096 一週間の葛藤

 



 森を走りながら、アミは心のどこかで安堵・・していた。


 アミが受けた『恋人ラヴァー』の反理リバース現象――それはおそらく、能力を受けた相手を“あらゆる人間から憎まれる存在”へと変える能力。


 要するに、その影響を受けるのはキューシーたちだけではないのだ。


 加えて、キューシーが向ける殺意には、心なしか“ノイズ”が混ざっていたような気がする。


 面識のない村人たちは、純粋で真っ黒な殺意を向けていて――確かにそこには違いがあった。


 もっとも、だからと言って何かが変わるわけでもない。


 ただの気休めだ。


 思い込みとも言える。


 あてもなく、森の中を走るアミが、心を折って足を止めないように。


 気休めに気休めを重ねて、それを薪のように焚き火にくべて、熱を失わないようにしている。




「はぁ……はぁ……ここ、どこだろ……公園に近づいてるつもりだけど……」




 どちらを向いても森しかない。


 空を見上げ、陽の位置を確認してはいるが、それがどこまで正確かはわからない。


 アミが足を止め、座り込もうとしたそのとき。


 わずかに――空を切り、何かが高速で迫る音がした。


 彼女はふいに前に飛び込む。


 すると、背中をカラリアの放った銃弾が掠めていった。




「ここでも狙撃……さっきの場所に近づいてる? いや、だったら血の匂いがするはず。見られてるんだ、でも能力を持たないカラリアがどうやって……!」




 疑問が解ける前に、次の銃撃がアミを襲う。


 しかし、この攻撃のみならば、見てから避けることは容易たやすかった。


 何発か避けると、少しの間、狙撃が止まる。


 おそらく熱の影響だろう。


 カラリアの使うマキナネウスは本来、そこまで連発できる銃ではない。


 その隙に、周囲を見回す。


 するとアミは、地中から顔を出す“眼球”を発見した。


 両者の目が合うと、眼球は地面にサッと身を隠す。




「今のはお姉ちゃんの……! ああやって私の居場所を把握して、協力しながら狙ってるんだ」




 おそらくメアリーの“目”は、森全体に張り巡らされているだろう。


 隠れた目が、アミの背後で顔を出す。


 その音を察知した彼女は、「そこっ!」と小さめの車輪を高速で投擲し、それを潰す。


 メアリーの一部と思うと心が痛む。


 だがこれまで見てきた限りでは、あれを潰されたからと言って、本人が傷つくことはないはずだ。


 その後も、目は顔を出したが、もぐら叩きのような応酬と、銃弾の回避を何度か繰り返すと、監視を諦め出てこなくなる。


 アミは大きめの木の幹の裏に座り込み、背中を預けた。


 おそらくすでに銃身の冷却は済んでいるはずだが、次の狙撃はまだ来ない。


 メアリーの目が、アミの姿を捉えていないからだろう。




「あの目を潰したって、狙撃は無理でも、私の大まかな位置ぐらいはわかる。お姉ちゃんたち三人で協力しあうなら、絶対に私が公園まで到達できないよう、戦力を配置してるはず。このままじゃ私……どうしたら……っ!」




