第19話
オレ達がカフェに入ると、既に話を通してあったのか、ウェイターさんが案内してくれる。
「おやおや、皆さん、凛々しいお顔になりましたわね。特にハー様、その美しさは反則ですぅ♡ わたくし、今にも気絶してしまいそう」
目的の人物は、他に客の見られないガランとしたカフェのほぼ中央のテーブル席に座っていた。
「ユイミ。話したい事がいくつかある。相席していいかな?」
「良いもなにも、わたくしがハー様の頼みを断るわけがないではありませんか♡ どうぞどうぞ」
ユイミの陣取っていたテーブル席は広い。6人か8人掛けだ。
オレ達はハーヴェイを中心にしてユイミの向かい側に座る。
「さて、何から話していくべきかな」
「ふうむ、話題に悩んでいらっしゃいますの? では、先にこちらからお話してもよろしいですか?」
先に話すって遺跡のことだろ、とは思ったが、ハーヴェイはよろしく、と先を促す。
すると、ユイミは楽しそうに目を細めて告げる。
「ハー様たちは、南西の村の御出身ですわよね。道場が大きく、村の方の大半が戦える所だと聞いております。そして貴方がたは、先ほどの宿で冒険者の実態がご自身の思っていたそれと大きく違うことを知ってしまった。そこで冒険者になることをやめた」
とみましたがあっておりますか? そういって、ユイミは目の前のお茶を口に運ぶ。
オレとシイナが目を見開く。え? なんでわかったの?
するとユイミはその表情を読み取ったのか、
「その
と、こともなげに言う。
ガントレットと片手剣は一目みれば分かるとはいえ、剣術タコだって?
オレ達は全員グローブをしているのに、その上から見抜いたっていうのかこの子?
驚きが隠せない。
「そして、こういう言い方は失礼にあたることを承知で言いますが、必ず問題を起こすのですよ。南西の村の方々は。同じ理由で」
それは痛いくらいにわかる。ずっと同じ道場で剣を振った兄貴分たちがあんな所に所属しているとは到底思えない。
「そこまでわかってくれているのなら話は早い。ではまず質問からいいだろうか?」
このことが分かっていたのか、ハーヴェイは動じていない。
ユイミはどうぞどうぞ、と嬉しそうに先を促す。
「質問1。僕たちの先輩はどこに行ったのか」
「その質問に答えるためにはわたくしのカードを1枚切らなくてはいけませんわね。まぁ良いでしょう」
ユイミは手を顎の下で組んでうろんな笑みを浮かべて質問に答える。
「回答1。わたくしどもが仲介いたしまして、半分は他の大陸に。もう半分はここからかなり北のとある場所に集まって頂いてます」
「質問2。彼らの仕事は?」
「回答2。問題なく冒険者をやってもらって頂いてます。もちろん、あのような腐ったものではなく、彼らの理想に沿う形のものを。ただ、ここから北に集まって頂いた方にはそれ以外の事もやって頂いているのが実情ですが」
「質問3。君の受けてきた依頼一覧を見させてもらった。どういう意図であれらの依頼を選んだんだ?」
「回答3。そうですね。半分は趣味のため。もう半分はお金儲けのためでしょうか」
「ん? お金儲けのため? ならあいつらみたいに簡単で報酬の高い依頼を受けた方がいいんじゃないか?」オレは思わず口を出してしまう。
ユイミはオレの事を一瞥すると、
「彼らとは考え方が合いませんので」そういってお茶を飲む。
「テイル。すまないがその質問は後にしてくれ。それに、彼女と話していればおのずとわかる」ハーヴェイに叱られた。ごめん。
「うちの仲間がすまない。さて、質問4といこう。遺跡の調査はどのくらい終わってる?」
へ? ハーヴェイそれどういう意味?
「いえいえ。回答4。ほぼほぼあらかた、とでも申しておきましょうか」
い、意味が分からない。
「テイル、彼女は冒険者としてはソロなんだが、実際にはソロじゃないんだ。彼女の後ろにはとんでもなく大きいバックがいる」
「あらあら、そこまで見抜いているとは、さすがハー様ですわね。惚れ直してしまいそうですわ♡」
「キミがカードを切ってくれたからな。その代わりと言ってはなんだが、僕たちはまとめて3枚カードを切ろう」
ハーヴェイが指を3つ立てる。ユイミが微笑む。
「僕たち3人を好きなように使ってくれ。その代わりとして、キミのバックの名前を教えてほしい」
えええええ!? 内心で絶叫する。いや彼女の仲間になるって話はしたけど、そんな事言ってないぞ!?
この子腹黒なんだろ!? こんな奴隷契約みたいなこと言って大丈夫かよハーヴェイ!?
「いいんですの? おふたり、特にテイルさんは納得してないご様子ですが。それにその後のおふたりの暴走を抑えられます?」どうやらシイナも驚いていたらしい。
「問題ない。僕はそのくらい2人を信頼しているし、2人も僕のことを信頼してくれている。テイル、シイナ。これから彼女の言うことに決して驚くな。そして、間違っても敵視するな。彼女は味方だ」
ハーヴェイにそこまで言われてしまってはもう黙るしかない。驚かない。敵視しない。よし。
シイナのことをみると、こくりとうなづいていた。
「ではお話しましょう。わたくしは商会の人間です。イグドラシル商会。ご存知でしょうか?」
えええええええええ!? オレはなんとか声こそ出さなかったが、目玉が飛び出そうになるのを抑えられなかった。
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