告白を断ったら天災級ダンジョンの奥地で放置されたけど、元龍王候補の力を得たので神を越える力を研究したいと思います〜復讐とかざまぁとか考えてないので関わらないで!〜
第9話 孤児院魔術士、エルフとデートする
第9話 孤児院魔術士、エルフとデートする
「帰ったぞ!」
今日は学校も休みで皆が孤児院に揃っていた。
うーん内職中。
でも今日からその必要は無いぞ! なぜなら私が帰って来たから!
「シャル。食材とか適当に買って来たよー」
流石に一人分の荷物しか持てなかったので、昼の分しか買えてない。
夜とか明日とかのためにも昼からはシャルと買い出しに行きたい所だ。
「おかえりアメリア。今から作るね」
「頼みまっせ!」
シャルの本格的な手料理がようやく食べられる。
私は料理とかさっぱり出来ないので、他の準備とかをする。
ケンケン達も手伝ってくれる。
「ケンケン大きく成ったね〜。私よりも身長大きいじゃん。流石は男の子」
「茶化すなよ。と言うか、あんまり身長には触れるな」
小声で忠告された。
一体なぜ?
あ、理由が分かった。
ヴィディが凄くどす黒いオーラを放ってる。
確かに男の子にしては身長が低い気がする。ユリユリよりも低い。
いや、ユリユリは女性の中でも身長が高い方だな。
「そう言えば皆は今学校で何習ってるの?」
「今は基礎学とマナの基礎技術って所だね。まだ入学して間もないし」
「成程ね」
「シャル姉ちゃんからマナの扱いとか教わってから、実技に関しては飛び抜けて高いよ皆。特にユリユリは実技一位だよ」
「えっへん!」
胸を張るユリユリ。
いくつに成ってもそれが可愛らしい事で。撫でてやろう。
「うへへ。褒めて褒めて」
「うんうん。凄いね頑張ったね」
「うん! いつかアメリアさんを超えるもんね!」
「ははは! 言ってくれるな若造! ⋯⋯絶対に無理だから諦めなさい」
「嫌だね」
べー、と舌を出して否定してくる。
まぁ私を抜かしてくれるなら有望株だ。期待しないで待っておこう。
なぜなら私はもっと高みに行く予定だからだ。
人間では到達不可能な領域まで。
その為には完璧に今のマナを扱えるようになり、世界を知り神を知り、龍眼やファフニールの知識も使いこなさいといけない。
私はまだ孵ったばかりの雛だ。
「出来たよ」
「おお! めっちゃいい匂い! これはカレーだな!」
「正解。と言うかそれが食べたくてスパイスとか全部揃えて来たでしょ」
「まぁね」
様々なスパイスを混ぜ合わせて作られるピリッと辛いカレーと言う料理。
白米と合わせるとこれまた美味い。ナンとかうどんでも全然合うけどね。
「と言うか米炊けるの速くない? 技術の進歩?」
「昔使ってた炊飯器はもう壊れて使えてないし、家庭魔具なんて当分買えてないわよ。それにそんなに早くないわよ」
家庭魔具はマナを使った便利道具だ。
扇風機、駆動掃除機などなど。
家庭に一台は欲しい道具なのだが、少々値が張る。
それでも買うだけの価値は全然ある。
昔は米を炊くだけでも一苦労だと言われていたが、今では米と水を入れてマナを込めてタイマーをセットするだけだ。
ま、私達はその昔ながらの方法で米を炊いている訳だけど。
それでも味に変化は無い。
「シャルの腕が落ちてないと良いけどね」
「それは食べてからのお楽しみ。⋯⋯ほら皆も食べよ。おかわりもあるから、じゃんじゃん食べて腹を満たそう!」
シャルが満面の笑みで子供達を集める。
皆で食卓を囲んでご飯を食べる⋯⋯ひたすらファフニールを倒す事を考えてモンスターを焼いて食ってた時には夢に見てたな。
寝てないからあくまで妄想していただけだけど。
「頂きます」
木製スプーンですくい上げて口に運ぶ。
口の中でジュワリと広がる甘さがなんとも言えない幸福感を与える。
「⋯⋯甘い?」
「いきなり辛いモノから始めると舌がおかしくなると思ってね。甘めにした。子供達も久しぶりだからね」
「なるほど。美味いから文句は無し!」
「褒めてもおかわりしか出ないぞ〜」
『おかわり!』
皆と一緒におかわりを宣言。
独りだと大変なので私も手伝うけど。
久しぶりに満腹に成って笑顔の子供達を見るのは、私もシャルもとても嬉しい。
それは年長組も同じようだ。
美味い飯と満腹感は人を笑顔にする。笑顔は人を幸せにする。
まさにその通りだ。
洗い物は水魔術を使えば一瞬で終わる。洗剤を使うよりも綺麗に洗える。
「シャルって私よりも得意属性多いよね」
「まぁ。元々マナと親和性の高いエルフだからね。それが影響してるんでしょ」
「買い出し行かない? その、一緒に」
私は意を決して誘ってみる。