 片手で膝を抱えると、ちょうど手の甲が目の前にあった。


 数字はすでにⅣに減っている。


 手足の消滅はさらに進行し、透明の部分が広がっていた。




「減るのが早すぎるよぉ……」




 俯きながら、片目で地面を見つめるアミ。


 すると、遠くから声が聞こえてくる。


 それは外ではなく“内”に存在し、徐々に音量があがっていった。




『聞こえるか、アミ』




 久しぶりに――と言ってもそこまで昔ではないのだが――聞いた声だった。




「……神様?」


『そうだ、私は『運命の輪ホイールオブフォーチュン』。力を授けたとき以来だな』


「すごく前の出来事みたいに感じる。まだ十日も経ってないのに」


『そう長くは話せん、手短に要件だけ伝えるぞ……望むのならば、一時的に『運命の輪』の力をさらに引き出すことが可能だ』




 それは、今のアミが何よりも望んでいるものだった。


 だが引っかかることもある。


 なぜそれを、アルカナ自身が無理をしてまで、アミに伝えにきたのか。




『このままではお前は死ぬだろう。『世界ワールド』にたどり着くことなく。押し付けた当事者が言うべきではないが――それではあまりに命が勿体ない』


「私だってそう思ってるよ……でも、そんな都合よく力を引き出すことなんてできるの?」


『できる』




 アルカナはそう断言する。


 だが、次にこう付け加えた。




『ただし、さらに命をすり減らすことになる』




 つまり彼はこう言っているのだ。


 生き延びたければ、命をよこせ――と。


 アミは答えずに、じっと地面を見つめる。


 そして気まずい沈黙が流れる中、ぼそりと言った。




「……やだ」




 まるで子供がわがままを言うように。


 しかしそれが、今の彼女の、心からの想いだった。




「やだ……やだっ、やだっ、やだぁっ! 私っ……まだ、生きてたい……」




 別に、メアリーに命を捧げてもいいと思ったことも、嘘ではないのだ。


 きっとあれは、アミにとっての“最善”だった。


 だから“もっと生きたい”といいうのは、アミ自身、無理だと理解している“最善のさらに上”の願望――否、妄想である。




「最初に出会ったときより、お姉ちゃんのこともっと好きになってて。キューシーやカラリアとも仲良しになってて。わかってるよ、私がこうなれたのは、命を捧げたからだって! それでも……できるだけ、一緒にいたいって、そう思うから……」


『公園までの到達、及び『恋人』殺害に必要な寿命は、一週間だ。望むのなら、私を呼べ』




 アミの言葉が届いていないかのように、『運命の輪』はそう言い残して黙り込む。




「……一週間」




 短いようで――あまりに長い時間。


 一週間あれば、何ができるだろう。


 どんな話をして、どんなものを食べて、どんな美しい景色を見て、何度キスできるだろう。


 考えれば考えるほど、その時間が惜しくなる。


 抱えた膝に顔を埋めて、アミは微動だにしなくなった。


 そのまま、無情にも時間は過ぎていった。




 ◇◇◇




『少し、話でもするか』




 しびれを切らしたように、『運命の輪』はアミに語りかける。




「余裕ないんじゃなかったの」




 アミは膝を抱えたまま返事をした。




『無理をしてでも話すべきだと思った。精神レベルを人と会話できる段階まで落とすのはセキュリティ面でのリスクがあるんだ』


「よくわかんないけど……」


『お前たちは今、『世界』に立ち向かおうとしている』


「そうだね」


『知っての通り、アルカナとはこの世界を生み出した存在だ。つまり、人類を生み出したのもアルカナだ』


「うん……」


『私たちから見た人類は、例えるなら人が紙に書いた絵のようなものだ。文字として記した物語にも似ている。その気になれば、人の心も、記憶も、どのようにも書き換えられる。人というのは、神に比べればあまりに矮小な存在だ、精神は肉体以上に脆い』


「だから何?」


『『世界』はそれをためらわない』




 慰めではないと――そう前置きした理由が、おぼろげながら見えてくる。




『今回は『恋人』の反理現象によるもので、術者を殺せば終わる。だが、『世界』は本来、存在しないはずの、創造主ですらないアルカナ――生命への尊敬など微塵も無い。ゆえに、『恋人』ほど生ぬるくはない。挑む前に経験しておくのは悪くないと私は考える』


「それを私に言ってどうしたいの? 最初からこうなるってわかってたの!?」


『いずれは、人の心を操るアルカナにも直面するとは思っていた。だが――私がその事実を前もって伝えていたとして、君はそのまま死を選んだのか?』


「それは……」


『命を奪ったことは申し訳ないと思っている。しかし、すでに君たちは、人の心を、尊厳を踏みにじるアルカナ使いと戦ってきたはずだ。それが自分に向いていなかっただけのこと』


