第11話 馴れ初め紹介 6
体育祭当日。
もちろん応援旗はちゃんと完成させた。
「目立ってんね~、アスカの旗」
体育祭までに回復出来たミカちゃん。
「私のじゃなくてクラスの旗だよ」
でも目立ってるのは確かだ。どうやら今年の二年で旗制作に力を入れた他クラスはなかったようで、毎日放課後残って制作した力作は他とはレべ値だった。
「ほんと学年一、いや学校一の応援旗だよ」
「如月君は褒め過ぎ」
「そうかな…本音なんだけど」
そういうとこだぞ誠一郎さん。
「ほんとスゲーよ図師っち!これで優勝間違い無しだ!」
「優勝はともかく、武田君の期待に応えられたかな?」
「もちろん!」
それは良かった。
「応援旗の良し悪しで優勝は決まらないが、これだけの旗を掲げて下手な順位にはなれないな」
「余計なプレッシャー掛けてゴメンね轟君」
「勘違いするな、気合いが入るって意味だ」
さすが体育委員長。
「…ねぇちょっとアスカ」
私の腕を引っ張ってちょっと移動するミカちゃん。
「如月君との話は聞いたけどさ、何で三銃士まとめて仲良くなってるのよ?」
三銃士というのは如月君、轟君、武田君のこと。
ミカちゃんがそう呼ぶのは三人が仲良いから…だけではなく、ベーコンレタス好きな腐った女子的に美味しい三人だからこその呼び方だ。
私は嗜む程度だけど、ミカちゃんは主食がベーコンレタス。クラスの男子で妄想し過ぎて、面と向かって男子と会話出来ない腐敗ぐあいである。
「如月君も残って旗制作してるのがクラスの皆に知られて、大勢残るようになったのはメールで教えたよね」
「五月蠅くなっただけで作業スピードは上がらないって書いてたわね」
「最初はそうだったんだけど…」
旗制作の指示だけで、五月蠅くても私は何も言わなかった。
そしたらいつの間にか、指示を聞きに来るのが三銃士だけになったのだ。
「私を推薦した如月君、体育委員の轟君、凄い旗言い出しっぺの武田君。この三人が私から指示を聞いてそれを他に伝えるって体制が自然と形成されたの」
「…三銃士を従える姫ポジションになったってこと?」
「……私が姫ポジションになれると思う?」
「ううん、姫に仕える婆やポジションならピッタリだと思う」
「JKに婆やは酷くない!?」
「あははっ……でも納得、姫ポジでないにしろ女子達の視線が鋭いわけだ」
そうなんだよね~。あのトイレイジメ未遂以降直接は無いけど、皆目が尖ってるのよ。
「それも今日の体育祭までだよ。明日からはまた教室の端っこで人知れずオタク三昧」
「……そうなるかな~…?」
そして競技が始まる。
私は自分の仕事は終わったとばかりにダラーっと座っていた。
あとは、玉入れと綱引きで足引っ張りながら頑張れば問題なしよ。
とか考えてたんだけど場所が良過ぎた。
出席番号順から見えやすい先頭の席に座っていた私、更にクラスの席位置が二年生最初の種目のゴール正面付近。
二年生最初の競技は障害物競走。
我がクラスの第一走目は誠一郎さん。
「…あれ、障害物競争ってこんなカッコイイ種目っだったけ?」
と呟いてしまう程、走る誠一郎さんはカッコ良かった。周りの女子達も騒いでるから私が目に異常はないだろう。
カッコイイだけでなく誠一郎さんは断トツ一位でゴールテープを切る。
クラス対抗なのにそんなことは関係なしにほぼ全女子達の歓声が挙がる。
私も、
「一位おめでとうー!」
と軽く手を振ってみた。これぐらいは良いよね。
誠一郎さんと目が合う、そしてゴールした勢いのまま大回りするようにこっちに来た。
あれ?…っと思ってたら、私の上げている手に、
バチンっ!
ハイタッチして集合場所に戻って行った誠一郎さん。
嬉しいけど……、そういうこと恋人でもない女子にしちゃ駄目だじゃないかな。
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