第2話 充実感のなさ

社会人になると出会いがない。そもそも俺には彼女ができる程の魅力がないし、これといった特技もない。会社で怒られてばかりの俺は無気力で、陰鬱な人間だ。年収は高くもなく、かといってとても低い訳でもない。大学は地元の私立大学を卒業し、身長は170cm程度。将来の目標は特にない。一人暮らしをしていて、たまに大学時代の男友達を呼んでお酒を飲んでパーッとはしゃぐ。仕事から帰ったらソファに寝転んでスマホを触り、まとめサイトを眺めて、気づけば日付が変わっている。休日は誰かと遊ぶなんてことはなく、フツーに家でだらだらして、気づけば出勤日の前日を迎えている。


計画性のない毎日と思われるかもしれない。俺だってその退屈な日常を変えたいとは思ってる。だけど、変わらない、変えられない。



今話題のマッチングアプリをやってみようかと思ったこともある。でも実際出会ってみると実は相手が業者だったとか、ぼったくりバーに連れて行かれただとか、碌な話を聞かない。俺はそんな嫌な思いをしたくはない。


正直、独身貴族も悪くないと思う。だけど、家に帰ったら彼女がいて、ご飯をつくってくれる生活なら、きっと更に楽しいだろう。生き甲斐が生まれるだろう。自分の存在意義を見出せるだろう。もしその彼女が愛美ちゃんなら。最高すぎて、いっそ死んでもいい。


なにか転機があれば。なにか普段と違うことがあれば。


その”普段を違うこと”はある日唐突に訪れた。

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