第3話 仕事仲間紹介


 漫画家としての仕事場は隣のマンションの一室にある。通勤時間はカップラーメン作るより短いぜ!

 ここで働いてるのは私とアシスタント三人。

  

「飛鳥先生、原稿最終チェックお願いします」

「はーい。まぁ、尾崎さんのチェック通ったら私はただ読むだけだけどね」


 紹介一人目尾崎おざき まなぶ

 40歳男性で見た目は七三分眼鏡の中間管理職サラリーマンを具現化したような感じ。ちょっとお腹出て来てるな…私も人の事言えないけど。

 アシスタントチーフを勤めてもらってる。いわゆるプロアシで、経歴聞くと知ってる漫画がポンポン出て来る。

 技術はプロアシ界でもトップクラス(※安藤さん調べ)、他のアシの指導・監修もテキパキ熟す。

 私の漫画は尾崎さんがいなかったら今の人気はなかっただろう。縁の下の力持ちを超えてだよ。

 私の所に来る前も大人気漫画家のアシスタントチーフだったんだけど辞めた理由は、

 

「面白かった?」

「いえ、私に漫画の良し悪しは解りませんので」


 出来上がった漫画の感想を聞いても毎回上記の言葉が返ってくる。

 前の漫画家はそれをやる気ないと取ったようで度々モメたそうだ。

 尾崎さんは漫画が好きじゃないらしい、他の漫画も読むけど仕事の為の勉強・資料としてだと本人は言う。

 私も感想は言って欲しいと思うけど、やる気ないとは思わない。


「じゃあ仕事の出来はどう?」

「万全を尽くしたつもりです」


 と、返してくれるからだ。

 因みに尾崎さんには綺麗な奥さんがいて二児のパパ。

 


 私が原稿の最終チェックをし終わった後、


「飛鳥さん、時間ありますか?私の新作のネーム見て欲しいんですけど…?」

「良いよ、三浦さん」


 紹介二人目、三浦みうら 良子よしこ

 二十代前半女性で見た目長い黒髪を一つにまとめたスレンダーなOLって感じ。漫画家志望のアシスタント。

 まぁ、漫画のアシスタントってだいたいは漫画家志望だけどね。それ故移り変わりが激しいんだよ。腕が良くて続けて欲しい人でも連載決まったら辞めちゃうからね。

 三浦さんは私の漫画大好きって言ってくれて、尊敬してくれてるみたいでネームの意見を求めて来る。

 賞を取ったりもしてるけど連載は取れない、私も経験したけどこの時期は辛い!だから三浦さんがネーム見て欲しいって時はちゃんと読んで感想を言う。三浦さんは空気読めるから都合悪い時は言ってこないしね。


「でも、毎回言うけど私の感想が正解じゃないよ」

「はい、分かってます」


 三浦さんは素直で努力家、絵も上手いし面白いと思える話を作れる。

 頑張って欲しいな~、こっちの仕事的には腕の良いアシスタントが居なくなるのは痛いけど…。

 因みに三浦さんは独身で彼氏無し。三浦さんは好きなキャラの誕生日にケーキを作るレベルのオタクで、本人が言うには「三次元の男性に興味なし」だそうだ。

 


「ズシちゃん、今日はイケメン旦那さん来ないんですか~?」

「来ないよ、モエちゃん」


 紹介三人目、赤城あかぎ もえ20歳はたち女性で見た目金髪パーマのギャル。漫画家志望のアシスタント。

 最近はギャルも漫画描くんだね。安藤さんが連れて来た時は驚いたよ。

 私の呼び方は、呼び捨て以外は好きにして良いと最初に言う。

 それでもほぼほぼ飛鳥先生か飛鳥さんになる、モエちゃんも初日こそ飛鳥さんだったんだけど二日目に「ズシちゃんって呼んで良いですか~?」と訊いて来た。なので私は「良いよ。代わりに私もモエちゃんって呼ぶけど良い?」と返したら「全然OKでーす、ウェーイ!」「ウェーイ…」

 さすがギャルだね。


「どうしてそんな事聞くの?」

「作業で目を酷使したんで、目の保養したいな~って」


 誠一郎さんを見て目の保養になるわけ…あるんだよね~、自慢のイケメン旦那だから!


「漫画かアニメで良いじゃない、イケメン沢山いるわよ」


 これは三浦さんの言葉。


「二次元と三次元は別なんです~」

「なら、尾崎さんがいるじゃない。私は保養にはしないけど」

「私もオジ様趣味はないんでお父さんと同年代の人は保養になりませ~ん」


 こらこらチーフをディスるんじゃない二人とも、…私も尾崎さんが目の保養になるとは思ってないけど。


「私はイケメンではないので目の保養は出来ないだろう」


 さすが尾崎さん、小娘達の意見など気にせず冷静だ。

 それはそうと、


「誠一郎さんは私と同い年で30代前半アラサーだよ。20歳はたちのモエちゃんからしたらおじさんじゃないの?」

「え、…えぇ!?25歳ぐらいだと思ってたー!」


 だよね~。

 こんな感じでギャルで漫画家志望っぽくないモエちゃんだけど、仕事はほぼ文句なしに熟す。アシスタント歴0年私の所が初めての新人だから簡単な作業しか任せてないけど、尾崎さんのチェックは厳しい。

 それをモエちゃんは雑談しながら楽々通過する。

 モエちゃんは天才肌だ、賞を取った初作品の漫画を読んだときそう思った…私が思っただけだけどね。


 ガチャっ


 あ!鍵が開く音した、合鍵を持ってるのは誠一郎さんかチーフの尾崎さんか担当の安藤さん。

 誠一郎さんは無断で仕事場に来る事はないし尾崎さんは今ここに居るから、安藤さんだな。


「あ、そうだ。噂で聞いたんですけど~、ズシちゃんがイケメン旦那さんをお金で買ったって本当ですか~?」

 

 おーおー、そんな質問をこんな場で訊きますか?モエちゃんはちょっと空気を読めないところあるんだよね。


「飛鳥さんに対して何て失礼なこと言ってんのよ!」


 来て早々モエちゃんの脳天にチョップを喰らわせる安藤さん。



 この続きは次回……、あっ!誠一郎さんとの馴れ初めを話すって言ってたんだった。

 ごめん、馴れ初めはまた次々回で。

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