第3話
オレがシイナに罰の布洗いを命じられて小一時間。ハーヴェイは楽しそうに手伝ってくれている。
「しっかし……シイナも毎回毎回酷くねぇ?罰だのなんだの、何かにつけてはオレに仕事押し付けてきてさー。最終日にまでこれだぜ?ひでぇって」
オレはハーヴェイに今日何回目かの愚痴をこぼす。
「あーあ。小さい頃は良かったなー。覚えてっか? オレ達が遊んでるのを、年下のアイツがいつもちょろちょろと付いてきて」
「ああ、覚えているさ。僕たちいつも三人で一緒にいたよな。シイナが神さまに見初められて、教会に入るようになってあんまり遊べなくなったが」
「……まぁ、アイツの苦労もわからないわけじゃないぞ?ただでさえ道場の手伝いがあるのに、なまじ奇跡なんかもらったせいでシスターまでやることになって、大変なのは、まぁ、わかる」
「お?僕の言いたいことを初めて先取りしてきたな?まぁ、このやり取りも何回目かわからないものな?」
ハーヴェイが布を干しながらけらけら笑う。そう、いうとおりこのやりとりは一度や二度じゃない。
オレがシイナに仕事を押し付けられて、それをハーヴァイが手伝う時の毎度のやりとりだ。
「だから、こうやって仕事を僕たちに振ってくれるっていうのは信頼されてる証拠だよ。テイルだってわかっているだろ?」
「そうなのかぁ? それならこう、頼み方、ってのがあるだろー? 毎回毎回不機嫌そうなツラで仕事押し付けてきやがって。昔は可愛かったのになぁ」
「はいはいいつものいつもの。……よし、これで最後だな。テイルはこの後どうする? 夕食は師匠の家でとるんだろう?」
「あー。とりあえず家に帰って、明日からの荷物を再確認して、少し休んだらその後師匠んちだな」
そう、この後、これからの旅立ちへと、師匠がささやかな宴を開いてくれることになっているのだ。とはいっても、何も特別な事じゃない。
この村から旅立つヤツには必ずやってくれる、師匠にとっては恒例の行事だ。
明日旅立つのはオレ、ハーヴェイ、シイナの3人。普段は1人か2人だから、始めからパーティを組んで出発という意味では珍しいのかもしれない。
他の道場のヤツらにはもう別れを伝えてある。道場首位のハーヴェイと、シスターであり剣にも秀でたシイナ、そして誰にも勝てないオレ。
どう考えても一人じゃどうにもならないオレのために二人がついてきたようにしか思われない。ああ、惨め惨め。
シイナの押し付けた仕事を終わらせたオレたちは、いつものように気軽な別れの挨拶をして、家に帰った。尤も、すぐに夕食で顔を合わせるんだが。
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