第108話 その重き刀は誰が為に振るうのかー13-

「ドロップ品の整理も終わりっと…」


ムサシとの戦闘の後、私達は狐の国へと戻っていた。


扇はツバキさんと話し合いに行ってて紺は街の方へ買い物へ行っている。


ルシェリは紺のお手伝い。


そして私はというとムサシ戦でドロップした戦利品の整理をしていた。


戦闘終わってすぐの時は確認出来てなかったからね。


「それにしても…これはどうすればいいのかな…」


私はドロップの中にあった物の一つ。


【古代の石板片】


何かのクエストに使うのは間違いないんだろうけど…


文字も読めないし手がかりもない。


「やっぱりこれは後でいいかな。」


今すぐ使うものでもなさそうだし。


それよりもこっちのドロップ品を扇に届けないとね。


私はドロップ品の一つを持って今いる部屋を出るのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ツバキさーん。」


「ユズ様。どうかなされましたか?」


「扇のこと探しに来たんだけど今どこにいるか知らない?」


「大狐様でしたら先ほど話し合いが終わりまして『野暮用がある』とどこかへ出かけられましたよ。


恐らく場所は…」


「分かった。ありがとう。」


「あ、まだ場所が…」


「大丈夫なんとなくわかるから。」


そう言って私は扇がいそうな場所…【魂巡る空洞】へと向かう。


そこには武蔵さんの墓の前で手を合わせる扇の姿があった。


「扇」


「ユズか。よく童の場所が分かったな。」


「なんとなくここにいると思ってね。


武蔵さんの埋葬は終わったの?」


「ああ。おかげさまでな。さっき終わった。


それで何か用だったのか?


ここまで来たのは童に用があるからなんだろう?」


「うん。これを渡しにね。」


そう言って私は持ってきたドロップ品を扇に渡す。


「これは…ムサシの…いや形が変わっているが武蔵の刀だ…」


「ムサシを倒した時に落としたものなんだけどもしかしたらと思って。」


「…ありがとう。ユズ。この刀はとても大切なものだったんだ。」


「大切な物?」


「ああ。武蔵が初めてこの刀を手にしたときに言ったんだ。


『命に代えてもこの刀を使って扇を守る』と」


「そっか」


「しかし墓を掘り起こすのはあれだな…」


「じゃあこうしたら?」


そう言って私は墓の前に刀を突き立てる。


「これでみんな武蔵さんのことを忘れないし。


刀もきっと武蔵さんの元へ届くよ。」


「ありがとう。ユズ。」


「大したことはしてないよ。」


「いいや。それでも受け取っておいてくれ。


…さて。城に戻るか。


宴会の準備がある。


今宵は楽しんでくれ。」


「うん。」


私達はそう言って城へと戻るのだった。

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