もう義務教育に行ける年齢の人達が居るので留守番は問題ない筈だ。
あまり一緒に出かける機会がないので、このタイミングで声を掛けた。
本当なら昼からも金を稼ぎに向かいたいのだが、やっぱりもう少しだけシャルに甘えたい私が居る。
「良いよ行こっか。作りたい料理に合わせて食材を買いたいし」
「ほ、ほんと!」
「うん! 行こ」
「すぐ準備して来る! ⋯⋯バッグと金以外に準備する物無いから終わったわ」
「ふふふ。行こっか」
子供達をケンケン達に任せて私達はスーパーに向かった。
そこでは様々な食材が一箇所に集まっているので、多くの物を買いたいならそこが一番楽である。
調味料もあるしね。
いつもなら市場の方を利用している。そっちの方が優遇して貰えたりするからね。
「私って死んでる事に成ってるけど、市場の人達、私の事どう思ってるんだろ」
「自分達と同じだよ。皆信じてない。アメリアの人柄を理解してくれてるよ」
「それは、嬉しいな。落ち着いたらこっそり顔出してみるよ。また肉とか割引してくれねーかなー」
「そうだね。実際まだお世話に成ってるから無理な要求は止めてね? 売れ残りとか、優先的に分けて貰ってるんだから」
「やっぱ最後にありがたみを感じるのは人間関係よな」
人間関係、か。
ダメだダメだ。昔のパーティの事は考えない。考えちゃダメ!
気を取り直してシャルとの時間を楽しもう。
スーパーで買い物を終えて帰っている。
金貨一枚分の買い物をした。調味料とかそこら辺も一気に揃えたから三日分くらいしか食料は買えてない。
もしもワーウルフを復活させずにいたら報酬の宝物の中身はもっとグレードが高かったのだろうか。
そこは分かんいな。
倒した瞬間に生成されたのか、宝箱を開けた瞬間に生成されたのか。
生成されるタイミングで性能は変わるのか、とか。
そんなのは開けてみないと分からない。もしかしたら神なら分かるかもしれない。
神を知るにはまずは神に話を聞いてみるしかないか。
まずは生活基盤を固める事が先決だけど。
余裕があったらエルフの里に行こうかな。確かあそこって神が居た筈だし。
「どうしたの?」
「いやちょっと考え事。それよりもシャルが持たなくても荷物全部私が持つよ? こう見えてもそこら辺のマッチョマンよりも力持ちだし」
「それだとこっちの気が収まらないの」
「そうかい」
相変わらず優しいな。
帰ったら二人だけの時間が終わってしまう。
それが何処と無く寂しい感じがするけど、またこのような時間はあるだろう。
これからもシャルにはいっぱい迷惑をかけてしまうかもしれない。
でも、きっと彼女なら⋯⋯。
「ッ!」
なんかマナの波動を感じた。
「どうしたの?」
「シャル、先帰ってて! ちょっと急用が出来た」
「待って!」
氷の魔術で動きが止められる。
周囲にバレないように腕と腕を繋ぐ程度の小規模な物だ。
こんなのはすぐに破壊出来るけど、それを私の感情が許さない。
「何かあったの?」
「マナの波動を感じた。方角的に魔術の練習とかが出来る場所じゃない。だから気になった」
「ついて行く」
「でも!」
「確かに戦いに慣れてないよ。マナの扱いが人よりも出来て魔術も色々使えるけど、それは戦いのために培ったモノじゃないしね。でもさ、アメリアを一人で行かせるのは嫌だよ。街中なんだからさ、せめて傍に居させて」
「危険かもよ?」
「それはアメリアも変わらない。足でまといには成らないよ」
これはいくら説得しても動かないな。
「分かった。行こうか」
シャルはちょっと頑固な一面があるので私が折れる。
流石に荷物を持っての移動は時間が掛かってしまうので、私が全部持つ事にする。
孤児院に帰る暇はないと直感が告げる。
マナの感じた方に進んでいくと、家屋の壁から異質なマナを感じる。
ただの壁に見えるけど、違う。路地裏で人通りも少ない。
「ここに荷物は置いて行こう。一応結界の幻影を施しておくよ」
「相変わらず便利よね」
「結界は得意分野の一つだよ」
そして私は壁の中に入った。
やっぱりと言うか、あれはただの幻術だな。
偽物の壁だった。しかも人の意識にも止まらないような細工もされてた。
下り階段が続いている。
この下から感じるマナが無ければ私もこの壁には気づかなかっただろう。そもそもこんな所通らないし。
「まさか街中にこんな所があるなんて」
「そうだね。急ごう。なんか嫌な感じがする」
火の魔術で光を確保して、私達は奥へと進んだ。
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