第6話
シイナの作ってくれた昼食を食べ終わった後、オレ達はその場をすぐには動かずに、各々が楽な姿勢でくつろいでいた。
食事をとったあとは、すぐには動かないでしっかりと休む。
すぐに動くと、食べ物がまだ腹に残っているせいで動きが悪くなるし、そういう時に腹に攻撃を喰らうと普段よりずっと死にやすくなるからだ。
と、師匠に散々口酸っぱく言われたので、3人の中でこれはもはや鉄則だ。
なんで死にやすくなるのかはわからないけど。
「ええと、今日の目標の隣街まで、あとどれくらいだ? 前に行った感じだともう半分以上きてるハズだけど」
残念ながら、オレは地図を読むのも苦手だ。本当に1人じゃ旅なんて出来ない。
「んー、街道沿いの森も見えてるし、あと小1時間も歩けば見えてくると思うぞ。……うん、合っている」
ハーヴェイがこたえてくれる。地図を取り出して確認までしてくれた。ありがたや。
「ん。順調。このまま行けば、陽が暮れる心配しないで到着できる。予定通り」
昼食の後、シイナともだいぶ昔通りに話せるようになってきた。
相変わらず目は合わせてくれないけど。
「確か、まず隣街で1泊して、その後首都につくのが夕暮れ時になるんだっけか?」
「ん。合ってる。テイルにしては物覚えがいい。だから、隣街でしっかり身体を休めないといけない。夜になる前に首都に着かないといけないから」
「そのへんどうなんだ? オレは隣街までしか行ったことないからわからないけど。確かハーヴェイもそうだよな?」
「そうだな。この3人で首都まで行ったことがあるのはシイナだけだ。」
そういって、シイナに視線を向ける。
「んー。そんなに余裕はないけど、無理をする必要もないと思う。この中で一番歩幅が短いのは私だけど、前に行った時もそんなに無理はしてないから」
「それで首都に着いたら冒険者登録をして、宿を紹介してもらう。それからは晴れて冒険者生活だ。僕たちの夢の第一歩だな」
ハーヴェイのセリフにシイナと二人でうなづく。オレ達の夢、か。
そういわれると照れくさいけど、やっぱりオレ必要とされてるんだな。頑張んないとな!
十分な休憩をとったオレ達は、それぞれが荷物をまとめながら出発の準備をしている。
「しかし、この道を通るたびに思ってたけど、なんで街道沿いに森があるんだろうな。確か隣街まで続いていたろ? 危険じゃないか?」
森や崖、洞窟なんかはモンスターや獣が集まりやすい場所だ。街も村も街道も、例外が無ければ避けて通る。はず。オレの個人的意見。
「そうだなぁ。森で採れるなにかが収入源なのかもな。確かあの街、薬草が安かった気がするぞ」
薬草。冒険者の御用達アイテムの一つ。
そのまま使っても傷の治りが早くなるが、本領は薬品として加工されてからだ。
軟膏、ポーション、毒消しや果てはエリクシルの材料にまで使われてるって話だ。
多分だけどとんでもない量が流通してる。
となると、やっぱり薬草の群生地の近くに人の住む所は必要なんだろうな。
「ん。実際事件は多いらしい。うちの村からもよく人が向かってる」
ああ、そういえば小さい頃両親に連れられて何度か隣街にきて、それで一人で道場に放り込まれて知らない子たちと模擬戦をしてたっけ。
その間、両親は森に入って事件を解決してたってことか。今知って少し驚いている。
「今日は何も起きないといいなぁ」
「何も起きないに越したことはないけどな」
「ん、『冒険者たるもの、いつなんどきも何かが起こると思うべし』」
ぐ。痛いトコをつかれて唸る。
まぁ、何か起きたとしてもよっぽどの事が無い限り問題ないだろう。
ハーヴェイとシイナがいるし。一応オレも戦力として見られてるみたいだし!
さて、準備も終わって全員背負い袋を背負ったのを確認すると、お互いの顔を見てうなずいて街道沿いを歩こうと……
「ん? 待て。森から誰か出てきたぞ。こっちに向かっている」
ハーヴェイが異常に気付く。
「まって」直ぐにシイナが望遠鏡を出して状況を確認してくれる。
「ん。女の人! 何かに追われてる……ゴブリン! 3匹! 転んだ! 危険!」
「助けるぞ!!」
全員で背負い袋を放り投げて、女の人の方に走り出す!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます