第5話 「五輪書」の重み
武蔵は「古語をも借らず」と述べていますが、武蔵が「五輪書」に述べていることが本当に真理であるならば、逆に、古今東西の名言・箴言・格言に相通じるものがあるはず。
ということで、浅学非才の私がざっとネットで調べてみると・・・。
<諸処の引用と私の解説 開始>
中公新書「ドイツ参謀本部」渡辺昇一
(14戦11勝してもパリは陥ちた)
「14戦11勝してもパリは陥ちたし、その前のドレスデンとライブツィヒの戦いでは、彼自身の主力軍は六戦六勝、つまり全勝しながらも、五十万の軍が十万以下になったのではなかったか。戦争における何か本質的なものが変わったのである。それが彼(ナポレオン)にはわからなかったのだ。」
→ 勝利とは何か。いったい何が勝利なのか。
武蔵はナポレオンと同じ英雄ではありましたが、個人として「ドイツ参謀本部」をやったのであり、それは「再現性の為に自分の道を作り歩むこと」であり、武蔵はそれを現実の行動(日々の戦い)・人生にして歩んだのです。
「他の科学分野において疑い無き真理に到達した時、我々はその知識の基礎を、数学として扱うべきである」 ロジャー・ベーコン
If in other sciences we should arrive at certainty without doubt and truth without error, it behooves us to place the foundations of knowledge in mathematics.
「人に魚を与えれば一日で食べてしまうが、人に釣りを教えれば一生食べていける 」 老子
Give a man a fish and you feed him for a day. Teach a man to fish and you feed him for a lifetime.
武蔵は私たちに、戦いの技術・テクニック・ノウハウではなく、哲学(ポリシー・理論・考え方)を教えてくれた。拳法の技術とは魚であり、在学中に食べきってしまうが、大学日本拳法のフィロソフィー、アーキテクチャーであれば、一生それを使うことができる。
二天一流の極意とは;
「自然そのものに造物主の意志がこめられている」 キケロ
Nature herself has imprinted on the minds of all the idea of God.
「二兎を追うもの一兎も得ず 」アメリカ先住民の諺
If you chase two rabbits, you will lose them both.
二天一流とは、これを反転させたのです。
① 「五輪書」 地の巻 アーキテクチャー(設計思想)
「勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝ちを求む」 孫子
Victorious warriors win first and then go to war, while defeated warriors go to war first and then seek to win.
→ 思想や理論の重要性
「知に比する富無く、無知に比する貧無し」 アリ・イブン・アブ・タリブ
→ 知性の重要性
「銀行資本は武装した軍隊よりも恐ろしい」
― トーマス・ジェファーソン
Banking establishments are more dangerous than standing armies.
→ 参謀本部(知性)の重要性。
70数年前、「天皇の軍隊」は国際金融資本にコテンパンに打ちのめされました。連合軍最高司令官のマッカーサー元帥は「日本のトップは12歳の子供だ」と議会で述べたくらいですから、彼らは欧州やアフリカ戦線でのドイツとの闘いほど太平洋では手がかからなかったようです。
There is no wealth like knowledge, no poverty like ignorance.
真の誉れとは、その行動が記録するに値し、その記録が読むに値することである ― プリニウス
→ 「五輪書」の真価
○ 兵法の道ということ
「道を踏み外して死を招くな。自らの手の業で滅びを引き寄せるな。」旧約聖書
→ 武蔵は天理という正しい道を歩むことを兵法と考えた。
○ 人生とは神の寵愛をうけることよりも悪魔の襲来を防ぐ事のほうがもっと大事である
→ 道を過たない心
○ すきになる
「武士に好きになるもの稀なり」(「五輪書」地の巻)
人が法律のために仕方なくする事を、自分から進んで行う。これこそ私が哲学から学んだ事だ ― アリストテレス
I have gained this by philosophy: that I do without being commanded what others do only from fear of the law.
水の巻(水はかならず低きにつく 理) プリミティブ
1. 兵法心持ちのこと
2. 兵法の身なりのこと
3. 兵法の目付け
4. 太刀の持ちよう
5. 足使いのこと
6. 五方の構え
作用・反作用 ― ニュートン
To every action there is always opposed an equal reaction.
