第23話
「私の敗け、ということですね……」
剣神はダブケリスの顎から剣を引く。
「剣を授かるにふさわしいと認めよう」
剣神は大剣を腰の鞘へ持っていくが、どう見ても鞘に収まるような大きさではない。しかし大剣は唐突に消え、その手には槍が握られていた。
「お前にはこれを授ける。受け取れ」
「しかし……私は敗けたのでは?」
「俺に勝つことが条件じゃねえ。剣に認められるかどうかだ」
片手で突き出された槍を、ダブケリスは両手で受け取る。
古めかしい槍だ。木の実形の穂先の根元に、蔦模様の装飾があるだけの簡素な見た目。全て金属で作られていて、鈍い銅色だがまさかそのまま銅で作られているわけではないだろう。
「この槍はだな……ゼッジ! 教えてやれ!」
「これは【戦士の槍】神話時代の初期、多くの善き神と悪しき神が戦いを続け、大地が魔物で溢れていた。国というものはなく、人は集落単位で怯え暮らしていた。ある集落の近くに悪しき神が現れる。それを倒すため一人の戦士が向かった。彼に贈られた十一本の槍のうちの一本。人が人の力のみで初めて神殺しを成した武具」
「戦士の槍……」
神殺しの武器となれば、まさに神話のなかにしかない伝説だ。
震えそうになる指を抑え、強く握る。
「じゃあな。槍に見放されるなよ」
唐突に剣神は光とともに消えた。
「ダブケリス様!」
「ルイレ……これは現実なのだな……」
二人は確かに存在する戦士の槍を見る。
「俺の用はこれで終わりました」
その声に、ルイレは急いで振り向く。
「待ってくれ! 君は一体……」
「俺は【剣神の裁定者】剣にふさわしき者か裁定する者」
ゼッジは背中を向けると、木々のつくる闇の中へ消えていった。
翌日、多くの騎士たちが訓練するなかにダブケリスの姿があった。
その手には【戦士の槍】が握られている。
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