第3話 知らぬ男たち

継続的に頭を打ち付けるような痛みで起き、顔を上げると俺はコンクリートの床に寝転がっていた。そして、何人もの男に覗き込まれていた。


「うわっ!?!!!!」


目。目。目。

少なくとも3人の姿が見える。

ぼやけた視界をなんとか鮮明にするため、目をぱちくりと開けてしっかりと顔を上げた。そこには更に多くの男たちが集まっていた。


「な、なんなんだ。ここは一体」


狼狽していると、俺を覗き込んでいた一人の男が口を開き、冷静な物言いをした。


「多分閉じ込められたんだよ…俺たち」


ドクドクドクドク。

閉じ込められた?どういうことだ?

そう思う気持ちを抑え、混乱が渦巻く思考を落ち着けようとする。周りを見渡すと、10畳ほどの狭いコンクリートの一室に、10人ほどの男たちが集まっている。そんな中、一人だけ女子がいた。制服を着ているのを見るに高校生だろう。愛美ちゃんと同じ制服だから、桜陵高校の生徒で間違いない。よく見ると美形な女子高校生だ。

各々俯いたり、違う方向を向いたりと視線をあまり合わせないような空気ができている。ふと視線が合ったのは、小太りの男だった。まさかとは思うがあの男、以前愛美ちゃんに痴漢していた男ではないだろうか。いや、人違いかもしれない。きっとそうだ。顔や体格が似ているだけだろう。


「取り敢えずここから出る方法を_」


そう言った時、怒鳴りつけるような低い声が一室全体に響いた。


「おい。お前、ストーカー野郎だろ」


反射的に声のした方へ顔を向けると、2人の男が険悪な雰囲気となっているのが見えた。一瞬俺のことを言われているのかと思った。呆気に取られた。そして、同時に背筋が凍る思いがした。ストーカー野郎と言われている方の男の表情が恐ろしかったからだ。笑っている。


「なんでこの場にいんだよ。聞いてんのかアァ?」

「っクッ、くっ、クッ」

「オノちゃんにやったこと覚えてんのか?」


その笑い方が薄気味悪く、つうと汗が垂れた。今の感覚を戦慄と表現すればいいだろうか。この閉鎖環境でストーカー野郎と呼ばれ責められているヤバそうな男が少なくとも1人いる。そうだ、痴漢男もいる。悪い予感しかしない。正直今すぐにここから逃げ出したい。しかしこの部屋には出口がない。扉が一つもない。突破口があるとすれば、今の所天井しか見当たらない。唯一の光は天から注いでいる。


嫌な雰囲気だ。早く、早く、ここから出たい。


その険悪な雰囲気を変えたのは、ある人が発した一言だった。好青年に見える彼は、ぱんと手を叩いた。


「みなさん。自己紹介しませんか?」

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