第105話 その重き刀は誰が為に振るうのかー10-

「ここ…だね。ムサシがいる場所は」


狐の国の外れ…木が切り刻まれ地面が抉られている場所があった。


話によればここにムサシがいるらしいけど…。


「それらしいモンスターはいないね…」


「ルル…」


「…いえ待ってください。ここに結界が張ってあります。」


「結界?紺には見えてるの?」


「狐の国の住民はみんな特殊な能力を持ってるんです。


私は目に見えない力の流れを感じ取ることが出来ます。」


それで見えない結界を見ることが出来るってことね…


隠しスキルって感じかな?


「解除はできそう?」


「圧倒的な力で形成されているので今の私じゃ無理ですね…。


しかし穴を開けてユズさんだけを中に送るくらいなら出来そうです。


すぐに閉じてしまうため私達は入れそうにないですが…。」


「…その作戦で行こう。


元々一人で挑んだ方がいいって言われてたし。」


「大丈夫なんですか?」


「ルル…」


「二人とも心配してくれてありがとう。


でも大丈夫だから信じて待ってて。」


私はそう言って二人の頭を撫でる。


「それに一人じゃないよ。


ユイノキラメキにはみんなから貰った魔力が詰まってる。


だからその場にいなくても一緒に戦ってくれてるよ。」


「…はい!お気をつけて…!」


「ルル~!」


私は二人に見送られながらムサシの待つ結界の中へと向かうのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「ここが…ムサシの結界内…」


【妖精の匂い…】


「…っ!」


機械のような声が私の頭に響く。


声の方向を見ると古びた鎧を着た一人の人間が座っていた。


これが…おそらく…


「あなたがムサシ…でいいんだよね。」


【いかにも。我が字は重刀剣豪ムサシ。貴様の名は】


「ユズ」


【ユズ。貴様は何をしにここに来た他の奴らと同様邪魔をしに来たのか?】


「邪魔?何の?」


【我の修行のだ。】


「私は周りに迷惑をかけてるあなたを倒しに来ただけだよ」


【…驚いた。勝つつもりでいるのか?人間の間では厄災と呼ばれているのだろう?


我は。】


「それでも勝つよ。」


【…ちょうど我も貴様が気に入らなかったところだ。


妖精の匂いをまき散らしおってからに…】


「…妖精の匂い?」


確かに私はルシェリを連れてるし妖精の国にも行ったことあるけど…。


どういう意味だろう…?


【貴様を切り刻んで修行の続きをするとしようか】


「私だってそう簡単に負けるつもりはないよ。


ユイノキラメキ!」


【素人が刀を持ったところで何の脅威でも…】


「どうかな?」


【…切られたところが凍っている?


魔術を纏わせたか】


「さてそれは…どうかな!」


私はムサシの攻撃を凍らせて防ぎつつ風で速度を上げる。


【剣技は荒いが…なかなかの力の持ち主のようだな。


舐めていたことを詫びよう。


だが…妖精の手先などに一切の容赦はせん】


「…どうしてそんなに妖精を目の敵にするの?」


【我はやつに…妖精の国の女王に呪いを掛けられた。


一生刀に触れぬように魂のみになる呪いだ。】


「それはあなたが暴れてたからじゃないの?」


【我はただ修行をしていただけだ。


それを奴は…!


だから風前の灯だったこの人間の体を奪った。


そして手始めにこの男の故郷を滅ぼして


人間に…女王に知らしめてやったのだ。


我に呪いをかけたことを後悔させるためにな】


「…もういい。お前は私が倒してその体は返してもらう。」


【やれるものならやって見せろ。


その前に死ぬと思うがな】


そう言ってムサシは紫の刀を構えてこちらに切り掛かってくるのだった。

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