第16話

 ここは騎士団の詰所。石とレンガが積み上げられた大きく頑丈な建物で、多くの騎士が毎日ここで業務を行ってる。訓練場もあり、広場となっていて多くの騎士たちが訓練をしていた。そのなかにルイレの姿もあった。

「ふっ、ふっ」

 槍を突き出し戻す。右に払いまた左へ。素早い三連続突き。様々な動きを何度も繰り返す。ルイレがダブケリスから教えられ、彼の動きに近づけるため何年も続けている鍛練だ。

「ふう」

 ルイレは腕で顔の汗をぬぐう。その顔には鍛練を終えた爽やかさは無く、眉間にしわを寄せて憂いのある表情を浮かべていた。

「ダブケリスの弟子は今日も一人で稽古かー?」

 その声にルイレの眉間のしわは深くなり、憂いではなく怒りが顔に浮かぶ。

「そうだが何か?」

「かわいそうだな。猛将ダブケリスも老いには勝てないか。耄碌もうろくダブケリスと呼んだほうがいいか?」

 ルイレと同年代の騎士数人が笑う。敬愛するダブケリスが馬鹿にされ、一気に頭へ血がのぼる。大股で近づくと胸ぐらを掴む。

「その口を閉じろ、ゲスがっ!」

 騎士たちが気色ばむ。胸ぐらを掴まれた騎士は、口を曲げてこちらを馬鹿にする笑みをつくる。

「俺たちを一人で相手するつもりか? さすが猛将の弟子なだけはあるな。状況判断もできないらしい」

 ルイレは顔を殴り飛ばした。

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