第4話 仕事仲間紹介 2
「痛~い、安ちゃん!?」
チョップされて安藤さんが来たことに今気づくモエちゃん。
「叩くなんてパワハラー、訴えてやる~」
「なら私は侮辱罪で赤城さんを訴えます」
「侮辱なんてしてないしー、質問しただけだしー」
「いえ、してます。イケメンを買ったというのは人身売買で犯罪です。「犯罪したって本当ですか?」なんて質問は侮辱です」
人身売買って…、ギャルのたわ言に安藤さん大人げないな~。
「うっ…ワタシはそんなつもりで言ってないし…」
「赤城さんの
「先生に対して失礼ではあるな」
「どう考えても飛鳥さんへの侮辱です。安藤さん訴えちゃってください」
「ううぅ~…」
これで本当に訴えるのはまず無理だろう、でもモエちゃんは天才肌だけどアホな子だから涙目になっている。
「ごめんなさい、訴えないでください」
「謝る相手が違うでしょ」
「ズシちゃん、ごめんなさい」
「良いよ。こんなことでモエちゃんを訴えたりしないって」
「わ~い、ズシちゃん優しくて好き~」
「アシスタントを甘やかし過ぎると駄目ですよ飛鳥さん」
「案ちゃん嫌~い」
「差し入れで『スイーツ堂』のプリンを買って来たのですが、赤城さんは要らないようですね」
「え!?嘘だよ、安ちゃん大好き~!」
安藤さんは人の扱いが上手いな~、モエちゃんがアホな子なのもあるけど。
ここで作業はしないけど仕事仲間の四人目は
四人目と言っても私の仕事仲間になった順なら安藤さんが一人目だ。
あの時安藤さんが説得してくれたからこその今だ。
「予定より随分早かったね安藤さん、原稿は上がってるよ」
「笑蔵先生の所が早く終わったもので、急かすことにならなくて良かったです」
安藤さんが担当をしているのは私だけではない、仕事の出来る編集者なら当り前だけど。
笑蔵先生というのは20年ぐらい前にギャグマンガで大ヒットした漫画家。アニメ化もされて私の前後世代なら知らない人はいないヒット作。
でも一発屋で二作目以降の漫画は鳴かず飛ばす短期打ち切り。
今も連載はしてるけど、人気は雑誌で下位だそうだ。
「笑蔵先生の漫画は面白くなりそう?」
「駄目です!全然駄目です!「ネームが出来たから見て欲しい」と言うから行ったのに、ネームは出来てなくて「結婚を前提に付き合ってくれ」とか言うですよ!」
安藤さんから「笑蔵さんのところに行くたびセクハラまがいに口説いてくるんです」って愚痴を聞いてたけど、今日は直球だったのか……、
「しかも肩に触れて来たので、腹パンして強制土下座させました」
見た目綺麗な安藤さんだけど気が強く肉体も強い。学生時代空手部で、今もキックボクシングのジムに通ってる。
「笑蔵先生っておいくつだっけ?」
「41歳です」
「安ちゃんが三十路だから11歳差だね~ぇ、え!?いぎゃっ~」
安藤さんがモエちゃんにアイアンクロウを喰らわせる。
「私はまだ二十代です。笑蔵先生とは
以上ってつけてるけど丁度12歳差だよね。【以上】の意味からすれば間違ってないけど。
「痛い痛い、パワハラだ~」
「女性の歳を上に間違えるのは重罪、死刑です」
「うぅ~、殺さないで~」
モエちゃんがまた涙目になったので安藤さんも離してあげる。
「安藤さんもオジ様キャラは嫌いですか?私は二次元のキャラなら渋い40代もアリですが」
ちょっとちょっと三浦さん、笑蔵先生は三次元の人間だから。それと渋いとは程遠い弛んだ40代おっさんだよ。
「相手によります。飛鳥さんの夫、誠一郎さんぐらい素敵な男性ならアリですよ」
「イケメン旦那さんなら私もアリよりのアリ~」
「三次元に興味はありませんが、アリかナシかで選ぶなら私もアリですね」
誠一郎さんはここでもモテモテだな~。
昔からだからもう嫉妬も優越も感じないな。
「それで~、ズシちゃんとイケメン旦那さんは何処で知り合ったんですか~?ホストグラフですか~?」
さっきの「お金で買った」は抜きにしても出会いを知りたいらしいモエちゃん。
「ははは、違うよ。高2の時同級生だったの」
「おぉ~!高校で付き合ってそのまま結婚ですか~!?」
「それも違う。高校卒業してからは成人式で顔見たぐらい。でもその数年後に再会して、色々あって結婚したの」
「はしょり過ぎー、その色々を聞きた~い」
モエちゃんは私の誠一郎さんの馴れ初めに興味津々のようだ。
「私も興味ありますね」
三浦さんも?三次元の恋バナに興味ないと思ってたんだけど…、
「赤城さんの質問は実は私もネットで読んだことがあるんです」
ネットに載ってるんだ!?人気者は辛いねぇ。
では次回こそ私と誠一郎さんの馴れ初め。
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