第107話 その重き刀は誰が為に振るうのかー12-
「ああは言ったけど…どうしようかな…」
私は巨大な体へと乗り移ったムサシを見ながらつぶやく。
いやこの状態だともうあいつはムサシとは呼ばないのかもしれない。
まぁそこはどっちでもいいか。
【このまま貴様を踏みつぶしてやる。】
「そんな巨体で私のこと踏めるの?」
【ほざけ。お前みたいなのろまなど一踏みだ。】
「じゃあ…試してみようか?」
そう言って私はユイノキラメキを構える。
しかしそこからしばらくの間動かない状態が続く。
私も相手も相手が攻撃を仕掛けてくるのを待っているわけだ。
「来ないの?それとも私が怖い?」
【この状態の我に勝つと?これは我の体の中でもとっておきだ。
未だ何人たりとも破られたことはない。
貴様ごときに破られるような体ではない。】
「じゃあ私が最初で最後ってことだね」
【ほざくなと言っている。】
「怒ってる割には攻撃してこないじゃない。私にビビってるの?」
【…そんなに踏みつぶされたいなら望み通り踏みつぶしてやる】
そう言ってムサシ(仮)は私を踏みつぶそうとしてくる。
「…ふふふ。掛かったね。」
【…?】
「私はお前が動くときを待ってたんだ。」
【我が動くのを…待っていただと?】
「そう」
【何をほざいて…これは?】
ムサシはようやく周りの異変に気付く。
ムサシ(仮)の周り…というか私達の周りに貼られていたムサシ(仮)の張った結界が解除されているのだ。
まぁやったの私なんだけど。
「お前は私を怒らせたんだ。
扇や…本来のムサシの想いを傷つけた。
到底許されることじゃない。
だから…それ相応の報いは受けてもらう。」
【報い?】
「そう。だけどそれを与えるのは私じゃない。」
そう言って私は空を指す。
空から降り注ぐ一撃はムサシ(仮)の脳天に降り注ぐ。
私の攻撃じゃない。
これは…
「ユズ!紺からの救援受け取った!助太刀に来たぞ!」
「扇!」
この戦いを終わらせるのにぴったりなのは私じゃなくて扇だ。
だから紺にあらかじめ合図をしたら扇を呼びに行ってもらうようにこっそり伝えていたのだ。
NPCが本当の人間のように喋って動くFWOでしか出来ないことだ。
まぁ運営はこの勝ち方は想定してないだろうけどね。
【狐ふぜいが!!!!!!!!】
「今日一声出したなぁ」
「お前が武蔵に乗り移っていた間…童は耐えた。
武蔵の体が酷使されること。
その体で悪事を働くこと。
民を傷つけること…。
だから…ここで潰えろ。
行くぞユズ。」
「いいの?私も」
「私はあくまで救援だ。
戦ってるのはユズだろう?」
「じゃあ…遠慮なく。」
「童の魔力だ。
受け取れ。」
そう言って扇はユイノキラメキに魔力を流し込む。
これで扇の力も使えるってことね。
「「狐術超奥義;狐焔!!!!!!!!!!!」」
【我はこんなところで終わるわけに…はあああああああああああああああああああ】
ムサシ(仮)は叫びながら巨大な体と共に魂ごと炎に包まれて消えていった。
しかしその直後ユイノキラメキは粉々になって砕けてしまった。
「さすがに酷使しすぎたかな…」
「いや狐焔は武器に乗せて使うと威力を増す代わりに武器が壊れるんだ。
先に言えばよかったが…」
「いやそんなタイミングなかったから大丈夫。」
「そうか。」
「とりあえず戻ろうか。紺達も待ってるし武蔵さんの埋葬もしたいでしょ?」
「そうだな。」
そう言って私達は紺とルシェリの元へと向かうのだった。
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