「そう、だけど」


『私が君を選んだのは、あのとき、それでも生きたいと望んだ強い願いがあったからだ。『世界』に立ち向かえるだけの、強い感情を感じたからだ』


「本当に『世界』がそんなに強い神様なら……私みたいなただの平民が頑張って、意味あるの? お姉ちゃんも含めた四人ぽっちで、どうにかできるの?」


『わからない』




 無責任さを感じさせないほど、きっぱりと『運命の輪』は言い切る。


 アミは少しむっとした様子だ。




『アミを通して世界を見ていたが――ひょっとすると、とうにどうにもならない段階にまで、奴の計画は進んでいるのかもしれない。狡猾こうかつな奴のことだ、メアリー・プルシェリマを殺害するという大きな行動を起こした時点で、もう――』


「そんな……」




 すでに各国の要人は抑えられ、逆らえない状態にある。


 世界の滅亡はともかく、“世界の支配”は成し遂げたと言っても過言ではない。




『だが、諦めればそれまでだ。必ずこの世界を救う方法はある。そのためにも――今の危機を乗り越えなければならないのだ』




 結局は、そこに立ち戻る。


 この戦いを生き延びなければ、何も始まらないと。




『いずれ互いに殺し合う日が来たとしても、折れずに立ち上がるために』


「来ないよ、そんなの」


『現にそうなっている』


「今は違うっ! だから来ないのっ! もしっ、もしそうなったとしても――それで折れずに戦える人は、もう人間の心なんてとっくに捨ててる……生きてる意味なんてない……! 神様同士の戦いなら、人間を捨てた、神様だけでやればいい!」


『確かに、私たちは神としては不出来だ。だが私たちがいなければ、お前たち人間も生まれなかった。無関係とは言えまい』


「だったら、もっと直接助けてくれてもいいと思う」


『可能ならばそうしたかった。しかしそれはできない。生きる次元が異なる』


「無責任だよっ!」


『そうだな。神になるという目的――私たちは、それこそが何よりも正しい終着点だと思っていた。だが、果たしてそれが正しいものだったのか。長い人の営み、繁栄と衰退、そしてこの戦いを見て――私にも、わからなくなってきたよ』




