第7話 馴れ初め紹介 3



 次の日。

 登校すると丁度誠一郎さん、轟君、武田君の三人が一緒に居たのでスケッチブックを持って近づく。


「ドラゴンのラフ画、描いてきました体育委員長」


 気を付けして手を額にまであげて敬礼する私。


「何で敬礼なんだよ」


 ボケないと男子三人の中に入るとか無理なんで。


「おはよう図師さん」

「おっはー!」

「おはよう如月君、武田君」


 挨拶もそこそこにスケッチブックを開いてラフ画を見せる。

 筆がノッて結構いい感じに出来たと思うけど、



「「「おおぉ~っ!!」


 あ、良い感じの驚き。


「凄いな、ほんとドラゴンだ」


 ドラゴン描いたからね、感想も天然だ。


「メッチャ上手いよ!図師っち」


 テレッテー、図師さんから図師っちにレベルアップした。


「さすが漫画家志望だね図師さん」


 誠一郎さんは誉め言葉だと思って言ってるんだろうけど、ここでバラさないで欲しかったな。


「漫画家目指してるなんて図師っちスゲー!」


 武田君、声大きいからクラス中に知られちゃったんだよ。


「凄くないよ、目指してるだけだから」

「そんなことないよ。将来の目標の為に美術部と漫研を掛け持ちして毎日努力してる。実際こんな上手い絵描けるんだし凄い事だよ」

「ああ、俺もそう思う。尊敬に値するな」


 おいおい、褒め殺しか!イケメン男子がオタク女子にそんなことしたら本当に死んじゃうよ?


「でも、こんな本格的なドラゴンだと時間かかるんじゃないか?誉めといて悪いんだが、俺は放課後部活で…」

「あ、俺も部活ある…」

「…ごめん、僕も放課後は…」

「いいよいいよ。やりたい人だけの少数で」


 正直、嫌々参加が大勢いても困るしね。


「図師がそう言うなら。おーい!図師が旗の下書き描いてきてくれたから皆も見てくれ」


 スケッチブックをクラスの皆に回し、私がデザインしたドラゴンの旗を描く事が決定した。

 のだが、


「これなら図師さん一人に任せた方が良い旗出来るんじゃなーい」

「私絵下手だから邪魔しちゃ悪いし~」


 また女子の嫉妬意見。


「いや、さすがにそれは…」


 轟君が否定しようとするが、


「何、自分は手伝わないのに私達には放課後残って手伝えって言うの?」


 次の言葉に何も言えなくなる。


「上手い人に任せるのが一番だよね~」

「「だね~」」


 嫉妬女子の人数増えてる。

 女子人気ナンバー1は誠一郎さんなんだけど、轟君や武田君も女子に人気あるんだよ。

 そんな三人が凄い凄い言ってたら、嫉妬は必然なんだよね。


「ちょっと!明日香一人に押し付ける気?」


 嫉妬だと気づいて抗議してくれるミカちゃん。


「漫画家志望なんだからそれぐらい出来るでしょ」

「B0で描くのに漫画関係あるわけないでしょ!」

「何よB0って、描くのはドラゴンでしょ」

「紙のサイズよ馬鹿!」

「誰が馬鹿よ!」


 ヒートアップし過ぎじゃないかいお二人さん、男子が引いてるよ。


「止めて~、私の為に争わないで~」

「別にあんたの為に争ってないわよ!」

「明日香こんな時にボケなくていいから!」


 こんな時だからこそなんだけどね。


「私は元々やりたい人だけで良いって考えてたから、ミカちゃんは手伝ってくれるよね」

「もちろん!」

「なら大丈夫だよ、体育祭までまだ日はあるし」


 当時B0サイズの絵は描いたこと無かっただけどね~。


「その代わり、体育祭本番は私足引っ張るから許してちょんまげ」

「ギャグ古っ!?」

「てか足引っ張るの確定かよ!?」


 武田君と轟君の二段ツッコみで大きな笑いが起こる。

 

 これで嫉妬女子連中も誤魔化せれる。…と良いいな。

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