第81話 妖精の統べる国④

『なりません。いくらユズ様の頼みでもそれは承諾できません。』


妖精の女王様にフィールドへと出る許可を貰いに行った私だったが…


返ってきたのはYESではなくNOの反応だった。


まさかこんなところで進行が詰むとは…。


「…一応理由を聞かせてもらってもいい?」


『ルシェリはまだ幼いのですよ!?死んでしまったらユズ様のように復活は出来ないのですよ!?


許可できるわけがないでしょう!』


「…確かに」


NPCは一度死んだら復活は出来ない。


テイムモンスターや召喚士が使う召喚魔獣などの例外を除くが。


というか女王は私達プレイヤーがやられても復活すること知ってるんだ…。


普通の高性能AI…だと思ってたんだけど…


いやこれ以上の詮索は良そう。


人にも妖精にも知られたくないことの一つや二つある。


『それにユズ様も危険ではないですか。』


「?私も?」


『ユズ様は確かに厄災へ対抗できる力程のを持っています。


ですが…あの怪物には勝てないかと…』


「怪物?」


『このフェアリアの外には様々なモンスターが生息しています。


その中でも危険とされているモンスター…それが怪物…フォールンウルフです』


「フォールンウルフ?」


『フォールンウルフは元々は聖なる獣だったのですが何者かの手によって


闇に墜ちてしまった怪物です。


元々味方だった我々を躊躇いもなく攻撃してくるのです。


そのせいで何人もの妖精が葬られました…。』


「だからルシェリが外に出ることに抵抗を示してたんだね。」


『はい。』


「ならなおさら止めないとじゃない?」


『え?』


「そのフォールンウルフやそれを操ってる黒幕を倒さないといずれここにも大きな被害が出る…違う?」


『それは…そうですが…』


「だから私が倒してくるよ。」


『ですからそれは…!』


「ルシェリはここに置いていくから。」


『ル!?ルー!!』


「ごめんね。女王がルシェリを危険に晒したくない気持ちも分かるから


女王とここで私の帰りを待ってて。」


『ル…』


「大丈夫。ちゃんと無事に帰ってくるから。


それに私には頼もしい仲間もいるんだよ。


それとルシェリの応援があれば無敵だよ。


応援してくれる?」


『ル…ルール―!』


「ありがとう。」


『本当に…行くのですね。復活できるとはいえ…』


「私を信じて…って言うのは会ったばかりだし無理な話だろうけど。


私は負けないよ。フォールンウルフも黒幕も倒して帰ってくるから。」


『…分かりました。では正式に依頼させてください。


闇に墜ちたフォールンウルフの討伐…および闇からの解放


それとその裏で糸を引く黒幕の討伐…。


それをユズ様にお願いしたいのです。』


《フェアリア:メインストーリークエスト


妖精の国を脅かす闇が発生しました。》


「了承。じゃあ行ってくるね。」


そう言って私は今度こそフィールドの外へと出るのだった。

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