第72話 精霊を追って②

図書館を出た私は器を作れる鍛冶師を探すべく王都の店が集まる場所に来ていたのだが…


「聖杯ってことだろ?わりぃが俺には無理だ。あれは鍛冶のスキルレベル50は必要だからな…


作れる奴って言ったら相当限られてくるぞ?」


「そうなんだ…。」


どうやら器(正式には聖杯らしい)を作るには相当スキルレベルを


「俺にゃ無理だが…作れそうなやつに心当たりはある。」


「ほんと?」


「ああ…。ただそいつは気難しい奴でな。気に入った相手じゃないと何も作らないんだと。」


気にいられなきゃいけないのかぁ…まぁ行ってみるしかないよね…。


「場所を教えて貰ってもいい?」


「ああ。ちょっと待ってな…ほらよ。これをマップに登録すれば場所が分かるぞ。」


「ありがとう。じゃあまたいつか。」


「武運を祈ってる!」


私は情報を提供してくれたプレイヤーと別れると気難しい鍛冶屋がいるという場所へと向かった。


それにしてもどんな人なんだろう…


鍛冶師で気難しくてスキルレベル50以上ってくらいだからいかついおじさんなんだろうか?


『お前みたいな軟弱物には何も作らん!帰れ!』


とか言われたらどうしよう…?


まぁ行ってみないと分からないよね…。


「ここだ。」


しばらく歩くと小さい小屋が見えた。


あそこに聖杯を作れる鍛冶師がいるのかぁ…。


とりあえずドアを叩いてみる。


「すみませーん。」


「ひゃ、ひゃい!!!!!ちょっとまってくださ…ああ!」


ものすごい音がしてその後にドアが開かれる。


「いらっしゃいませ…」


「だ、大丈夫ですか…?」


「はいぃ…。そ、それで…本日はどのようなご用件でしょうか?」


「ここに凄腕の鍛冶師がいるって聞いたんですけど」


「凄腕かは分かりませんが鍛冶師は私です。」


「…え?」


「ん?」


えっと…このドジっ子の人が…凄腕の鍛冶師…?


「失礼ですけど…鍛冶のスキルレベルはおいくつで?」


「えっと確か…70…でしたかね。」


「…聖杯って作れたりしますか?」


「はい。材料さえあれば。」


…ほんとにこの人が聖杯を作れるっていう凄腕の人なのか…。


全然見えないけど…?


「…?どうかされましたか?」


「あ、いや…失礼な話ですが気難しい方だと聞いていたもので


気に入った相手からしか依頼を受けない…とかなんとか」


そう言うと相手は静かに目を閉じる。


「私が…ですか?…急に人が来なくなったと思ったらそんな噂が流れてたんですね…。


安心してください。私は誰からの依頼でもちゃんと受けますよ。


悪質なプレイヤー以外からは。


ドジなところがあるのは自分でも自覚していますが…


これでもこのゲームではトッププレイヤーと呼ばれるうちの一人ですから」


「私からの製作依頼…受けてもらえますか?」


「はい。あ、自己紹介がまだでしたね。


私はユウラ。


鍛冶師をメインにしています。」


「私はユズ。


テイマーをしています。」


「ユズってプレイヤーネームでテイマーって言ったら…


もしかして従魔王って呼ばれてるあのユズさんですか!?」


「従魔王…?」


なにその二つ名初耳なんですけど…私ってそんな物騒な二つ名付いてたの…?


「最強のテイムモンスターを従えてあらゆるものを蹂躙するって噂の…」


「そんな噂が…私はスノウたちに守られてるだけなんだけど…」


「ちなみにテイムモンスターちゃんたちを見せてもらっても…?」


「いいですよ。みんな!」


私は一斉にテイムモンスターたちを召喚する。


「す、すごい…!このゲームを結構な時間プレイしてますけど見たことないモンスターちゃんばかりです…!」


「まぁうちの子は激レアな子ばかりですからね。」


「うぉぉ!!!!なんかアイデア沸いてきました!!!!」


そう言ってものすごいスピードで何かを作り始めた。


さっきとキャラ違ってない?


「出来ました!従魔の杖です!」


「え?今の一瞬で?」


「私、作製加速EX持ってるのでこれくらいなら30秒くらいで出来ちゃいます。」


「さすがトッププレイヤー…」


「いい刺激をくれたお礼にこれはユズさんに差し上げます。」


「いいんですか?」


「はい。お代もいりません。」


従魔の杖の詳細を見てみる。


ーーーーーーーーーー


従魔の杖


★8(EX)


自身のパーティに登録されているテイムモンスターのもっとも高いステータスが+100





凄腕の職人によって作られたテイマー用の杖。


ものすごい力を秘めている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


性能がとんでもなさすぎる…。


これをただとか無理だって…。


「でもそれじゃ悪いなぁ…そうだ。うちの子を気が済むまでモフモフ出来るとかどうです?」


「いいんですか!?」


「はい。好きな子をどうぞ。そのままでいいので私の依頼を聞いてもらえますか?」


「ではモココちゃんを…すごいモフモフゥ…っとそうでしたね。依頼があってここに来たんですよね。


最初に言ってた聖杯のことですか?」


「はい。実はチェーンクエストで聖杯が必要になりまして…


作れる人を探していたところでユウラさんの話を聞いたんです。」


「なるほど…分かりました。引き受けましょう…ただし条件があります。」


「条件?」


「私と一緒に素材を取りに行ってくれませんか?


聖杯の素材を落とすプラチナゴーレムは私一人じゃ倒せそうにないので…」


「私が一人で行ってきましょうか?」


「それじゃダメなんです。鍛冶スキル持ちがパーティにいないとドロップしないアイテムを使うので…」


「そういうことなら護衛はうちの子達に任せてください。」


私は裏から弓打つしか出来ないしね。


「よろしくお願いします。あ、フレンド申請しますね。」


「はい。」


ユウラさんから来たフレンド申請を受理する。


「じゃあ早速行きましょうか。」


「はい。」


私達は聖杯の素材を手にするべくプラチナゴーレム討伐へと向かった。

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