第64話 第五回イベント イベントの終わり

「さて…これはどうしたものかなぁ…」


私は拠点に居座っている触手の怪物を見ながら困り果てていた。


とりあえずノエカの無事は確認したいところだけど…。


こんな状況じゃ…。


「勘づいてはいたけどあなたがやったことなんだね…ルーコ。」


私は触手の怪物の横に立つ女…ルーコを見てそう言う。


怪しいとは感じていたけど…まさか本当にそうだったとは。


その証拠にあの怪物は真横にいるルーコを一切攻撃しようとしない。


それはルーコがこいつを召喚したからってことで間違いないだろう。


「そうよ。あたしがこいつを召喚したの。あんたを脱落させるためにね!」


「一体何のために…?」


ルミがルーコに尋ねるとルーコは顔を少し歪ませる。


「外野は黙ってなさい…って言いたいところだけどいいわ。教えてあげる。


全てはダーリンに褒められるためよ!


ダーリンの手を煩わせたユズ…あんたを倒してね!」


「彼氏に褒められるため…それだけのためにイベントを滅茶苦茶にしたってことですか…?


ありえませんね…許せません…!」


どうやらルミも私と同じ気持ちらしい。


っていうかルーコのダーリンと私あったことあったっけ…?


いやまぁそこはどうでもいいか。


とりあえず私のやるべきことは一つ。


この怪物を止めてルーコを運営に突き出すことだ。


私の身を守るためにも運営からの依頼を達成するためにも必要なことだからね。


「スノウ!アイススラッシュ!」


「きゅう!!!!」


『DRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA‼‼‼』


「再生するのかぁ…厄介な能力だね…」


スノウスラッシュで切り裂かれた触手は一瞬で再生してしまった。


こういう再生する能力には何か仕掛けがありそうだけど…


例えば再生するための核があるとか。


「スノウ、何か核みたいなものを探して!」


「きゅ!」


「私も手伝います!」


「ありがとうルミ!」


「無駄な足掻きを…捻り潰しちゃいなさい!」


『DRAAADRAAAAAAAA』


ルーコは私達を潰すように指示するが怪物は動かない。


「動かない…?」


「どうしたのよ!?早くやりなさい!!!」


「私を忘れてもらっちゃ困るな~」


そう言って歩いて来たのはさっきまで姿を見せていなかったノエカだった。


どうやら自力で避難していたらしい。


「ノエカ!?あんたどうやって…」


「私がそれにやられて脱落と思ってた~?


これくらいじゃ私は負けないよ~?」


「…まぁあんたはどうでもいいわ。いつまで動かないでいるの!


それくらい自力でどうにかなるでしょ!」


『DRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA‼‼‼』


ルーコがそう言うと怪物は紫のオーラに包まれてノエカの掛けたデバフを解除した。


「ありゃ…破られちゃったか~」


「ありがとうノエカ。これだけ止めててくれたら十分。」


ノエカが止めてくれていた間に触手が再生するための核を見つけることが出来た。


核は触手に覆い隠されていた首の部分にあった。


ノエカが動きを止めたことで核が露見がしたというわけだ。


「スノウ!ブレイズブリザード!」


『DRAAAAAAAAAAAAAAAA‼‼‼‼』


首の核を破壊したことにより触手の再生は止まり怪物は攻撃が不可能になる。


「どうして!?触手がなくなった程度でこんなに…」


「あなたが仕掛けをしていたように私も事前に仕掛けをしていたの」


「仕掛け…ですって?」


「ルルの歌の効果を島全体に付与してあるの。


私達が敵とみなした相手の攻撃と素早さと防御を全てダウンさせる。」


「そんな…反則よ!」


「反則した人が言う?それ。とにかく…終わりだよ。スノウ!」


「きゅううう!!!!!!!」


スノウの炎の刃が怪物を切り裂いて怪物はポリゴンとなって消滅した。


「ここは撤退を…!?体が…」


逃げようとするルーコだったが段々と体が消滅していっていることに気づく。


「運営からの伝言。


あなたとあなたの彼氏さんを永久垢BANにする。


だそうよ。


まぁ当然ね。」


「どうし…」


言い切る前にルーコは消滅した。


もう二度とこのゲームにはログインできなくなるんだろう。


まぁ私には関係ないけど。


「気を取り直してサバイバル再開を…」


そう思ったところでアナウンスが流れ始めた。


《第五回イベントに参加している皆様にお知らせです。


イベントに予期せぬアクシデントが起こったため


第五回イベントは中止とさせていただきます。


大変申し訳ございません。


お詫びとして優勝チームに配られる予定だったアイテムを参加者全員に配布します。


詳細は後日送られるメールをご覧ください。


最後にふりりんからのメッセージがあります。


『みなさん!ごめんなさい!アクシデントを防げなかった私がいけなかったよ!


お詫びに私からもプレゼントがあるからプレゼントボックスから受け取ってね!


ほんとにごめんね!』》


「イベント中止かぁ…まぁ仕方ないよね。」


ルーコが不正にアイテムを持ち込んでたってことはシステムを改ざんして持ち込めるようにしてたってことだろうし。


イベント全体に影響が出ていてもおかしくはない。


「イベント中止か~残念~」


「うちも残念だよ~もっと二人と話したかったし~」


「また今度一緒に冒険でもする?」


「するする!」


「私も~」


「じゃあまた!」


私達はまた遊ぶ約束をしてフレンド登録をしたあとすぐフィールドから転移した。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る