 その声には迷いがある。


 それもまた、精神レベルとやらを引き下げた影響なのだろうか。


 別の何かに変わろうとすれば、必ず歪みが生じる。


 人も。


 神も。


 平民も、貴族も、魔術師も――捻じ曲げれば、必ず反動が生まれる。


 それは往々にして破滅であったり、破壊であったり。


 積み上げてきたものを壊す力だ。




「神様も人間だったんだよね」


『この世界でいうところの“人間”とは少々異なるが、それは事実だ』


「他のアルカナみたいに、あなたが神様になるとき、悲しんだ人はいなかったの?」


『記憶に残っていない。精神の次元を上げたときに、人間だった頃の記憶は捨てた』


「何でそんなことしたの」


『神として過ごす長い月日に、人の精神では耐えられないからだ』


「自分が消えたんじゃ、夢なんて意味ないよ」


『ああ、だが……かすかに、断片的な記憶が記憶領域の片隅に残ってはいるようだ』


「どんな思い出?」




 アミが尋ねると、彼は少し沈んだ声で答えた。




『ちょうど君と同じ年齢ぐらいの少女が泣いている。『お兄ちゃん、戻ってきて』と私にすがりついている』




 懐かしい――いや、そんな言葉では表せないほど、古い記憶。


 しかし大事に守られていた、罪の記憶。




『少女は悲しんでいる。私が神へと変わってゆく様を見て』


「妹さん、いたんだ」


『そうらしい』


「大切な人だったんじゃないかな」


『だろうな』


「そんなに大事な記憶を捨てて作った世界だから、こんなことになったんだよ」


『そうかもしれない』


「認めないでほしいな、寂しくなるから」


『申し訳ない』




 あまりに簡潔な言葉の応酬に、アミは露骨にむくれた。


 少し間をおいて、彼女は話題を変え、問いかける。




「ねえ、寿命以外に使えるものとかないの?」


『無い』


「言い切られた……」


『だが、君も失うものばかりではない。メリットもある』


「どんなの?」


『生きて戻れば、メアリー・プルシェリマを含む三名は君に許しを請うだろう。誰も悪くはないが、君を甘やかそうとするだろう。そして君も、それを望んでいる』


「最低っ!」




 アミは鋭い目つきで、虚空に向かって怒鳴りつけた。




『……そうか、すまない。精神レベルを下げたといっても、まだ差は大きい。価値観の違いが生じてしまった』


「神様を言い訳にしないでよ……っ」


『すまない』




 姿は見えないが、『運命の輪』はわかりやすくしゅんと落ち込む。


 それきり彼は黙り込んだ。


 アミも膝を抱えたまま、頬を膨らまして地面を見つめる。


 しばらく沈黙が流れたあと――『運命の輪』はぽつりと呟いた。




『また別の断片を見つけた。妹に『デリカシーが無い』と叱られている場面だ』


「だと思った。さっきのは、人とか神様とか関係ないよ」


『どうやらそうらしい。人を捨てたつもりでも、残るものはあるのだな』


「だから……余計に妹さんは悲しかったんじゃないかな」


『なぜだ?』


「希望が残ってるから。もしかしたら、元に戻るんじゃないかって」


『……そうだな。いっそ完全に別物になったほうが、救いはあったのかもしれない』




 それきりまた、二人は静かになった。




 ◇◇◇




 ひょっとすると、カラリアたちは“膠着状態”とでも思っていたのかもしれない。


 緊張感の中、いつ再び開戦するのか、監視の目を張り巡らせ――虫を展開し――ライフルを構えたまま、待ち構えているのかもしれない。


 だが実際のところ、アミは何もしていなかった。


 会話を終えたあと、何もせずに、ただ時間が過ぎるのを待った。


 カウントダウンは進む。


 手の甲に浮かぶ数字はⅠ――つまり残り十分。




「ねえ神様」




 アミはわずかに顔をあげ、そう呼びかける。


 彼はすぐに応えた。




『決まったか』


「うん……最初から、それしかなかったんだよ」




 躊躇いが無いと言えば嘘になる。


 だが、決めたものは決めたのだ。


 というより――最初から選択肢などなかった。


 ここで諦めれば死んで終わり。


 二十四日だの十七日だの、そんな日数のカウントも意味が無い。即ゼロだ。


 ならば、たとえ命より惜しい一週間を失うとしても、より長く生きるために捧げるしか無いのである。




「力をちょうだい。誰も傷つけずに、エラスティスだけを殺すための力を」




 アミがそう望むと、両足から熱が失われていく。


 肌の色が灰色に代わり、歯車がむき出しになり、機械のような――いや、まさに機械そのものへと変わっていった。




『それは『運命の輪』の脚部だ。本来、神の肉体は人の生命、精神を持ったまま制御できるものではない。そう長くはもたないだろう。急げ』


