第31話
◇
なんとかシイナの救命活動で命を救われた。
あの後シイナのバスタオル姿が脳裏から離れず、いつの間にか気絶してたっぽい。
今はお互い同じベッドに座って、オレの脈を図ってもらってる。
「……ん、だいぶ速い。テイル、緊張してる?」
はい。滅茶苦茶緊張してます。
「ん。私も緊張してる。同じだね」
上目遣いに微笑んでくる。ゴーレムより攻撃力が高い!!
「ねぇ、テイル、髪、ポニーテールにしてみたんだ。どう?」
むっっっっっちゃ可愛いです!!! (握り拳)といいたいが恥ずかしくて口が動かないので、
「うん、凄く似合ってるな」としか言えない。
「いつもとどっちがいい?」すごく難易度の高い質問!
3秒くらい死ぬほど悩んで、「……どっちもすごくいいけど、やっぱりいつものかなぁ……?」
割と素で答えてしまったが、「ん、じゃあ、たまにするね」シイナは笑顔だ。セーフ!
「ねぇ、テイル」
「ん、なんだ?」
「手、繋がない?」
「……お、おう、いいぞ」
そうして、なんとかがんばって手を重ねる。これ手繋いでるっていうのか? いわないんじゃないか、どうなんだろう?
シイナに聞いてみようとすると、肩に軽い衝撃。
見ると、シイナが寝ていた。
「……今日はがんばったもんな。シイナ、おつかれ。」
聞こえてるかわからないが、労いの言葉をかける。
しかし、
この状況、いったいどうすればいいのだろう。オレ、動けなくね? ……。
◇
一方その頃――
僕とユイミは二人で夜道を歩いていた。
ここは高台の公園のようだ。陽が暮れているからかあたりには誰もいない。
「……このあたりでよろしいですかね」
「そうだな。で、何が聞きたいんだ? テイルの事か?」
僕がそういうと、ユイミは口元だけ微笑み「その通りですわ」と答える。
「テイルさんが防御の天才だということはお聞きしました。しかし、あのゴーレムを切り裂くほどの剣の冴え、あれは凄まじいものです。テイルさんの右目と関係があるのでしょうか?」
やはり気づかれていた。
しかし、どのみちこれから一緒に冒険する以上ユイミの洞察力から逃れることは出来ないだろう。
それなら早くばれて、秘密を共有した方がいい。
「悪いが僕にもほとんどわからない。今わかっているのは、普段攻撃をほとんど当てられないテイルが、右目が赤くなるとすさまじい強さを発揮することと、テイルがその間のことをほとんど覚えてないということだ」
「ハー様が知っている限りでこの現象は?」
「2度目だ。1度目はほぼ一瞬で5匹のゴブリンを仕留めた。道場にいた頃には見たことはない。1度目と2度目の違いは今のところ1つ。テイルは1度目の時は本当に何も覚えていなかったが、2度目の今回は多少覚えているようだ。恐らく、次はもっと多くの事を覚えている」
「なるほど。他にわたくしに知っておいて欲しいことはございますか?」
「テイルもシイナも、目が赤くなっている事は知らない。そして、僕はあの目に、あの剣に何か不吉なものを感じている。あれは多分人間が扱っていい力じゃない」
「なるほど。わかりました。テイルさんとシイナさんにこの事を隠し、あの目の正体を探っておきますわ。しかし、時間はあまりなさそうですわね」
「助かる」
「いえいえ、他ならぬハー様の頼みとあらば。では、今日はこのあたりで。また明日会いましょう」
「送っていくぞ。夜道に女の子1人は危ない」
「いえいえ。ご安心下さい。治安のよい通りですので」
「そうか、ならまた明日」
そういってユイミを見送って、僕も宿に戻るのだった。
―― 第2章 完 ――
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