第119話 緊急レイド 虚空に響く虚無の咆哮

「ここは…草原?」


転移が収まると私は草原に立っていた。


他にはちらほらと私と同じように転移してきたプレイヤーが数人。


「何がどうなって…?」


「ユズじゃねぇか。お前も転移させられたのか。」


「あ、クロッツ。うん。クエストの終わりに強制的に。」


「俺もだ…って何だその卵は?」


「この子は…まだ秘密にしておこうかな。孵ってからの方が面白いからね。」


「まぁそう言うなら後の楽しみにしておくか。」


「それにしても緊急事態って何なんだろうね」


「…どうやらその理由がお目見えの用だぞ。」


そう言ってクロッツは空を指さす。


そこには禍々しい黒色の大きな龍が私達を見下すように存在していた。


何だろう…あの存在するだけで全ての生物を掻き消してしまうような圧倒的な存在感は…。


ディザスターエレファントに近い感じ…。


あれが厄災…。


《緊急レイドクエスト:虚空に響く虚無の咆哮を開始します。》


「レイド…?」


「ユズ!ぼさってしてる暇はなさそうだぞ!」


「…!ごめん。」


あれこれ考えている余裕はなさそうかな。


「とりあえず卵はアイテムボックスにしまって…」


《この卵はアイテムボックスには入れられません。》


「え…まじ…?


しゃーないか…。」


古龍の時は入れれたんだけどな…。


何か違いがあるのかもしれないけど…それを考えてる暇はないね。


私はとりあえず紺とルシェリを呼ぶ。


「紺。急に呼び出してごめんね。


セインたちは?」


「塔の前で待っていてもらってます。


フェニックスさんも異変を察知して来てくれたので安全は保証出来ますよ。」


「そっかなら安心だね。あ、この卵お願いしてもいい?」


「分かりました。お預かりしますね。」


卵を紺に預けて私は敵を見る。


相手は体がデカい…攻撃は当てやすいだろうけどそれだけじゃ倒せないはず…。


「スノウ!ルシェリ!」


「きゅ!」


「ルル~!」


「どうするつもりだ?あいつプレイヤーから一斉攻撃を受けてるのにビクともしてないぞ?」


確かにさっきからみんな


「こうするんだよ。スノウ!ブレイズブリザード!連弾!」


「きゅ!!!!!」


スノウに相手の体のいろんなところに攻撃を打ち込んでもらう。


『……ruuuuuuuuuuuaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!!』


「弱点は…尻尾の付け根!!!


行くよ…フェアリーオブジャッジメント!!!!!!!」


『……ruuuuuuuuuuuaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!!』


「そうか。さっき攻撃を連続で撃っていろんなところに当ててたのは弱点を探してたのか」


「そういうこと。」


「お前ら!ユズが弱点を見つけ出してくれた!みんなで尻尾の付け根を攻撃するぞ!


ユズの攻撃でダウンしてる今が一番のチャンスだ!」


「うぉぉ!」


「流石魔王!」


「FWO最強の一角は伊達じゃねえな!」


「もはやあの人が厄災でしょ」


なんか変なことも聞こえるけど…まぁいいや。


「決めるよスノウ、ルシェリ!」


「きゅ!」


「ルル~!」


私達は全力の攻撃を敵に叩きこんだ。


すると敵は叫びながらどこかにワープして行ってしまった。


「これで…終わり…?」


「みたい…だな。」


呆気なかった気がするな…。


何かのイベントの序章…とか?


《緊急レイドクエスト:虚空に響く虚無の咆哮をクリアしました。


後日参加プレイヤー全員に報酬が配られます。


また別途、撃退に多く貢献したプレイヤーにも報酬をお送りします。》


「報酬かぁ。届いたら確認しよっと。


クロッツはこの後どうするの…ってあれ」


クロッツの方を見ると光り輝いていた。


どういう原理…?


「…どうやら元の場所に戻されるみたいだな」


「フレンド登録しとく?あ、私に勝つまでしないんだっけ」


「煽ってんのか?…まぁでも次会えたらしようじゃねぇか。


…それじゃあな」


そう言ってクロッツは転移していった。


「紺。卵のこと守っててくれてありがとう。」


「大丈夫です。それにしてもこの卵は何の卵なんですか?」「


「それは孵ってからのお楽しみってことで。


あ、私もそろそろ戻る時間みたい。」


そのまま私の体は光り輝いて元居た場所へと戻されるのだった。


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