第109話 その重き刀は誰が為に振るうのかー終ー

「ふぅ…」


扇たちが開いてくれた宴会から抜けて外に出てきた私は夜風に当たる。


その場に居づらくなったとかじゃないけどなんとなく風に当たりたくなったんだよね。


「ここにいたのか」


「扇」


「あの場にいなかったから探した」


「ごめんね。ちょっと風に当たりたくって」


「…いい風だ。」


「うん。」


「ユズたちは明日には戻るのか?」


「うん。次の街に早く進まないと」


「この近くと言うと聖都エイトルティナだな」


「エイトルティナ…それが第八エリアの名前…」


「エイトルティナには大聖女と呼ばれている少女がいる。


興味があったら聖堂に見に行ってみるといい。」


「うん。あ、そうだ。」


「どうした?」


「あいつ…ムサシ(仮)と妖精族の関係について何か知らない?」


あいつは妖精にすごく恨みの感情を持っているようだった。


あれは少しいたずらされた程度の感情じゃないはず…。


「簡単に言うとな…狐の国を一度滅ぼし、暴れていた奴を止めたのが今の妖精の国の女王なんだよ。」


「女王が…」


「奴の体に封印を施して魂の状態にしたのもそう。


だから奴は妖精全てを憎んでいた。」


「そんなことが…」


「まぁ童はその時気絶していたから直接見たわけではないがな。


全てが終わった後に魂のみになった奴と女王が残っていたからそう判断しただけであって。」


「そっか。」


「改めて悲劇の連鎖を止めてくれてありがとう。心から感謝する。」


「私は私の出来ることをしたまでだよ。


それよりごめん。せっかくもらったユイノキラメキをこんな短期間で壊しちゃって。」


そう言って私はユイノキラメキの欠片を見せる。


ユイノキラメキは壊れた後この【キラメキの破片】というアイテムに変換された。


説明を見ても何に使うアイテムかは分からなかったけど…。


「構わない。それは既にユズのものだからな。


…だがそんなに気になるなら一つ提案がある。」


「提案?」


「その欠片を童に預けてはくれないか?」


「構わないけど…どうするの?」


「それは明日になってからのお楽しみだ。」


「そっか。じゃあ楽しみにしておくね。」


「ああ。」


「じゃあ私は戻るね。


扇は?」


「では童も戻るかな」


私達はお互いの顔を見合わせてニコリと笑って宴会の会場へと戻った。


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翌日。


私達は早朝に向こうへ戻ることになった。


まだ現世の鏡を持っていないので扇の力で戻ることになる。


「達者でな」


「扇もね。ツバキさんにもよろしく。」


「ルル~!」


「大狐様。また会いに来ますね。」


「ああ。」


「じゃあ…」


「ユズ。昨日のことをもう忘れたのか?」


「昨日…あ、預けた欠片のこと!」


「手を出してくれ」


「こう?」


言われるがままに手を出すと扇はその上に指輪を置いた。


「指輪?」


「それはキラメキのリング。ユズのために作った特注品だ。」


ーーーーーーーーーーーーーーーー

キラメキのリング


LUK+200


【特殊スキル:ユニゾン】


狐族の長が友人のために作成した特別な指輪。


信頼を重ねた仲間と力を合わせることで強力な技を使うことが出来る。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


ユニゾン…?


新しいシステムかな…?


後で調べてみないと。


「ありがとう。大切に使わせて貰うよ。


じゃあ…またね。」


「ああ…また。」


私は扇と握手を交わして第七エリア…セルブレアへと戻るのだった。




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