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「やっぱり私がシスイ様の携帯を準備しますよ!」


 珈夜さんが我先にと提案してくれた。しかし私の家の事情というものもある。多分携帯を持ったとしても、あの人達にすぐバレて没収されるだろう。なんたってあの自室には監視カメラが設置されているのだから。


 そんなこともあるのでここは断ろう。


「これからはちゃんと伝言します。遅れた分はきちんとこなします。なので大丈夫です。」

「……次やらかしたら即携帯だからな。」


 紅蓮さんは私の雰囲気から何かを感じ取ったのか、一つ溜息を零して妥協してくれた。深く聞かれなかったことにも安堵する。


 さすが紅蓮さんだ。この生徒会メンバーの中では紅蓮さんが一番空気も読め、世渡り上手だ。


「紅蓮さんありがとうございます。」

「……ふん。ちゃんとしてくれれば問題は無いからな。」


 深く聞かず流してくれてありがとう。その意味も込めて感謝の言葉を述べると、それすらもきちんと汲んでくれたらしい。その言葉を聞けて再度感謝し、安心した私は生徒会の仕事に取り掛かることにした。


 書類の山を見て、集中すれば最終下校時間には間に合う量だと当たりをつけてペンを待った。


 皆はどうやら作業をしながら雑談しているらしい。所々こちらにも声が聞こえてきた。まあ、私はあの中に割り込んで行く勇気はないので無言に徹するのだが。


「あはは~紅蓮くんってもしかしてツンデレ~?」


「そんなわけないだろう? この俺が? 優等生と言ってくれ。」


「アハハー、グレンの癖にそんなことあるわけないデスヨー」


「おい珈夜。棒読みで言うな。せめて感情込めろ。……というか何故毎回毎回そこまで俺に楯突こうとする?」


「……なんか気に食わないんデスよ。」


「はぁ……」


「紅蓮くんと珈夜さんは仲がいいんだね~」


「「どこが!?」」


「え~、だって嫌いな人とはそもそも言い合いすらしたくないでしょ~? だけど二人は素直に言い合ってるじゃ~ん」


「それはそうだが……」


「この人は……グレンは私に無い物をたくさん持っていて妬ましい。」


「おぅおぅ、随分素直に白状したな? 珈夜サンよォ。」


 ……これ以上放っておくのはいけない気がする。言い争いの気配を感じ取り、その直感に従い、書類に落としていた視線を他の生徒会メンバー三人へと向けてニッコリ笑ってみせた。


 すると驚くことに三人とも私の視線に気がついて一瞬のうちに黙り込んでしまった。ああ、そこまで怯えさせるつもりは無かったんですけど……


「も、申し訳ありませんシスイ様……」


「……五月蝿くしたのは謝る。」


「お二人さん、喧嘩する程仲がいいとは言うものですが、ほどほどに。」


 私は一言だけ、なるべく威圧を感じないような声色を意識して仲裁する。

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