第5話 馴れ初め紹介


 私と誠一郎さんが同じクラスになったのは高校二年生。だが私は一年の時から誠一郎さんを知っていた。別にストーカーじゃないよ。

 眉目秀麗・成績優秀・スポーツ万能、性格は明るく真面目で優しい。そんな完璧イケメンの誠一郎さんは高一の体育祭で活躍したあたりで学年では知らない人がいないぐらい有名人だったの。


 高二で同じクラスになっても初めは会話する事も無かった。カースト上位の誠一郎さんに対して私はクラスの端でオタク友達とアニメトークするカースト中の下。一年会話せず過ぎると思ってた。

 

 会話せずとも誠一郎さんの噂は耳に入る。


・告白された回数は軽く二桁越え、だが全て断る。

・母子家庭であまり裕福ではない。

・バイトの掛け持ちをしている。


 母親の負担を減らす為、勉強・バイト・家の手伝いと忙しいから彼女を作る気がなかったらしい。

 母親思いという事で好感度が上がり告白される回数は増えたとか。それと同時に極度のマザコン説も流れてたけど、これはフラれた女子の腹いせと男子の嫉妬だな。


 私は噂を聞いて「完璧イケメンも大変なんだな~」とか思っていた。


 そんなある日、昼休みに教室の隅っこでオタク友達の海原うみはら 美夏みかことミカちゃんと『アニメキャラ限定絵しりとり』をしていた。 で回ってきたので、大人気山賊漫画の人気キャラ『山賊狩りのロゾ』をスケッチブックに描いた。


「あ、それ『山賊狩りのロゾ』上手いね!」


 という声に振り返ると誠一郎さんがいたの。


如月きさらぎ君!?」


 当然だけど高校時代は苗字で呼んでいたよ。


「図師さん絵得意なんだ」

「え、あ…まぁ、こちとら漫研ですから」


 イケメンにビビってるのを隠す為ドヤ顔したんだよね。


「じゃあ他にも描いてるの、見てもいい?」

「え、え~と…」


 高校時代はたまに腐った絵を描いたりもしてたんだけど、この時のスケッチブックは買ったばかりで腐ってないから見せることにしたんだよね。


「こんな落書きで良ければ」

「ちょっ!?明日香、恥ずかしいって」


 小声で抗議してくるミカちゃん。

 一つのスケッチブックで絵しりとりをしていたから当然ミカちゃんの絵もある。


「気持ちを共有しようじゃないか我が友よ」

「私明日香と違って下手だし!」

「大丈夫だよ、絵しりとりになるぐらいには上手だから」

「私超簡単なのしか描いてないし!」


 私達があーだこーだ言ってる間に誠一郎さんは次々スケッチブックを捲る。


「ほんと凄い上手だね。図師さん漫画家になれるんじゃない?」

「まぁ、こちとら漫画家志望ですから」

「そうなの!?どんな漫画描くの?」

「ファンタジー系が多いかな」

「へぇ~、今度読ませてよ」

「え、いや~、それは恥ずかしいかな」

「良いじゃない見せてあげなよ明日香」

「オイコラ!我が友、仕返ししようとするんじゃない」


 と、そこで、


「お~い、如月ー」


 誠一郎さんの友達の呼ぶ声が、


「ん、何?」

「ジュース奢りトランプするけどお前も入らね?」

「うん、今行く。じゃね図師さん、気が向いたら漫画読ませて」


 そう言い残し、誠一郎さんは仲良しメンバーの下へと戻っていった。


「ふぅ~、完璧イケメンはエーティーフィールドを軽く突破してきますな」

「夕日の下で「歌はいいね~」とか言ってても様になりそう」

「私の名前覚えたことにすら驚きだったよ。HPガリガリ削られた」

「そうなの?明日香は結構普通に見えたよ。私なんて小声だったし」

「いやいや、僅かな時間ながらも緊張で5㎏は痩せたね」

「それはない」

「「あははははっ」」


 

 私と誠一郎さんの初絡みはこんな感じ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る