第149話 悠久に響く黄昏の歌⑤

『よく来た。旅人ユズ…そして我が娘よ。』


巨大化したときのレグリアよりも大きい女王(仮)が私達にそう語りかけてくる。


あくまで女王というスタンスで行くつもりか…。


「あなたに聞きたいことがあるの。」


『ほう?試しに申してみよ』


「水瓶座の十二星神の場所、そしてウタイルカから人魚になるためのアイテムの在り処。


私が知りたいのはこの二つだよ。」


『ウタイルカの件なら答えてやろう。


ウタイルカから人魚に進化するためには人魚の宝玉…それと私の力が必要だ。』


「人魚の宝玉と女王の力が…」


『もう一つの方は…そうだな。


パフォーマンスを無事に披露し終えたら教えてやろう。』


「…分かった。レグリアお願い。」


「ええ。」


レグリアは返事をすると息を吸い込む。


そして綺麗な声で歌い始めた。


「ラ~♪」


『っ!なんだこの歌は!やめろ!今すぐやめろ!』


「やっぱり効果あるみたいだね。」


『旅人…!何をした…!』


「何も?


ただこれは人魚の女王が…お前に乗っ取られる前のレグリアの母親がレグリアに託した最期の歌。」


『人魚の女王は自分が私に利用されるのを理解していたとでもいうつもりか…!?』


「さあ?それは分からないけど…


彼女は思ったんじゃないかしら?


お前にこれが有効になると。」


『貴様…情報を知りたいんじゃなかったのか!?』


「ええ。けどお前に用はない。


私が用があるのは元々本来の人魚の女王だけ。


大人しく消えなさい。」


『我は厄災だぞ…この程度でやられると思っているのか…?


行け我が僕たちよ。』


女王(仮)がそういうと目が虚ろになった人魚たちが一斉に攻撃してくる。


『そいつらに攻撃するとダメージはこいつに行くぞ?』


そう言って女王(仮)は柱に括り付けられたサティナを指さす。


『どうだ?攻撃できないだろう?


貴様が獣使いなのは既に知っている。


海の中じゃ自慢の手下も出せないだろう?


貴様の手下の中に海で戦えるやつはいないはずだ。


貴様に勝ち目はない。』


「…そうだね。」


確かに一見したら私に勝ち目はない。


けど…


「私にはこんな状況で頼れる子がいるんだよね。」


そう言って私は《簡易召喚》を使う。


「ルル!」


「きゅるるぅ~」


『ウタイルカだと!?』


ルルの姿を見て女王(仮)は在り得ないと言いたげな表情をする。


どうやらルルのことは把握してなかったらしい。


この国でもルル召喚してたけどね私。


「私のこと、全部見てたわけじゃないみたいだね。」


『ぐっ…だが状況は変わらん!


貴様は依然劣勢のままだ!』


「…ああ。あと一つ。」


「私のテイムモンスターたちは手下じゃない。


私の大事な仲間だよ。」


『仲間など…くだらん!従うものは全て手下!駒!』


「私達はどう足掻いても分かり合えないみたいだね…


さぁ反撃開始だよ。


終わりにしてあげる。」


私はそう言うとメギドに作ってもらった新しい杖を構えるのだった。

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