7.太刀の道
8. 第一の構え 中段 五つのおもて
9. 第二の構え 上段
10. 第三の構え 下段
11. 第四の構え 左の脇に横に構える
12. 第五の構え 右の脇に横に構える
13. 有構無構の教え
14. 一つ拍子の打ち
15. 二のこしの拍子
16. 無念無相の打ち
17. 流水の打ち
18. 縁のあたり
19. 石火のあたり
20. 紅葉の打ち
21. 太刀にかわる身
22. 打つと当たる
23. しうこうの身
24. しっかうの身
25. たけくらべ
26. ねばりをかくる
27. 身のあたり
28. 三つの受け
29. おもてを刺す
30. 心を刺す
31. かつとつ
32. はりうけ
33. 多敵のくらい
34. 打ち合いの利
35. 一つの打ち
36. 直通のくらい
② 火の巻 心の戦い(低きに流れる水を高きに上らせる利) アルゴリズム(戦いの道)
風向きを変えることは出来ないが、帆の向きを変えることは出来る ― 不詳
You can't direct the wind, but you can adjust your sails
優しい言葉だけよりも、優しい言葉に銃を添えた方が、望んだ物がより多く手に入る ― アル・カポネ
You can get more of what you want with a kind word and a gun than you can with just a kind word.
→ 技術だけではなく、それを十二分に発揮できる場作りが大切。武蔵は場の作り方がうまかった。
人は心と身体で動いている。
その連携を壊し、バランスを崩させ、心と身体の連携をギクシャクさせれば、向こうから勝手に負けてくれる。
37. 場の次第
38. 三つの先
39. 枕を押さえる
40. とを越す
「何事にも定められた時がある。天の下で起きる全ての事に時がある」
聖書 伝道の書3章1節
41.景気を知る
42. けんを踏む
43. くずれを知る
44. 敵になる
45. 四つ手をはなす
「大衆は小さな嘘よりも、大きな嘘に騙され易いものである」
ヒトラー
The great masses of the people... Will more easily fall victims to a big lie than to a small one.
46.かげを動かす
47. かげをおさゆる
48. うつらかす
49. むかつかする
50. おびやかす
51. まぶるる
52. かどにさわる
53. うろめかす
54. 3つの声
55. まぎるる
56. ひしぐ
57. さんかいの変わり
58. 底を抜く
59. あらたになる
60. そとうごしゅ
61. 将卒を知る
62. つかを放す
全体は部分の総和に勝る ― アリストテレス
The whole is more than the sum of its parts.
時計の部品が全部揃っていても、それが組み立てられなければ、一部の集まりでしかない。全体というまとまりとなって初めて機能する、存在する。
(チームスピリッツ)立教や青学・関東学院
63. いわおの身
④ 風の巻
「味方からでなく、敵から学んだのだ。街の周りに高い壁をめぐらせる事を 」
アリストファネス
It is from their foes, not their friends, that cities learn the lesson of building high walls.
「知に比する富無く、無知に比する貧無し 」
アリ・イブン・アブ・タリブ
64.大きな太刀
「剣によって立つ者、剣によって倒れる」
聖書 マタイによる福音書26章52節
And them that take the sword shall perish by the sword
進化と言う語には「より良くなる、前進する、発展する」という意味はない。「変化する」とほぼ同義である。適者生存という言葉の通り、環境に適応出来る者のみが生き残り、それが進化の系譜となる。
「汝らのうち、最も若く最も強き者が斃れるであろう」米映画「Once Upon A Time In America」
「生き残るのは、最も強い種ではなく最も変化に柔軟な種である 」
ダーウィン
It is not the strongest of the species that survive, but the one most responsive to change.
65.強みの太刀
66.短き太刀
「自分に向かって返って来る矢を放ってはならない」
クルディスタンの諺
Do not throw the arrow which will return against you
67. 太刀かず多き
68. 太刀の構えを用いる
69. 目付け
70. 足つかい
71. 早きを用いる
72. 奥表をいう
決まりきった太刀の振り方にこだわる必要はない。
いつでも、敵の手薄な(心が無の)ところを狙って攻めることであり、斬り方・突き方に決まりなどない。
⑤ 空の巻
実行力の裏付けとなる精神力こそ、全ての機能を機能たらしめる原動力である。
<無用の用>
役に立たないように見えるものが、かえって大きな役割を果たしている
老子・第十一
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます