第33話

 朝食の後、しばらくするとユイミが宿のコンシェルジュと共にオレ達の部屋にきた。

 コンシェルジュは大小形の違うカバンを4つほど持っている。コンシェルジュさん力持ちっすね。

「みなさんおはようございます。昨晩はよく眠れましたでしょうか?」

 ユイミがなんとなく悪人っぽいセリフを吐く。

「お、おう」「ん、ぐっすり。ユイミありがとう」「ああ、いい部屋だな」

 いつも通り三者三様にユイミに返事をする。

「それは結構ですわ。では、昨日のもろもろの清算を致しましょう」

 ユイミがそういうと、コンシェルジュが前にでて、カバンを開く。


「まずは報酬ですわね。よくよく考えたら報酬の話をしておりませんでした。1人5000Gを用意しましたが、足りなければおっしゃって下さい」

 おおおおお5000G!? いや足りないなんてことはないですユイミさんありがとうございます。


「そして、冒険者登録も終わらせておきました。こちらが皆さんのプレートになります」

「ん? 冒険者登録? 僕たちはイグドラシル商会に雇われたモグリの冒険者という扱いになるんじゃないのか?」

 とハーヴェイ。オレもシイナも頭に『?』を浮かべている。

「いえいえ。大量の冒険者を雇い入れるために冒険者協会に宿の申請を出してあるのですよ。尤も、こちらからのスカウトのみですが。なので皆さんは正式な身分を保証された冒険者となります。」

 おお。それはなんともうれしい知らせだ。このままずっとプレート無しだと思ってたから素直にうれしい。

「堂々と宿を構えているわけではありませんので、もし何かの場合に宿名を聞かれたら『イースの宿』とお答えください」

 そういってユイミはオレ達にプレートを手渡してくれる。

「おおお!? これブロンズのプレートじゃないか! ユイミ、いいのか!?」

「クジャクの討伐、遺跡での探索能力、ゴーレムの討伐を考慮した結果、みなさんブロンズが適正と判断致しました。テイルさんはシルバーかゴールドであるべきとも思いましたが、あの馬鹿力がいつでもだせるものではないということで今回は見送った形です」

 いや十分です。というよりこんなルーキーなのにシルバーとかゴールドのプレートをかける方が遠慮してしまう。

「テイル、シルバーかゴールド相当だって。すごいね。うれしい」

「いやいや、そんな実力ないから。今はブロンズでも十分すぎるって。でも、そういわれるとやっぱうれしいな。認められてる感じがする」


「そして最後に、こちらはイグドラシル商会からみなさんの将来に期待しての贈答品となります。うけとって頂けるとうれしいですわ」

 そうユイミがいうと、コンシェルジュがオレ達に鉄製の装備を配ってくれる。

 ……って、この持った感じ、コレただの鉄じゃないぞ! 軽鉄だ! 凄い軽い!!

「剣や手甲や胸当てまで……こんないい装備もらっちゃっていいのか?」

 ちなみにシイナは女性用の、軽鉄で編まれたくさりかたびらやスカーフだ。胸当ての5倍くらいする高級品。

「もちろんです。本来ならばミスリル製の装備を渡しているのですが、只今在庫を切らしておりまして、皆さんにはしばらくそちらで我慢していただく形になって申し訳ありません」

「いやいやいや」

 ミスリルなんて最上級装備、怖くて身に着けられない。そんなもので首都を歩いたら瞬く間に注目の的だ。そういうのはゴールドくらいになってから。

 ん? ということは先輩たちはみんなミスリルの装備一式を貰っているのか。どんな反応をしたのか凄い気になる。もし会えたら聞いてみよう。

「今回は皆さんの流派に沿った軽いものを用意いたしましたが、鎧や兜、また素材が重鉄の方がよければおっしゃってください」

「ああ、それなら僕は剣だけ重鉄のものにしてくれないか? 長さや太さは同じままで構わない」

 ハーヴェイがそういい、承諾するユイミ。

「ハーヴェイ、お前重い剣の方が得意だったか?」

「ん。道場でも私達同じ重さの木剣使ってた気がする」

「いや、これは元々思ってたアイデアだ。防御はテイルが、治療はシイナが何とかしてくれるだろ? だから僕は攻撃力を高めておこうと思ってな」

 おお、パーティらしい事をいってくれる。うれしくなってシイナと二人でハーヴェイのことを小突く。


「さて、わたくしからは以上になりますわ。みなさん、この後のご用事はおありでしょうか?」

「いや、特には決めてないな。そうだな、もらった装備の具合を確かめるために模擬戦でもやるくらいか。テイル、シイナ、何か他にアイデアはあるか」

 特にこれといってないのでシイナと2人で首を横に振る。

「なるほど、ではその模擬戦、わたくしも参加させていただけませんか? 連携を高めておきたいので」

「もちろん大歓迎だ」「お、いいなソレ!」「ん。ユイミ、一緒にがんばろう」

「ありがとうございます。では荷物を置いて準備をしてきますわ。折角ですので、ハー様の剣も取り換えてしまいましょう。ハー様、ついてきてくれませんか?」

 ああ、いいぞ と二つ返事で出かける2人。残ったオレとシイナは庭にでて、先に準備運動と軽めの模擬戦をすることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る