第92話 孵化の手がかり

「こんにちわー」


卵を受け取った翌日。


ゲームにログインした私はテイマー組合に足を運んでいた。


「ユズさん。こんにちわ。テイマー組合に御用ですか?」


今日はエイジアではなく別の受付嬢さんが対応してくれる。


「うん。ちょっとエイジアに用があるんだけど呼んできてもらっていいかな?」


「承知しました。少々お待ちください。」


受付嬢さんはそう言って奥に引っ込んでいく。


少ししてエイジアを連れて戻ってきた。


「ユズさん。ようこそいらっしゃいました。本日は私に御用だというお話ですが…」


「うん。珍しいものを手に入れたから見てもらおうと思って」


「ユズさんは色々と規格外なことが多いですからね…。


一体何を持ってきたんです?」


「これなんだけど」


私はエイジアに古龍の卵を見せる。


その瞬間、エイジアの動きがぴたりと止まった。


「こ、こ、これは…」


「古龍の卵なんだけど…」


「古龍の卵!!!!???そ、そんなものをどこで手に入れたのですか!?


本物なんですか!?」


「ちょっと色々あってね…」


運営から邪竜の卵を貰ってそれをアイテムで古龍の卵に変えました…なんて言ってもあれだし。


ここは少し誤魔化しておく。


「それで…孵化装置なしでの孵化方法ってない?」


まぁモモに頼んでもいいんだろうけど…。


モモを信用していないってことじゃないけどこの卵は自分で孵さないと意味がない気がしてるから。


ユニーククエストにも関連してそうだし。


「し、失礼しました。取り乱しました…。それで孵化装置を使用しない孵化の方法…でしたね。


それでしたらテイムモンスターに手伝ってもらうといいですよ。


孵化装置よりも孵る時間は遅くなりますが…


鳥系のモンスターは卵を孵化させるスキルを持っている場合があるんです。」


「鳥系のモンスターかぁ…」


私のメンバーには鳥系モンスターはいないからテイムしに行かないとなぁ…。


まぁでもこれは後でもいいか。


「あ、あとエンシェントドラゴンについても教えてもらっていい?」


あの時はイベントの途中だったからね…。


ドラゴンさんとあんまり喋れなかったから詳しい情報が知りたいってわけ。


「はい。エンシェントドラゴンは伝説に伝わる古から生きる龍です。


人里からは離れたところに巣を持っているとされていて


長く生きたドラゴンほど真っ白な毛並みを持つそうです。


圧倒的な力を持っていて一息で辺り一面を火の海に出来るとされています。


まぁ全て言い伝えでしかないのですが。」


「姿を見た人はいないの?」


「姿を見たものはいません。


それだけエンシェントドラゴンは人前に姿を現さないんです。


だからさっきユズさんが古龍の卵を持ってきたとき取り乱してしまったのです。


卵ももう2000年は見つかっていないと…そう言われていたので」


「そうだったんだ…」


私はもしかしたらとんでもないものを受け取ってしまったのかもしれない…。


「古龍を孵化するともなると普通の鳥系モンスターじゃ不可能かもしれないですね。


それこそ伝説級のテイムモンスターとかじゃないと…」


「まぁ…孵化させる方法は分かったから何とか頑張ってみるよ。」


「孵化させたら見せに来てくださいね。」


「うん。それじゃあ。」


私はそう言って組合を後にするのだった。

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