第45話

ハーヴェイが弾かれた剣を引き戻そうとする。


「ハーヴェイ、お前が臆病なことぐらいオレもシイナも知っている! だからお前は努力した! 誰にも弱みを見せないように強くなった。誰よりも早く危険を察知してそれに対応した! だからオレはお前を尊敬したんだ!」

「僕はお前が羨ましかった! テイル、お前はいつも何度も失敗しても決して諦めなかった。常に自分にできることを模索し続けた。僕たちが危険な時、必ず前に立って救ってくれた! だから僕はお前にすがったんだ!!」


 オレの袈裟斬りをハーヴェイは左手のガントレットで受ける、が、相殺しきれていない。オレの剣はハーヴェイの肩を浅く斬った。

 ハーヴェイの突きを躱す。〈分解〉のことを考えるとハーヴェイの剣はこちらの剣で受けるか、〈見切〉って躱すしかない。


 ハーヴェイの剣が持ち上がる。得意の上段の構えにもっていくつもりだ。

 ここがチャンス。剣の動きを〈見切〉って、ハーヴェイの剣を上にカチ上げる。

「くっ!?」

 隙だらけだ。左から横薙ぎの一撃を見舞う。

 ハーヴェイは後ろに下がるが間に合わない。

 ハーヴェイの胸に刃が食い込み、浅くない傷から赤い血がこぼれる。

「ぐ、ぅ」

 ハーヴェイの動きが止まる。畳みかけるなら今だ。

 ハーヴェイの剣を吹き飛ばす。それで戦いは終わる。


「テイル、お前は……本当に、常に僕たちのことを守ってくれた。だから、次は僕の番だ!」

 ハーヴェイは剣を持つ右手を後ろに逃がし、左のガントレットでオレの右ひじに触れる。

 〈分解〉が発動する。関節が外れて腱が千切れる。

 あまりの激痛に顔が歪む。剣から右手がずり落ちる。


「『僕の番』だと!? ならなんでオレ達は殺し合いをしている! オレの瞳を抉り取って、何がオレ達を守ることに繋がるんだ!」

 左手だけで剣を支え袈裟斬りを放つ。力が入らない。

 ハーヴェイの剣に簡単に押し負ける。

 そのままハーヴェイは剣を上段にもっていき、そのまま振り下ろしてくる。

 右肩にかなり深い裂傷。

「繋がるさ。この瞳は、『魔王の瞳』は、使。そして使な」


 ……! 使いすぎると死ぬ? しまった。動揺で剣がぶれる。

 ハーヴェイの剣で左手に持った剣が大きく弾かれる。

「テイル。お前の瞳はもう保たない。僕より早く覚醒して、今まで何度も力を使ってきた。なにより、魔王の衝撃波から僕たちを守ったのが致命的だった」

 ハーヴェイの左手がオレの右目に迫る。

「お前のことだ。上限があると知っても、仲間の誰かが危険にさらされれば、迷わずその瞳を使う。だから、瞳を奪う。お前が、望んでもこの力を使えないようにな」


「それが、どうした!!」

 剣が弾かれた事を逆に利用してその場で勢いをつけて旋回する。目前に迫ったハーヴェイの手を額で弾く。

 瞳の力を全開にする。左手に力を込める。狙いは始めからただ一つ。

 オレの瞳がハーヴェイの剣を捉える。このタイミングしかない。この一瞬だけでいい。俺の右目よ、全てを〈見切〉れ!!!

「そこ、だぁぁぁぁぁ!!!」


 そして剣と剣がぶつかり合い、火花を散らす。

 双方の剣が折れて、宙を舞った。

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