第3話KACお題がはじまる

 カクヨム誕生祭の目玉ともいえる7つのお題。一番目のお題は「本屋」だった。締め切りは、3月3日のひな祭り。しかもお昼までに投稿しなければならないのだ。


「本屋、本屋か、古本屋なら浮かぶんだけどな」


 ネタ帳を眺めてため息をつく。本屋を舞台にした話よりも図書室や古本屋の方がよく浮かぶ。本を貸し借りする図書室、他人の本を購入する古本屋。「他人」が色濃く介在する場所ともいえる。


 新品の本と古本とどちらが良いかと聞かれれば、新品の本を手元に置いておきたい、だが、新品の本と古本と、どちらが味わい深いかと聞かれると、やはり古本屋さんなのだ。


 「本屋」の話を考え考え、古本屋を舞台にした話が2つほど浮かぶ。古本屋だって本屋さんに変わりはない、それなら、いっそのこと古本屋さんでも良いのではないか。ただ、できれば「本屋」を舞台にしたかった。


 できるだけ、お題に沿いたいという気持ちがあったので、なんとか浮かんだ話を書いてみる。


 腹が決まればあとは早かった。長く続くカクヨム誕生祭をスローペースで走り始める。


 途中でリタイアするか、完走するか。ギブアップするにしても、ここまではやりたいという目標を掲げて走る。


 お題が発表された当日から、「本屋」をテーマにしたタイトルがあちこちで並び始めた。カクヨム登録者の熱意が背中を押す。


「ひとつめはクリア。次のお題が発表されるまで、別のお話を考えますか」


 他の作家さんの作品を読むのも大切にしたい。たった1ヵ月、3月の間だけが、思った以上に濃い1ヵ月となりそうです。


「去年もあっという間に過ぎちゃったんだよね」


「桜の花びらを眺めながら、お話を考えていましたよ」


 近くにいる人がほほえんだ。今年は、桜が咲く前に7つのお題が終わってしまうだろう。その後に、連続更新は、作家自身にゆだねられている。


「3月前半というと、マラソンにたとえるなら、ハーフマラソンですね。フルマラソンを目指すか、ハーフマラソンで終えるか、はたまた、3分の2走るか。悩みどころです」


 その人は、どこまで参加するか決めかねているようだった。


「あなたは、どうしますか?」


「私は、私はそうですね。多分、桜が咲くころも、なんとかして走っていると思います。毎年、桜が咲くころに、桜に関するお話を書いていたので、今年も、そうしたいと考えているんですよ」


「それは、それは、がんばってくださいね」


 にこにこと人の良い笑みを浮かべたまま、その場から去っていく。お話を書くか、他の作家さんの元へ行くかするのだろう。


 桜が咲くころ、自分がどうしているのか。つぼみがあるとはいえない木の枝をみやった。


 

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