第89話 救援と新しいフレンド

「はぁ…はぁ…まさかこんなに…苦戦するなんて…」


私はどうにか体制を立て直して相手の方を見る。


どうしてこんなことになっているのかといえば第七エリア探索中に見たことのないモンスターに遭遇してしまったからだ。


普通ならスノウ達と一緒にどうにか倒すんだけど…。


ここには《テイムモンスター召喚禁止》の結界が張ってあってそれが不可能なわけ。


一緒に探索していたルシェリも戻されてしまった。


「万事休すってやつだね…」


目の前には修道服のようなものを来た人型のモンスター…。


左手には斧を装備していて明らかにこちらに敵意を向けている。


恐らく結界を張っているのもあのモンスターだ。


「これでどう!?武器変形!槍!」


『キヒッ!』


私は変形武器魔法で大剣を作り出して敵に投げる。


しかしモンスターは斧で槍を弾く。


「変形!大剣!」


弾かれた槍を大剣に変換して攻撃する。


『キヒィ!』


しかしまたそれも弾かれてしまう。


「私だけじゃ分が悪い…」


どうやら相手は攻撃を予見するようなスキルを持っているらしい。


…私のSPDが遅いだけなのかもとも一瞬思ったけどこの変形武器魔法:幸の攻撃力と素早さはLUKと同じになる。


つまりどういうことかといえば、相手は攻撃の軌道を読むスキルを持っていてなおかつATKとSPDは私のLUKより高いってこと。


このままいくと押し切られて負けるかも…。


そう思った時だった。


「救援します!申請してください!」


そんな声が後ろから聞こえてきた。


「え、わ、分かった!」


言われた通りに救援申請を出す。


救援申請は近くにいるプレイヤーに共闘の申請を出すことのできるシステムだ。


これでピンチも脱せられるというわけ。


「申請受け取りました…セイントスラッシュ!!!!!!!!!!」


光の剣の一撃でモンスターは真っ二つになりポリゴンへと変わった。


剣をしまった女の子はこちらへ近づいてくる。


「終わりました!」


「ありがとう。助かったよ。私は…」


「ユズさん…ですよね!?」


「うん…名前名乗ってないけどよく知ってるね…」


「ユズさんはFWOの中では割と有名人ですから!


今やってる人で知らない人はいないと思いますよ!」


「…そうなの?」


「はい!従魔王のユズといえばこのゲームで一番有名なプレイヤーだと思いますよ!」


「そうなんだ…」


知らなかった…自分がそんなに有名人だったなんて…


セルブレアでの視線もそういうことだったのかな?


「あ、自己紹介が遅れました!私はリンって言います!」


「よろしく。…リンはさっきのモンスターと戦ったことあるの?」


「いえ。私はATKとSPDを重点的に振ってるので力技でぶった切ってるだけです。」


「そうなんだ…それと聞いてもいい?」


「はい!」


「その耳と尻尾って…」


リンの頭とお尻には可愛い耳と尻尾が生えていた。


プレイヤーに獣人族は設定できないはずだし…アクセかな?


「ああ。これですか?でっかいトラ型のモンスターに負けた後に生えてきたんですよね。」


「でっかいモンスター…それってもしかして…」


私と同じように特殊なボスに負けたってことだろうか?


じゃあディザスターエレファント以外にもそういうモンスターが複数体いるってこと…?


あんなのが複数体もいるのかぁ…


レベル上げるまでは会いたくないな…。


「あ、そうだ!フレンド登録お願いしていいですか!?」


「うん。」


そう返事をして私はリンとフレンド登録をする。


「ユズさんはこれからどうするんですか?」


「私はまだ探索を続けるよ。


テイムモンスター禁止の結界にさえ気を付ければどうにかなるし。


一緒に行く?」


「魅力的な提案ですけど…!お友達と約束してるので…!」


「そっか。じゃあまた今度だね。」


「はい!次はぜひ一緒に遊びましょう!」


私はリンと別れると再び探索を再開するのだった。





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