第4話 プリンセスのレッスン
夕食が終わり、部屋へと戻ってきた。
今日の午後には礼儀作法の授業があったのだけれど、これぞプリンセス!みたいな立ち振る舞いを沢山教えてもらえてテンションが上がったわ。
頭の上に本を乗っけてまっすぐ歩くとか本当にやるんだもの。
失敗すると棒状の鞭で叩かれるしね。
心の中では「本物だぁ!!!」って叫びまくってたわ。
容赦なく鞭を振り回してくるスパルタなイベッタ先生の授業、今までの私はあまり好きではなかったけれど、今日は全てを新鮮な気持ちで受け止められた。はしゃぎすぎて、最後は先生の方が引いていた気がするわ。
先生の鞭は愛の鞭。立派なプリンセスになるに品のある立ち振る舞いが必要不可欠だもの。
忘れる前に復習しておきましょう。
無駄に広い私の私室。一番長く直線を取れそうな場所にクローゼットから出したリボンを敷いて…この上をまっすぐ歩くわよ。うん、5~6メートルほどの直線が取れそう。本は、さっきどさくさに紛れて持ってきたドラゴンの図鑑でいいわね。重心を意識して、真っ直ぐ…真っ直ぐ…
「あっ!」
まだ1メートルも行かない所でバサリと本が落ちてしまった。もう一回。もう一回…
ふぅ、何度目のチャレンジかは分からないけれど、何とか歩き切る事が出来たわ。
これは毎日続けましょう。いずれは本を乗せたまま目を瞑って歩いて、新体操の片足立ちが出来るくらいの体幹がほしいわ。
体幹と言えば、歌を歌う時も姿勢は大切よね。
歌、歌ったらまずいかしら? 今は誰も居ないのだし、少しくらい歌ったっていいわよね?
「ど~、ど~、どれみふぁそ~♪」
…あら、意外と音程取れているじゃない私。
思った音が出せてるって事は、のど音痴じゃないって事ね。ってことは、耳から入って来てる音がずれてる?
「どれみふぁみれど~♪ かえるのうたが~♪」
悪くないと思うけどなぁ。
でも、ここにはピアノも無いし、評価してくれる先生もいないし、自信が持てない。もしかしたらこの世界の声楽はハイレベル過ぎて、少しでも音が外れるとドヘタ扱いされるのかも!? それなら一層、歌を習いたいわ。
ともあれ、自分では聞くに堪えるものだし、少し歌の練習でもしましょうか。プリンセスと言えば、伸びやかなミュージカル調の歌よね。
「らららら~ ららら~ ららら ららららららら~♪」
ふふふっ。海の中を泳いでる気分で成り切って一曲歌いきっちゃった。
歌の課題は、高音が上手く出ない事かしら。もっと喉を開いて響かせられるようにしなくちゃ。後、腹式呼吸。今のままじゃ息が続かなくて、時々溺れかけの人魚だったものね。
あぁ、それから活舌の練習もしておきましょう。歌に乗せても言葉がはっきりと伝わるのがベストよ。
ペンを咥えている姿なんて見られたらまた騒ぎになりそうだけれど、これ、効果的なのよね。
「あ・え・い・う・え・お・あ・お・か・け・き・く・け・こ・か・こ。アメンボアカイナあいうえお 東京特許きょきゃこ…」
あぁ、流石、早口言葉の為だけに生み出された、存在しない幻の官庁。
何度やってみても上手く言えない。早口言葉は前世でも苦手だったのよ。
悔しいからこれも毎日の日課にして、必ず噛まずに5回言えるようにするわ!
「ふわぁ…」
そんな事をしていたら欠伸が出て来たわ。今日はもう寝ましょう。
楽しい一日だったわね。また明日も、素敵な一日になりますように。
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