告白を断ったら天災級ダンジョンの奥地で放置されたけど、元龍王候補の力を得たので神を越える力を研究したいと思います〜復讐とかざまぁとか考えてないので関わらないで!〜
第10話 孤児院魔術士、連携して悪魔と戦う
第10話 孤児院魔術士、連携して悪魔と戦う
階段を降りた先では人の声が聞こえ、光が差し込む部屋が存在していた。
中をそっと二人で覗く。
大きな術式を囲むようにフードを深く被った人達が大勢居る。
「あの格好⋯⋯」
「心当たりあるの?」
「えっと確か、タル、タル⋯⋯」
ルルーシュが言っていた教団だ。同じ格好をしている。
タル⋯⋯タル。
「タルタルソース。そう、アイツらはタルタルソース教団で邪神復活を目論んでる奴らだ」
「そんな如何にもソースみたいな名前をしておいて考える事が異端ね。邪神って世界を滅ぼしたとも言われている存在じゃない。一体何を⋯⋯あれって魔界と繋ぐ扉の術式じゃない?」
「確かに」
よく見て見れば確かにその通りだ。
これも筆記突破の為に少しだけ勉強した程度だけど分かる。
悪魔召喚の儀式か⋯⋯前は自分達の命を引き換えに中位悪魔を召喚していた。
今回は術式を使って供物を捧げての召喚だろう。
「邪神復活に悪魔って関連性があるのかな?」
タルタルソース教団の奴らって悪魔好きだね。
どんな悪魔が召喚されるのか少しだけ気になってしまう自分がいる。
この程度の儀式規模なら強い悪魔は呼び出されないから少しばかり安心だ。
「アメリア止めて」
「え?」
「あの人達、供物を用意してない!」
「なっ!」
確かに本来供物を術式の中央に備えて召喚を行う。
それが無い。なんで?
そんな事をした場合、対価として召喚者の命を奪い取る。
もしかしたらここに居る奴ら全員の命を奪うかもしれない。
そうなったら悪魔との取引も不可能になる。わざわざそんなマネはしないだろう。
他に何らかの方法があるも見るべきだけど、これは止めた方が良いだろう。
もしかしたら賞金が出るかもしれないし、一人くらいルルーシュに渡せば良い。
そう思い私が飛び出した瞬間、儀式は終了を告げた。
「くっ。間に合わなかったか」
黒紫色のマナ粒子が辺りを照らし、黒い霧が術式から登って行く。
飛び出した私の横にシャルが並ぶ。
霧は徐々にその形を形成して行く。
「妾を呼び出したのは貴様らか」
「如何にも、貴様に⋯⋯」
取引を持ちかけようとした教団の一人が一瞬で体を消された。
儀式によって悪魔と魂の繋がりが出来ていたようだ。その繋がりを利用して魂を捕食しやがった。
残った体に宿っているマナなども全て吸い取った事によって体が消滅している。
「アイツ、なかなかの年長者か?」
悪魔は生きた年月分強い傾向がある。
「ま、待て悪魔! 貴様と取引がしたい!」
「妾を呼び出したんだから、若くて元気な男の子か美しい女の子が居ないと、ダメでしょ? なのでこれはその罰です」
軽やかな声と共に教団の奴らが全員消えた。
そして私達の方に目を向ける。
男を惑わすような抜群のスタイルに容姿。異質に生えている角や羽。そして先端がハート型の尻尾を生やしている。
「サキュバスか」
「ちょっと君達。そんな妾達の一族を侮辱するような言い方は辞めてくれる? それはこの世界の魔族の事でしょ? 妾は淫魔族よ」
サキュバスの祖先に当たると言われている悪魔族⋯⋯それが淫魔族。
当然性能は魔族のサキュバスよりも何段階も上がっている。
魔界出身と現世出身では地力が違う。
「にしても君達可愛いわね。コレクションに加えたいわね。特にそこのエルフ⋯⋯貴女は美味しいそうだわ」
「あぁん?」
「っ! (な、何このマナは! 本当に人間なの)」
シャルを狙うって言うなら私は容赦しない。
どうせ戦う予定だ。
こんなのが世に放たれたら街中の男達が再起不能になる。下手したら死ぬ。
それは阻止しないといけない。
「取り敢えず魔界に戻すから」
私の体から紅桔梗色の電気が迸る。
「アメリア⋯⋯本当に強くなったね。こっちもそれなりにやれるよ!」
シャルが魔術の準備を始める。
実戦に身を置いていなかったシャルの術式構築スピードは当然私よりも劣る。
それは相手の悪魔には致命的だったようだ。
「いただきまーす!」
炎の魔術を発動させようとしていたシャルに右手を伸ばす悪魔。
そんなのは私が許す訳がない。
「雷電!」
雷が一瞬にして悪魔に襲いかかる。
最初の一撃は避けられる風潮でも私にはあるのか、あっさり避けられた。
