第83話 妖精の統べる国⑥

『グルルゥゥゥゥゥゥ…!!!!!!』


「こりゃ…人の話は聞きそうにないね」


鳥竜を倒した後私は色々なところを探し回ってやっとフォールンウルフを見つけたのだが…


体は黒と紫の禍々しい感じで紫のオーラを身にまとっていた。


さっきの鳥竜のように喋ることはせずただ唸っているばかりだ。


「あれは…」


フォールンウルフの周りには妖精のものと思わしき羽と食いちぎられた体がいくつも転がっている。


恐らく女王様の言っていたフォールンウルフにやられた妖精たちだろう。


『グルルゥゥゥゥゥゥ』


「あなたはなぜ…こんなことを…妖精たちを守っていたんじゃないの…?」


『それは私が闇の力を与えたからだ。』


そう言って奥から出てきたのは黒い羽根を持ち、黄色い髪の毛に緑の髪をした長髪の人物だった。


「…誰?」


『私の名はピアレイ。その犬っころに闇の力を与えた張本人さ。


始めまして…女王の協力者さん。


確かユズさん…といったかな?』


ピアレイはそう言ってニコリとほほ笑む。


…邪悪な笑みといった方が正しいか。


「…なんで私のことを?」


私は名前を名乗っていないなのに…?


『あの城には私が送り込んだ密偵が潜んでいる。


女王のどんな隠しごとも私には筒抜けなんだよ。


君が妖精たちに招待されてこの国に来たこともね。


他には夜一人で寝るのが怖くて娘のところに行ってたり


雷が怖くて鳴るたびに縮こまってたりね。』


女王様そんな可愛い仕草するのか…見てみたい…じゃなかった!


「あなたのせいで妖精たちがウルフに襲われて女王様は困っているの。


悪いけどここで倒させてもらうから。」


『やれるものならやってみなよ。


ただし…これらと戦えたらね。』


そう言ってピアレイはフォールンウルフに食いちぎられたであろう妖精たちに紫のオーラのようなものを注ぐ。


『ヴ…』


『ヴァ…』


『ヴォ…』


『ヴェ…』


妖精たちは紫のオーラを纏って呻き声を上げながら浮かび上がった。


『どう?心優しい君にはこれらと戦うなんて無理な話でしょ?』


「召喚。スノウ。ブレイズブリザード。」


『…え?』


「あ、あの狼、鬣と牙ドロップした。


あ、そう言えばあの狼は倒さないでって言ってたような…。


まぁいいか。


妖精たちは…ドロップなしかぁ…まぁゾンビだし腐敗肉とか落とされても困るしいいか…」


『どうして!?』


「?何が?」


『なんで妖精たちを躊躇いもなく攻撃できるの!?仮にも妖精たちの味方なんでしょ!?』


「いや…会ったこともない妖精にそんな情わかないでしょ。」


『聞いてた情報と違う…!あなたは会って間もない女王を助けるために動いているお人よしだって…!』


「確かに女王とルシェリ達のためにこの問題は解決するつもりでいるけど…」


『こんなの…私の思い描いてた光景じゃない!!!!!!!


もういい!全部滅ぼしてやる!!!!!!』


そう言ってピアレイは闇のオーラを纏って襲い掛かってきた。


急にラスボス戦になるタイプのイベントだったのか!


というかピアレイ、最初とキャラ変わりすぎじゃない…?


というかこんな対応出来るなんて最近のAI凄いな!


…って感心してる場合じゃない。


「とりあえずスノウ!ブリザードランス!!!」


「きゅうううううう!!!!!!!!!!」


『当たらないよ。そんなの!』


「こっちが本命なんて…一言も言ってないけど?」


そう言って私は武器変形で槍に変形させて投げる。


あの闇を纏った鳥竜はこの槍で倒せたし闇に変形武器魔法:幸は有効なはずだ。


『そんなのお見通しだよ。


帝王の威圧!』


ピアレイがスキルを使うと槍は跡形もなく消滅してしまった。


「クールタイムの間、スノウに時間を稼いでもらうしかない…」


『君のペットも君も倒して女王の…お母さんも倒してこの国を滅ぼす!


そして僕が支配者になるんだ!』


「お母さん…もしかして…女王の…」


『そうさ。僕はお母さんに捨てられたんだ。


力も弱くていらない子だったからね!


でも闇の力を手に入れた!


だからこの力でお母さん…いいやあの憎き女王に復讐するためにずっと計画を練っていたんだ!


キメラの実験をしたり…


聖なる犬っころを闇に染めて妖精を襲わせたりしてね。


でもお前が来て全てが狂った!


だからお前から消す!


その後でじっくりとお母さんをいたぶって殺す!!』


「女王は死なないよ。私も。


今ここであなたを止めるから」


『やれるものならやってみろ!お前のペットの攻撃は僕には通用しないぞ!』


「あなたは気づいていないんだろうけど…もう私の勝ちだよ。」


『…?』


「召喚!ルル!ミックス!スピード×マジック!」


「きゅるるぅ~きゅるるる~」


私はルルを召喚してミックスを指示する。


ピアレイが私を怒りのままに攻撃してきているとき、私は音を頼りに水のある場所へと移動してきていたのだ。


ピアレイはそれに気づかずに追ってきてたってわけ。


『何これ!?動きが遅く…』


「スノウ!ブレイズブリザード!」


『ぐああああああ!!!!!!』


「…来世は幸せになれるといいね。」


変形武器魔法:幸が変化した大剣がピアレイを突き刺して闇が消えていく。


『…闇を祓ってくれてありがとう。』


ピアレイは最期に一言だけ言って消滅した。


ピアレイが消滅すると辺りを覆っていた闇が晴れていった。


「…このドロップを女王様に渡してクエストクリアかな?」


私はピアレイが落としたドロップを女王様に渡すべく城へと戻るのだった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る