第28話

 オレが部屋の中に入ると、ゴーレムの目が赤く光る。起動したんだろう。


「目安でいいから時間を教えてくれな」と軽く言って剣を抜く。

 ゴーレムが構え、右の拳を繰り出してくる。

 うん、予想通りだ。図体こそでかいものの、振りは師匠より遅い。何よりフェイントがなく動きが単調だ。

「よっと」拳がオレのギリギリ左を素通りして床を砕く。破壊力はそのくらいか。受けれるな。

 ゴーレムが右手を戻しながら左の拳を放ってくる。

 左肩の傷のこともある。余裕のあるうちに1度受けておこう。

 オレはガントレットに刀身の根本を当てて、自分が一番自信のある防御の姿勢を取る。〈十字受け〉だ。

 ゴーレムの拳が当たる。足を滑らせて衝撃を和らげる。

 1mほど下がったが、傷が開くこともなく受けることができた。

 よし、問題ないな。確実にしのいでいくか。

「テイルはな、防御の天才なんだ。うちの師匠が本気を出しても3分くらいなら有効打が入らない」

 言葉を発さなくなったユイミにハーヴェイが説明してくれてる。

 その間に右手、右脚、左手と飛んでくるが問題なく避けた。

「残り2分」シイナがカウントしてくれる。

 さて、まだまだ序盤だ。左脚、右手、左手、右脚、左脚、よし、慣れてきた。けど集中は怠らない。

「残り1ぷ――!!?」ここで異変が生じた。地面が揺れ始めたのだ。


 こんな時に地震だって!? 

 しかも結構でかいぞ! く、立っていられない。膝をついて、両手も床につける羽目になる。

「テイル! 2人は僕がかばう! なんとかして外に出ろ!」

 ハーヴェイが無茶をいってくる。だけど2人が守られているのは助かる。

 見ると、ゴーレムもさすがに動けないらしく、片膝をついている。

 まて、片膝しかついてない、ってことは

 マズい! 右腕が向かってくる。オレはとっさに剣の刀身を額当てにつけて防御する! ……が、思い切り弾き飛ばされて壁に激突する。

 いってぇ! 思いっきり背中を強打してしまった。傷のある左肩から突っ込まなかったのが救いか。

「テイル! 大丈夫か!?」

「なんとか! 今壁際にいる!」

 ……ちょっとまて。入口からはいって、正面のゴーレムに正拳突きで壁に飛ばされた。それはつまり

「まずい! 多分オレみんなの壁越しにいる!! 壁から離れろ!!」

 ゴーレムの拳がもう1度飛んでくる。くそ、地面がまだ揺れている。避けられない! みんなを巻き込んでたまるか!!


        ◇


 僕は心の中で悪態をつく。

 壁から離れろ、って言われても地震が起きてて離れられるわけないだろ!?

 どうしようもないから、せめてシイナとユイミを守るために2人を僕の身体で覆って亀のようになる。いまはこれが限界だ。

 壁の壊れる衝撃に備えるが、その衝撃はいつまでも来ない。

 地震が収まって入口から顔を覗かせると


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る