六月のほたるい

11

 梅雨に入り、毎日雨続きだったのが嘘のように今朝はカラッと晴れたらしい。部屋にある窓に近づくと日の光が全身に当たった。


 久し振りに浴びた日光の眩しさは仕事終わりの疲れた目には毒だった。眩しさにキュッと目を細める。


 と同時に意図せず涙が出てきたらしい。頬に伝う水分はやはりいつも通り顎から落ちる時に光へ変化するようだ。


 今回の涙は太陽光に対する防衛反応なのだろうか。それとも最近涙腺が緩くなっているせいだろうか──ちなみにここ一、二週間くらいの期間、一人でいる時は涙が溢れて止まらないのだ。まぁでも悲しいとかは感じない──。


「……」


 つい一ヶ月前は二、三日で消えていた涙の光。しかし今では一週間経っても消えなくなってしまっている。


 部屋が涙の光でいっぱいになっている現状を見て、これはどうにかしないといけないと頭では思う。


 が、これがなんの症状なのかがそもそも分からないため、対策も取れず今まで放置されていたのだ。断じて蛍の灯のようで綺麗だったから放っておいたわけではない。


「これは本格的にどうにかしないと……」


 取り敢えず光を食べてお腹の中に消してしまおうか。そんな短絡的な考えに至った。どうせ光は元を辿れば涙なので有害なものは無いはず、と。そう決めつけて光を一つ口に入れる。


「……味はなし。」


 なみだに味なんて求めてもいないが。まあ、いいや。この後身体に影響が出てもどうでも良いので、気にせず光を食べ尽くすことにした。









 放課後になり、今日も今日とて生徒会の仕事。朝に涙の光を食べてから今まで体調の不具合は起きず、まずは一安心。


 さて安心したところで生徒会の仕事を終わらせましょう。山積みになったそれをジッと三秒眺め、だいたいどれくらいの時間がかかるかを脳内で計算する。ふむ、集中すれば最終下校時間には間に合う程度だろうか。


 ならば早速取り掛かろう、と意気込んでペンを持った時、コンコンと控えめなノック音が聞こえてきた。その後開いた扉からひょこっと現れたのは一人の生徒。


「明鏡様、いらっしゃいますか? 相談があって……今、良いですか?」

「もちろん。では隣の会議室に行きましょうか。」

「あ、ありがとうございます……」


 この方は一年生の歌保さん、でしたね。不安そうな顔で私の表情を窺っているご様子。私にアドバイス出来るものなら良いのですが……


 そんな不安を心の奥底へ隠すようにフワリと笑みを浮かべて会議室へと向かう。


 残った仕事は家に持ち帰ってやれば問題ない。最近は一睡も出来ていないから、家にいる間の暇つぶしが出来てある意味助かった。

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