第29話
◇
ふう、オレは一息ついた。
ゴーレムの一撃はチカラを込めた剣を振ってなんとかしのいだ。
それにしても、1人で挑んだのに外の仲間に危害が及ぶなんて理不尽だ。
これ以上仲間が理不尽な目に合わないようにしないと。
ゴーレムが残った拳を振り上げる。ここだな。
左手で抜いたナイフにチカラを込めてゴーレムの肩に向けて投擲する。
やっぱりまだチカラを使い慣れてないせいか、前に弓ゴブリンに剣を投げた時同様、手を放した瞬間ナイフからチカラが漏れ始める。
だが、十分だ。ナイフはゴーレムの肩に吸い込まれるように突き刺さる。
そこからヒビが入り、強度が減った腕が重さに負けて脱落する。
その間にオレはゴーレムに向かって走る。ゴーレムが片足をあげたところを叩き切る。
バランスを崩して倒れたゴーレムの身体を駆け上がり、ゴーレムの胸に1刀、2刀、3刀、剣を浴びせコアを露出させる。
そして、そのコアに突きを入れて
遺跡が振動するほどの、大爆発が起きた。
「……い、てて……」
爆発が収まった後、オレは床に転がっていた。
すぐに3人がやってきて、シイナがオレの傷の確認をする。
その間に「なぁーにを考えてますの!? ゴーレムのコアを破壊するとか、爆発するから危険と教わらなかったんですの!?」
ユイミに滅茶苦茶怒られる。
そんなユイミをハーヴェイがなだめてくれて、
「しかし、よくゴーレムを斬れたな。どうやったんだ?」
と聞かれたが、正直よくわからない。
「いや、それがオレ自身にもさっぱり。ただ、前よりは少しは覚えてるかな? 爆発させた後やっちまった! って思ったから」
「ん、大きな怪我はないみたい。凄いねテイル。あの爆発で無傷って」
それは良かった。全身が痺れてて自分の事よくわからないからな。
「ところでユイミ、宝は無事なのか?」
そう問いかけると、ユイミはそうでした! と石櫃に向かって走り出す。
「無事なようですわ! みなさま、蓋をあけるのを手伝ってくださいまし!!」
そういわれて、全員で蓋をおしてずらしていく。そして現れたのは……
「石板?」
「そのようですわね。んぎぎ……」
「ユイミ、無理はするな。僕が持とう。読めるか?」
「……いえ、習っている文字ではあるものの内容まではさっぱり。これは持ち帰って解読班に任せるしかありませんわね」
金銀財宝、ってワケじゃなかったか。残念。
でも、大金持ち?のユイミにとってはこういう物のほうが価値があるのかもしれない。
「みなさん、無事に遺跡を踏破してくださってありがとうございます。特にテイルさん、貴方の活躍はなかなかでしたわ」
「お、おう、ありがと……。でも、オレは自分にできる事をやっただけだし……」
2人を差し置いてオレが褒められるなんて、なんだか恥ずかしい。
見るとシイナとハーヴェイが笑いをかみ殺していた。
「さて、帰るか。まだ何があるかわからないからな。首都に戻るまで気を抜くなよ」
ハーヴェイがみんなに活をいれてくれる。
幸い帰りにはこれといったことはなく、日が暮れる前に森を抜け、馬車に合流して首都に帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます