第13話 馴れ初め紹介 8


 私がもう一つ出場る全員参加競技の綱引き。

 

「オーエス!オーエス!……オーエスって、何だろう?」


 綱を引きながら昔から思ってた疑問を口にする。


「オーエス!…語源は、フランス語の、「引け」を意味する、オーイスらしい、わよ」


 カヨちゃんが答えてくれた。


「へぇ~、へぇ~、それは、72へぇ~だね」

「高めだけど、微妙なへぇ~数ね」

「ちょっと!喋ってないで、引きなさいよ!」


 また天野さんに怒られてしまった。体育祭でこんな熱くなる人だったんだ。


「「はーい」」



 一回戦目は勝った。綱引きは八クラスでのトーナメント形式。

 後二回綱引きする可能性がある。既に私、手が痛いんだよね。


「ねぇ、男子聞いてよー。図師さんが真面目にやってくれないの」


 天野さんにチクられた。さっき注意してきたのはこの為の伏線か?なかなか策士だ。

 男子と言っているが視線の先は誠一郎さん。


「あぁ…、図師さん」


 怒られるかな、と一瞬思ったけど、


「怪我しないように気を付けてね」


 寧ろ怪我の心配してくれる誠一郎さん。


「確かに、漫画家が手を怪我したら命取りだもんね」


 まだ漫画家じゃないよ武田君。


「綱引きは手を酷使するからな。図師はほどほどで良いぞ」


 体育委員長直々に手抜きOKが出た。


「いいじゃね、旗制作頑張ったんだし」

「足引っ張るって言ってたしな」

「オタク女一人、手を抜こうが勝負に関係ねぇだろ」


 他の男子達までも賛成してくれる。

 でも真理は最後の口の悪い男子の言葉。私が居ても居なくても勝敗は左右されない、が男子皆の認識なのだろう。

 

「なんで図師さんばっかり贔屓するのよ!」

「図師さんばっかり?」

「ばっかりって何の事だ?」

「他になんか贔屓したっけ?」

「それは……」


 多分、障害物競走でのハイタッチの事を言いたいんだろうけど、贔屓かどうかは微妙だね。ただの嫉妬と思われかねない。

 

「どうせアスカとハイタッチしてた事を言ってるんでしょ」


 それを分かってて、チクり返しをするカヨちゃん。


「ちょっと!…」

「そういや、何でお前ら図師とハイタッチしてたんだ?」


 男子の他意のない質問に、


「俺は如月と武田がハイタッチしてたからノリで」

「俺も如月がしてたからノリで」


 という繋ぎから皆の視線が誠一郎さんへ。


「図師さんとバスケ漫画の話で盛り上がった事あって、手を上げてるの見えたからやってみたんだよ」


 ほら、私の予想通り。


「「「「「あぁ~、試合で初めてジャンプシュートを決めて監督とハイタッチするシーンな」」」」」


 ハモるほど私って監督と似てる!?



「何の話してるのよ?」

「天野、まさかあの伝説的バスケ漫画読んだことないの!?」

「ないわよ」

「信じられない、よくそれで今まで生きてこれたわね」

「今日の今まで困った事なんて一度もなかったわよ!」


 

 綱引きは2位だった。1位はサクラちゃんのクラス、圧倒的だったから私の手抜き云々は全然関係ない。

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