だけどその先に向かってシャルの火炎が飛ぶ。
「そこまで精密じゃないわね」
それをマナを込めた右手で薙ぎ払いやがった。
私はシャルを守る為に踏み込めずにいた。それを分かってか嫌な笑みを浮かべてくる。
今の私の感覚はかなり敏感で研ぎ澄まされている。
だから微力の気温変化ですら私には分かる。
「それじゃ、これならどう! 死なないでねコレクション候補達!」
「それはこっちのセリフだ露出狂悪魔!」
「ヘルフレア!」
「雷迎!」
相手から放たれる地獄の豪華と私が放つ極大の電撃が衝突する。
その力は互角のようで相殺された。
もしも私が龍眼を使えば一瞬で勝負はつく。
だけど、龍眼を使うと目が良すぎて情報量が多く、今の私では捌けずにオーバーヒートする。
そうなると隙を与えてしまうので、使う事が出来ない。
「隙ありよ」
相殺された事によって煙が生じ、それを利用して瞬時に私の背後に移動した悪魔。
だけどそんなの読めている。
分かっていたなら対策は出来る。
「ぬ? いぎゃあああああああ!」
「地雷電。設置型トラップ魔術だ」
「ちぃ」
堪らず距離を離す。
「解説がうざいわね。そのくらい知ってるわよ! ⋯⋯良いでしょう。貴女はコレクションせずにここで殺してあげる。無駄に強いようだからね。⋯⋯その分そちらのエルフには存分に楽しませて貰うからね。道具として、見世物として」
「お前は私を怒らせるのが好きだなぁ」
「ッ!」
私の怒りに寄って抑えていたマナが外に放出される。
その量は現段階にして相手の放っているマナを大きく超える。
突然相手も力の制御は出来るだろうから、漏れ出るマナは抑えているだろう。
そもそもマナの量をバレてしまうのは魔術士として致命的だから、隠す技術は基礎中の基礎になる。
「面倒くさそうね。バーニングストーム!」
炎の渦が私に向かって迫って来る。
それは当然シャルも巻き込まれてしまう。横目でチラリとシャルを見る。
その顔に笑みが見えた。⋯⋯仕込みは終わったようだ。
「行くよシャル!」
私は渦に向かって突っ込む。
「なっ! それなら燃え尽きとけ!」
後一ミリで炎に呑まれる⋯⋯その瞬間大気が一気に豹変する。
凍り付くような低温空間となり、壁には氷が張り巡る。
だが、この現状はあくまで副作用だ。
「な、んで」
相手の使った魔術の炎が完全に氷へと変貌した。
炎すら凍らされる魔術をシャルは準備をしていた。
術式の構築スピードは確かに遅い。だが、昔の私よりも精密に構築出来、威力も高い。
何よりも今の私よりも得意な魔術が多く、使える属性が多い。
エルフだからじゃない。シャルだからだ。
「舐めすぎたな!」
その氷を拳で粉砕しながら突き進み、相手の腕を掴んだ。
強く掴んで絶対に逃がさない。
魔術士同士の戦いは情報戦だ。
基本的にマナ量で相手の実力が大まかに分かる。
だから最初は弱い攻撃で相手の出方を伺い、得意分野を見計らう。
相手に勝てる自信を持ってようやく本領を発揮するのだ。
最初に強力な一撃を与えるにはそれなりの準備などが必要だ。
後はタイミング。
「こんなの、ヘル⋯⋯」
「帯電!」
「いぎゃあああああ!」
魔術を使おうとした瞬間に電気を流してキャンセルさせる。
それを繰り返す。
「帯電、帯電、帯電」
「あ、アメリア?」
敢えて弱い魔術を繰り返し使って相手を弱らせる。
じわじわと攻撃して行く。
魔術を使う度に絶叫が響き渡る。
その都度、シャルの顔が同情的に成る。
「そ、そろそろ終わらせたら? ちょっと不憫って言うか、さ」
「シャルが言うなら良いけど。それじゃ、殺しますか」
魔界から召喚された悪魔は現世で殺されても魔界で蘇る。
魂が存在する限り何回でも蘇る。
「嫌だ! 止めてください! それだけは、それだけは止めてください!」
悪魔が焦った様子で声を絞り出した。
悪魔は感情のコントロールが上手い。
だけど、本当に限界が来るとすぐに本性を顕にする。
コントロールが上手いのだが、その限界が人間よりも低い。
これは⋯⋯本気だ。
「お願いします。なんでもします。言う事も聞きます。だからお願いです! 魔界にだけは、魔界にだけは戻りたくない!」
その悲しくも救いを求めるかのような目は私達の心を揺らすには十二分である。
「少しだけ話は聞いてやるよ」
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