第100話 その重き刀は誰が為に振るうのか―5ー

「送れるのはここまでだが気を付けてな。」


「ありがとうございました。またよろしくお願いしますね。」


私はワイバーンに乗って去っていくオレヴさんに手を振って見送るとスノーリアへと入る。


今度こそ大狐様を見つけたいところなんだけど…。


「きゅいきゅい!」


「ん?白狐…どうしたの!いきなり!」


私の頭の上で大人しくしていた白狐が急に飛び降りて走り始めた。


「もしかしたら白狐ちゃんが走って行った先に大狐様がいるのかもしれないです。」


「その可能性はあるね。付いていってみようか。」


走って行く白狐の後を付いていってみる。


すると大きなクレーターとそこに佇む一人の少女がいた。


白狐はその少女に飛びつく。


「おお!白!やっと戻ってきたか!心配したんだぞ!」


「きゅい―」


「白はいなくなるしなんか変なのに襲われるし…いつになったら童は甘味を食せるんだ…」


「あの特徴的な耳…大狐様です…」


「え?あの子が…?」


どう見ても6~7歳のケモミミの付いた普通の女の子にしか見えないけど…。


「大狐様。お久しぶりです。」


「おお!紺ではないか!久しいな!」


「お久しぶりです…その…そのお体は…?」


「いやぁ…ちょっとやらかしてなぁ…見た目が縮む以外の変化はないから安心してほしい。


して…そっちは…見覚えがある気はするが…」


「私はユズ。紺と一緒に冒険してる旅人だよ。」


「ユズ…やっぱりそうか!


あの武闘大会を圧倒的な力で優勝したあの魔王ユズか!」


「その覚えられ方はちょっと不本意だけど…まぁ概ねあってるかな」


「会えてうれしいぞ!


おっと自己紹介がまだだったな!


童は扇。狐の国の王でみんなには大狐様と呼ばれておるよ。


どっちで呼んでも構わんよ。」


「じゃあ扇って呼ぶね。」


「大狐様!ユズさん!自己紹介が済んだところで急ぎましょう!


狐の国へ!」


「二人は狐の国へ行きたいのか?」


「うん。ツバキさんからの救援要請で国が大変だから助けてほしいって。


それで現世の鏡を探してたの。


現世の鏡でしか狐の国へいけないって聞いたから。」


「なるほど…なら童が連れていこう。」


「出来るの?」


「ああ。なんせ童は狐の国の王だからな。


自分の国に帰るくらい何でもないことよ。


しかしそうだな…。


現世の鏡は確かにいるかもしれないな。


今回は童が連れていけるが次回からはそうはいかない。


いつでも来れるようにユズに持っていてもらう方がよさそうだ。


これをヒントに探すといい。」


そう言って扇は一枚の紙を渡してくる。


そこにはどこかの森の絵が書かれていて中心に二重丸が書かれていた。


「そこに現世の鏡はある。


時間がある時に探してみてほしい。


まぁ強力な番人に守らせているからそう簡単にはいかないだろうが…


頑張ってくれ。」


「ありがとう。行ってみるよ。」


「では狐の国に向かうとしようか。」


そう言って扇は即時にワープホールを作りだす。


「…行きましょう!ユズさん!」


「うん。」


私達はワープホールをくぐって狐の国に移動するのだった。

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