第8話
エイミさんの家に案内してもらって、彼女をベッドに寝かせる。
「朝には痛みが引くはずだけど、それまでは出来るだけ横になってて。立ち上がる時は杖を使う事。念のため、明日また患部を確認するから」
シイナが静養の際の注意点をエイミさんに伝える。
「エイミの事、本当にありがとうございます。……しかし、2人が亡くなってしまうとは……」
エイミさんの父親の町長さんが礼を言ってくれる。そう、エイミさんはなんと町長さんの娘さんだったのだ。
「それなんですが……」
ハーヴェイと町長さんが話し合う。エイミさんが時々状況の補足をしてくれる。
この街は(オレ達、というか主にハーヴェイが推測してた通り)定期的に森の幸を採って成り立っていた。
森に入るのは当番制で、採集役の非戦闘員1人に護衛が2人つくのが慣例で、今日もそのように森に入ったそうだ。
だが、護衛が不注意だったのか実力が足りなかったのか、3匹のゴブリンに襲われて殺され、エイミさんは命からがら逃亡した、という事らしい。
「……わかりました。その仕事。僕たちでやり遂げましょう。先ほども話した通り、我々は見習いなので報酬は結構です。
今日はもう陽が暮れるので、明日取り組みます。明日僕たちが帰ってこなかった場合は正式に冒険者に依頼してください」
さくさくと話がまとまる。よし、明日はゴブリンの討伐だ。
報酬ゼロっていうのはやりすぎな気もするけど、見習いでそもそも相場も知らないし、何が冒険者の規範に反するかもわからないので仕方ない。
後で首都でそのことを伝えた際に報酬の必要がある場合は後日受け取る事で話をまとめた。やっぱりハーヴェイは優秀。
というわけで翌日。
宿は町長の厚意でタダで利用させてもらえた。ありがたい。
今は町長の家の前で、シイナがエイミさんの怪我の確認が終わるのを待っている。と、いったそばからシイナが出てきた。
「ん。エイミさんは問題ない。コブリンの討伐に専念しよう」
「わかった。残りのゴブリンは2匹だったな。さっさと終わらせて死者を弔ってやろう」
「それと、それ以外の脅威がないか森の巡回だな。ゴブリンの集落が2、3あるとは思えないが」
ゴブリンを相手に森に入るのはこれが初めてじゃない。師匠の元で散々やった事だ。
大体ゴブリンは1か月に一度、いつの間にか森に入り込んできて2~3匹の集落を作る。
だから、オレ達は2週間ごとに森の巡回をしてゴブリンを討伐していた。
巡回はみんな仲のいい奴に声をかけてパーティを作っていたから、オレ達もその例にならってオレ、ハーヴェイ、シイナ(毎回ハーヴェイが声をかけてくれた)で組んでいたので、連携も問題ない。
森へ採集に行くのは週に1度と聞いていたから、集落は恐らく1つだけ。昨日1匹倒しているので、残りは2匹だ。
……あとから思えば、この思い込みが失敗の最たる原因だったんだろうが、そんなこと今は知る由もなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます