第2話
私が産むと決めてから我が家はぱぁっと明るくなった。母は足しげくベビーコーナーに通いだし、まだまだ先の出産に向けて用意を進めた。
そんなハッピーな外野を周りに置き、私は苦しみの中にいた。まず抗うつ剤の変更。恐ろしく強かった薬はあからさまに弱くなった。抑うつ状態が続き、私はとにかく苦しかった。睡眠導入剤についても同じ。昏倒するように眠りにつけていた薬は何時間待っても眠気が来ない薬に変わった。その上に悪阻の苦しみが押し寄せてきた。気持ちが悪くて素麺しか受付てなかった私に母は来る日も来る日もそうめんを作ってくれた。
ある意味幸せな妊婦だったが、とにかく落ち込みが激しく、泣きながら毎日を過ごした。妊婦になったからと言って拒食症は勘弁してはくれなかった。カロリーの少なそうな食べ物を調べ、鶏の軟骨しか食べられないと言うと、母は商店街の肉屋に頼んで鶏軟骨を毎日買ってきては振舞ってくれた。私は鶏軟を美味しそうに食べて、ありがとうとお礼を言った。
鶏軟骨しか食べない母を子どもはどう思っていただろうかと今でも胸を痛める。もっと栄養に気を配って様々なものを食べてほしかっただろう。私は悪魔のような母だ、と今になっても思う。
月に一回の検診の日は、夫が必ず会社を休んで病院まで着いてきてくれた。
検診では医師が難しい顔をして、子どもが育っていないと繰り返した。
私はそれでも自分の体重の方が大切だった。私は完全に狂っていた。
向日葵 緒方亜矢子 @angie5878
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