第37話
「さて、どこから案内いたしましょうか?」
「はい! オレ菓子屋の場所が知りたい!」
「うーむ、武器と防具どころか大体はイグドラシル協会で面倒を見てもらえるからな……。ここはフルーツ。村ではあまり食べれなかったフルーツを売っている所が知りたい」
「んー、私はマルクト神殿の場所が知りたい。あと、……余裕があったらアクセサリーショップ……」
「ふむふむ、商店は複数ありますから近いところを案内致しましょうか。他のお店は首都に慣れてきた際にご自身で発掘してもらうとして」
「賛成!」「ん。ユイミ、お願いね」「どんなものが売っているか楽しみだ」
「さて、まずこちらが菓子屋になります。」
「宿の向かいじゃないか! なんで気づかなかったんだ……」
「近すぎるな……テイルの無駄遣いに注意しないといかん」
「ん、村でも商隊が来るたびにお小遣い全部溶かしてたハズ。どうしようね」
ハーヴェイとシイナの言葉なんて聞こえない聞こえない。
まずは絶対の必需品チョコクッキー、マドレーヌは当然あるな。
おお、バウムクーヘンもある! これ高くて食べられなかったんだよなー。
「店長さん! ここ祝祭のときはガレット・デ・ロア並びますか? というか祝祭はいつ? あとこの黄色い粉のまぶしてあるお菓子なんですか!」
「はいはい。そのお菓子は『きなこ玉』という東洋のお菓子を真似たものです。新作ですよ。祝祭は来月ですね。予約しておきますか?」
「はい予約お願いします。えっとプレートみせればいいですかね? あとこれとこれとこれ下さい!」
「ちょっと待てテイル! 予約はともかく買うのは後だ! 近くなんだからいつでも買えるだろ! まだ最初の店だ!」
「ん、テイルちょっと暴走しすぎ。食べ歩きできるくらいにしとこう。店長さん、マドレーヌ4個、食べ歩き用に油紙に包んでください」
しまったテンションブチ上がりすぎた。
ユイミが呆れた目でオレのことを見ている。
「なるほど、村では商隊が来ると毎回こうなっていたのですね」
「その通りだ。だからテイルのサイフの中身は本人より把握していたし、おばさんに何度『テイルのサイフを預かってくれ』といわれたかわからない」
「ん、ハーくんは昔からしっかり者だった。私は甘やかすからダメっていわれた」
「……まぁいいでしょう。テイルさん、予約は終わりましたか? 次に行きますよ」
「もうちょっと待ってくれ。今4皿か8皿で悩んでいる。みんなやっぱ2皿は食べたいよな?」
「そんなに要るかバカ。4切れでいい!」「ちょ、まてハーヴェイ! ペンを奪うな!」
というわけでオレのサイフの大半は没収された。
今は10Gしか入ってない。支給は一週間に一度10Gだそうだ。5000G……
「さて、次は正門の方に行きまして、こちらがフルーツショップになりますわ」
「ふむ、ブドウにリンゴ、桃まであるのか。どれも村のより鮮度がいいな。ほう、メロンまで……今なら買えるか……」
「ハーくん、目が本気」「ハーヴェイ、わかってるだろ。買うのは後だぞ」
「似たもの同士ではありませんか……」
「さて、正門から真っすぐ進む道には服屋やアクセサリー屋が多く並んでいますわ。その後神殿を通って、露店街、王城前広場、王城となります。シイナさんのご希望のものはこの道で大体揃うかと」
「私は工場産より手作りのが好きだから、まず神殿に行ってお祈りだけさせて。その後露店をみたいな」
「シイナさんは確かマルクト様をご信仰でしたわね。ではついてきてください」
そうしてマルクト神殿についた。
「で、でけー……」
「僕らの村のゆうに3倍はあるな。それに村のは木造だったのにここは石造りだ。威容が全然違うな」
「ん、ちょっと緊張するね。じゃあ、シスターさんに引っ越してきたことを伝えて、お祈りだけ済ませてきちゃうね」
「ああ、わかった。オレ達が中にはいってもキョロキョロしちゃって逆にシスターさんの仕事の邪魔になっちゃうからな。待ってるぞ。」
そうして神殿の門の横に逸れて、シイナの用事が終わるのを待つ。ほどなくしてシイナが出てきた。
「ん。お祈りしてきたよ。シスターさん多くて緊張した。」
「おつかれシイナ。じゃ、次は露店街だな」
「はい。露店街はみなさんそれぞれ見たいものがあると思うので、ゆっくり歩きましょうか」
「うっわー。すっげー人……」
「歩けないわけじゃないが、はぐれたら合流は難しそうだな」
「そうですわね。はぐれた場合は大人しく先に進んで、王城前広場で待つようにしましょうか。ちなみに露店街はだいたいいつもこんな感じですわ」
「シイナ、はぐれないように手繋いどこう」「ん、いいよ」
「……ハー様、わたくしどもも手を繋ぎませんこと?」「おお、向こうによさそうな露店があるぞ! みんな行こう!」
ハーヴェイ、あいつ今ユイミの事意図的に無視したな……。
「へー、飲食系の露店も多いんだな。綿菓子、ケバブ、焼き鳥……結構なんでもあるな。たまには宿じゃなくこっちで食べてもよさそうだ」
「ん、手作りの木工品とか花のお店もあるね。楽しい」
「当然といえばその通りだが、武器防具や薬を売っている露店はないな。それだけ商会が強いってことか」
「あ、テイルあっち。あのお店。……この髪留めかわいい」
シイナが手にしたのは、布でできた造花をあしらった髪留めだ。
ピンの部分が上手に加工されていて葉っぱのように見える。
おしゃれだし確かにシイナによく似合いそうだ。
「お、いいじゃないか。よし、オレが買ってやるよ」
「んー。テイル、うれしいけどこれ30Gだよ?」
「うっ……オレの没収分から差し引いておいてくれ……」
「ふふ、テイルかっこ悪い。でもありがと」
「……ハー様、よかったら何かわたくしにプレゼントをしてくださいますか?」
「ふむ、この持ち手が髑髏になっている補助杖なんかどうだ? ユイミは身体が小さい上に荷物が重いからこういうのはあった方がいいだろう? デザインもユイミによく合っているぞ」
「……ハー様、わたくし怒っていいですかね?」
あっちはあっちで相変わらずのようだ。
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