになるかもしれないしね。
村から片道一時間かな? 全力で走って。
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