第17話 妖精は相棒に認定されますか?

「プレセアー! ティナ、凄いの出来るようになったー! 見てて~」


 ティナが軽く指を振ると、くるくると螺旋状に現れた光の粒子がテーブルの上にある押し花の栞に降り注いだ。まさに妖精って感じね。

 ポゥっと光に包まれている栞をじっと見つめていると「出来た!」とティナの声。

 同時に光の粒子がサァーっと風に飛ばされて…押し花が生花に代わっているじゃない!


「凄いわティナ!」

「えへへ~。元にも戻せるのよっ!」

「嬢ちゃん、俺達のも見てくれ。」


 エッヘン! と胸を張って、嬉しそうに空中を八の字に回っているティナを他所に、今度はスズキさんファミリーが何やら準備を始めている。小石が集まって、一体何をするのやら。と思ったら、合体してロボットのような形になったわ。凄い。高さ20cmくらいのミニゴーレムが完成したわ。


「凄いわね。触ってもいいかしら?」

「あぁ、いいぜ!」


 こちらもヘヘン! と得意気に胸を張って手に取られるのを待っている。

 顔の部分はやっぱりスズキさんなのね。得意気にフフンと鼻を鳴らしているわ。

 手に乗せてよく見てみると…なるほどね。小石達が一つのパーツに変化して組み合わさっているんだわ。ちょっとあれっぽい、そう、ガンプラ? 前世でお父さんが趣味にしてたなぁ…なんて、思い出しちゃった。


「動けるの?」

「練習中だ!」

「ふふっ。頑張ってね。」

「おう、任せとけ!!」

「ティナももっと頑張る~。早く姿消し覚えてプレセアとお外に行きたいの~」

「えぇ。楽しみにしているわ。」


 姿が誰かに見られると少し厄介だから、ティナとスズキファミリーご一行は私の部屋に置いてあったドールハウスに住まわせることにした。元々はメルちゃんのお家だったドールハウスなんだけど、細部まで作り込まれているから住み心地は良さそうね。部屋を割り振って楽しく同居しているわ。


 魔物って生まれた時から力があるのかと思ったけど、違うんですって。

 人間と同じように少しずつ成長するってルシアに教えてもらったわ。

 成長に必要な過程は自分たちで何となく分かっているみたいで、ティナとスズキさんファミリーは各々特訓に励んでいる。時々必要なものを頼んで来たり、こうしてできるようになったことを披露してくれるのよ。

 今の所ティナは、植物の成長を手助けしたり、枯れかけの花を元気にしたりと、ザ・花の妖精!  みたいな事が出来るみたい。おかげで家の庭の植物が生き生きしているし、花瓶の花も長持ちするようになったわ。

 スズキさんファミリーはなんか…何処かの大学の集団行動や、何処かの国のマスゲームみたいなのの練習をしてる事が多いけど、何の意図があるのかは不明ね。


 まぁ、何にせよ、一緒に頑張る仲間が出来てとっても嬉しいわね。


 ただ…


 ミニゴーレム姿で微動だに出来ていないスズキさんファミリーと、その横で「がんばれー!」と応援しているティナ…プリンセスの相棒的にどうなのかしら!?


 いやね。

 可愛いのよ。嬉しいの。でも、動物的ではないじゃない?


 魔球根から生まれた私の使役魔、ティナは、この世界では魔物の分類だけれども、何処からどう見ても妖精なのよねぇ。


 妖精って、『夢の国』的には相棒って言うより、素質を見極める立ち位置に居る人だと思うのよ。

 そういう意味では、ティナが現れてくれた私にはプリンセスの素質はあるのかもしれないけど…ティナが相棒認定を通り抜けるのはやっぱり難しいんじゃないかしら。


 かといって、スズキさんファミリーはもう、動く雪だるま…を通り越して雪の怪物の類だしね。

 そもそも魔球根から生まれる魔物は、1つの球根に付き1体だけらしくてね?

 スズキさんファミリーの存在は、ルシアも首をかしげているくらいなの。

 スズキさんファミリーは魔物かすら怪しいって言うから、じゃぁ何なの?って聞いたら「動く小石?」って、やっぱり首をかしげてたし。

 分かっている事は、今の所私には友好的だってことくらいね。

 スズキファミリーは今の所、UMA枠の生命体なのよ。


 とすると、やっぱり相棒にはなれないわよね。


『動物の相棒』というのはプリンセスにおいて絶対条件だし、妥協はしたくないわ。

 でも………


「プレセアー! あのね、お願いがあるの!」

「なぁに? ティナ。」

「サンドイッチ食べたい。プレセア、美味しいって勧めてくれたでしょ?」

「あら、聞こえてたの?」

「うん! プレセアの声はずーっと聞こえてたよ。早く会いたいなって思ってたんだもん!」

「ふふふっ。私も、ティナに会いたかったから、会えて嬉しいわ。」


 キラキラと光の粒子を撒きながら飛ぶティナが、可愛すぎるのよね。

 もう、公式さんがどう判断するかは知らないけれど、ティナが大切なお友達であることに変わりは無いわよ!!!


「サンドイッチね。分かったわ。」

「やったー!」

「一応聞くけど、スズキさん達も食べる?」

「あたりまえだぜ!」


 キランッ。と決め顔をするスズキさんと、ソウダソウダー!と飛び跳ねる小石達。

 こっちもこっちで、慣れて来ると良い味出してるし。

 でも、どうやって食べるのかしら? スズキさんには口あるけど…ま、いっか。


 以前に比べれば、魔物と言葉を話せるだけでも大きな進歩よね。

 ラッソの民だって使役魔を通して魔物と心を交わしたんだから、ティナたちを通じてこれから動物的魔物とも仲良くなればいいのよ。


 うん。悩むのは止めましょう。

 絶体絶命のピンチだった相棒問題に解決の兆しが見え始めてるのだし、この調子で頑張るわよ!!

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