第27話
バジリスクの始末を一通り終えて先に進むと、階段が見えた。
この遺跡に入って初めてだな階段。
「よし、大丈夫そうだ。のぼるぞ」例によってハーヴェイが安全を確認して進む。
「そういえば、ユイミのクロスボウ、連射できるんだな。クジャクの時もやってただろ。それもイグドラシル商会の商品か?」
普通のクロスボウは一発うつと弓を引いて矢をセットしないといけないハズ。
「いえ、残念ながらこれは商品ではございませんのよ。わたくしどもが開発したものではありますが」
「んー? なんで商品にしなかったの? 高すぎた?」
「いえ、確かにコストがかさむのは事実ですが、こちら、専用の矢筒と専用の矢が必要なのですよ。
さすがにわたくしどもしか生産してない矢を1発1発放っていただくのは冒険者の方々に負担が大きいとなりまして、現在ではわたくし用に少量生産するのみとなっております」
確かにそれは大きな問題だ。普通の矢が使えない上に特定の店でしか矢が買えないなんて使う側にはたまったもんじゃないだろう。
時々腹黒い顔をするけど、ユイミは基本優しいな。
売る人、買う人の事をちゃんと考えてくれてるし、仲間を大切にしてくれるし。
「なので、現在はこのクロスボウと矢の劣化設計図を他の商会に裏で横流しし、流通してきたところでスペックの良いわたくしどもの商品を販売する計画を段取りしておりますわ」
前言撤回。やっぱりこの子は真っ黒だ。
階段をのぼりきると、突然大きな部屋に出た。
右を見ると、女神像と燭台、聖書台のようなものがある。なんていうか、祭壇のようだ。荘厳な雰囲気。
「ここが終点ですわ」そうか、一息つく。
「リラックスしすぎるなよ。罠があるかないかわからないからな」とハーヴェイから注意。
「ん、財宝はどこ?」
「はい。それはですね、みなさん、あちらをご覧ください」
全員が同じ方向を見る。なんだ? 別の部屋への入り口があるな。扉はついていない。
安全を確かめながら向かうと、その部屋には確かに財宝が入っていそうな石櫃があった。
だが、それ以上に目立つのが……
「はいみなさん、間違っても部屋の中には入らないで下さいね。今から説明をしますから」
うん、その説明、嫌な予感しかしない。なぜなら、入口から見えるのだ。
石櫃以上に目立つ、全長4mほどのガタイのいい石像が。
「予想はついているでしょうが、部屋に入るとあの石像が動き出します。ゴーレムというやつですわ」やっぱり。
ちょっと4mのゴーレムは倒しようがないぞ。まず剣が通りそうにない。
師匠くらいの実力があれば切れるんだろうけど、師匠は確かゴールド級で引退したと言っていた。
つまりオレたちじゃ実力が全然足りない。
「わたくしどもの調べでは、倒す必要はなく、3分ほど耐えればいいそうなのですが何か良い方法はあります?」
おっと、倒さなくていいだって? ハーヴェイとシイナがオレを見てくる。うん。多分大丈夫。できる。
オレは身体をほぐすために軽く運動を始めた。
「あら、テイルさん、何か良い方法をお持ちですの?」
「ん? 普通に3分耐えるだけだぞ? いい手段も何もない。シイナ、〈
「ん、『偉大なるマルクト神よ。〈
「ちょ、ちょっと待ってください!? ホワイトが4mのゴーレムに3分も耐えられるわけがないでしょう!? ミンチにでもなりたいのですか!? シイナさんも奇跡なんかかけてないで注意してください! ほら、ハー様も止めますわよ!!」
「いや、止まるのは君だ。ユイミ」「ん、テイルに任せておけば大丈夫」2人に両肩を掴まれるユイミ。
「よし。じゃあ行ってくる」「ちょっとぉ!? 待ちなさい! 勝手に死ぬとか許しませんわよ!? 止まりなさい!」
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