第43話
「ここでいいだろう」
決戦の地につく。
オレとハーヴェイは距離をとって相対する。
剣を抜いて状態を確認する。ユイミからもらったものには劣るが、良い剣だ。
「さすがに、仲間にもらった剣でテイル、お前をを斬るわけにはいかなかったからな」
「まだ、ユイミを、オレ達を仲間と呼んでくれるのか」
「当然だ。お前たちが何かをしたわけでも、僕がお前たちに失望したわけでもないからな。ただ、共に居られなくなった。お前を斬らなくてはいけなくなった。それだけだ。例えこの戦いで、お前たちが僕を仲間と認めなくなっても、僕はずっとお前たちのことを仲間と思うだろう」
「理由を話してくれるか」
「ある程度なら。ユイミと違って、テイルとシイナには話していない事があるからな。『勇者の瞳』の伝説を知っているか?」
「いや」
「……ん、聞いたことある。伝説の勇者様は、赤い瞳と青い瞳をもっていた、って」
「その赤い瞳が、テイルの右目に宿っている。テイル、先のゴブリンやゴーレムとの戦いで、記憶を失っている時があっただろう? その時、お前の右目は赤く染まっていたんだ」
は? オレが勇者の瞳をもってる? んなアホな。決闘の前なのに何をいっているんだ。
「事実ですわ。ゴーレム戦の時にわたくしもこの目で確認しております。……そして、かの魔王復活。結果はあまりに予想外で最悪なものでしたが、あれは元々『テイルさんの瞳が本当に勇者由来のものならば、勇者像と接触させれば何か変化があるのではないか』という推測によるものですわ」
「ユイミ、その説明には1つ……いや、2つ誤りがある。魔王は、テイルが勇者像に近づいたから復活したんじゃない。魔王の近くに、赤と青の瞳が近づいて、瞳が5つ揃ったから復活したんだ」
「……どういう意味だ?」
「まず、赤と青の瞳は勇者由来のものではない。魔王由来のものだ。魔王が、自分の瞳を勇者にねじ込んで、それが子へ、孫へと伝わっていったものだ」
「……ん、だから、魔王は5つまぶたがあったのに、3つしか目を開かなかったんだね?」
「そういうことだ。そして、残りの青い瞳。……それは、僕が持っている。僕の左目に宿っている」
この場に着いてから初めて、ハーヴェイがオレから目を逸らす。
「知らなかった……。気づかなった……。知っていれば、気づいていれば、僕がこの瞳を発動できていれば、こんなことにはならなかったのに……!!」
ハーヴェイが、歯を噛み締めて、血を吐くように告げる。
「これは全部僕のせいだ。テイル、お前は何も悪くない。僕は、僕の都合のために、僕の罪を清算するためだけに、お前を手にかける」
ハーヴェイの苦しみが、胸の痛みが伝わってくる。
「命をとる気はない。だが……お前の右目、勇者の……いや、『魔王の赤い瞳』を、潰させてもらう。止めたければ、僕を殺すか、僕の左目を潰せ」
そういうと共に、ハーヴェイの左目の色が変わる。中で炎がゆらぐような、青い瞳に。『魔王の瞳』に。
呼吸が合わさるように、オレとハーヴェイは構える。
そして、ハーヴェイが踏み込み、親友との戦いが始まった――
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