「……わかった」




 “命が一週間消えた”という実感はない。


 ただ、自分の体が人間からかけ離れた“何か”に変わっていく――そんなおぞましさを感じていた。




 ◇◇◇




 カラリアは背の高い木に上り、ライフルを構えていた。


 耳には通信端末を当て、常にメアリーとキューシーに繋いである。




「こちらからは“敵”を目視できず。そちらはどうだ?」


『……』


「メアリー?」


『あ、はい。敵……は、まだ例のエリアに残っています。近隣エリアの監視網に引っかかっていないので、移動した様子はありません』


『こっちも虫に探させてるけどいないみたいね。腕を吹き飛ばされたし、尻尾を巻いて逃げたんじゃないかしら?』


「そう簡単に行くかな。奴は狡猾で、悪辣で、邪悪な敵だ。誰にとっても敵で、私たちは必ず殺さなければならないが、向こうも確実にこちらを殺しにくる」


『わかってるわよ、それぐらい。だからわたくしだって全力でやってるんじゃない』


『はい、あれは全ての人間が憎むべき敵ですから。逃がすわけにはいきません。ですが……』


「どうした、メアリー」


『そんなもの、実在するんですか?』


『何を言ってるのよ、現にそこにいるじゃない。立ち向かうしかないのよ、わたくしたちは。他の人のためにも』


「そうだメアリー、在るんだ、そこに。そういうものが。ならば目で見たものを信じるしかあるまい」


『……はい、そうなんですが。何か、おかしいような』




 あまりに漠然とした、カラリアたちの胸に宿る憎しみのイメージ。


 普通、『恋人』の反理現象が発動するのは、顔を見たときだ。


 しかし知人の場合、脳にすでに顔が記憶されているため、自動的に憎悪が発生する。


 世界のどこにいようとも、現象を受けた人間への憎しみや怒りが湧き上がってくるのだ。


 それは人が抗えるものではない。


 そもそも、『恋人』の能力だって、カラリアが辛うじて抗える程度。


 それが命を賭して発動する反理現象ともなれば、魔術耐性を持っていても抵抗は難しい。




「ところでエラスティスの様子はどうだ?」


『ええと……相変わらず反応は無いようです。体に異常はありませんが、精神面で大きなショックを受けたのではないかという話です』


『あいつにやられたのね、間違いないわ。絶対にそれ以外ありえない。どうして『恋人』を狙うのか知らないけど――』


「まだ彼女は生きている。おそらく奴はそこを狙いにくるはずだ」




 カラリアがそう推理した直後、メアリーが声をあげた。




『動きました!』


「どの方向だ!?」


『これは……とてつもないスピードで、真っ直ぐこちらに向かってきています!』


『真っ向勝負ってわけですわね。でも、わたくしとカラリアが組めばあいつなんて――』


『木々をなぎ倒しながら……そんな、早すぎるっ! カラリアさん、狙撃の準備を!』


「もう狙っている。確かにこれは――」




 ライフルを構えるカラリアの目に写ったのは、逃げも隠れもせずに、脚部の車輪を使ってただただ真っ直ぐに進むアミの姿。


 彼女が通った後には何も残っていない。


 草木も、大地も、その体に触れる前に、纏う魔力に削り取られてしまうのだ。


 公園に近づくと、カラリアが設置した罠が彼女を待ち受ける。


 しかし設置されたワイヤートラップも、埋め込まれた爆弾も、その力の前には一切意味をなさない。


 カラリアは引き金を引いた。


 ドウゥンッ、と魔力の塊が放たれ、アミに真正面から衝突する。


 弾かれるでもなく、消し飛ぶ銃弾。


 彼女は続けて何発も放ったが、その全てが、まるでアミが纏う魔力に飲み込まれるように消え、なおかつ彼女の速度が落ちることもなかった。




「何だこのパワーは、さっきとは別物だ……!」




 キューシーが放った虫や動物も同様である。


 虫は近づくことすら許されない。


 その速度により生み出された風圧によって吹き飛ばされるのだ。


 樹木で作った動物の群れたちも、当たり前のように蹂躙される。




『わたくしの下僕たちでは近づくことすらできないというの!?』




 そして――アミはまたたく間に、公園に残るメアリーの前まで到達した。


 急ブレーキをかけ、立ち止まるアミ。


 メアリーは無言で鎌を構えた。




「お姉ちゃん。私、アミだよ」


「言葉が通じる相手じゃない。殺す……殺す……殺さなければ、こいつだけは、絶対に……!」


「お姉ちゃん……」




 悲しみに揺れる瞳。


 しかし、そこにある殺意は、やはり村人にはなかったノイズが混ざっている気がして。


 そこに希望を見出す。


 そして彼女は、車輪を両手に握り、戦闘態勢に入った。



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