第4話
途中で老人と別れると、シーヤとゼッジは徒歩で街へ向かった。
「日が沈む前には街に着くって言ってたね」
「ああ。行こうか」
二人は言葉少なく黙々と歩く。シーヤはミラのことが気がかりで、会話をする余裕がなかったのだが、ゼッジはというと会話がないことを全く気にする様子もなかった。
そして歩き続け、二人は街に到着した。
「大きい……」
シーヤはずっと村で暮らしていたため、街を囲むレンガを積み上げた背丈の二倍以上もある防壁を、驚愕の表情で見上げていた。
「シーヤ、行こうか」
「ま、待ってよ!」
街の門には大きな両開きの分厚い扉があり、そこを何人もの兵士が守っていた。シーヤはその迫力にビクビクしながら進んだのだが、特に荷物を調べたりされることもなく、腰の剣をちらりと見られただけで簡単に街の中へ入ることができた。
「じゃあシーヤ。俺は行くところがあるから」
「えっ?」
ゼッジはそう言うと軽く手をあげて去っていった。突然のことに立ち尽くしていたシーヤが追いかけようと思ったときには、人混みのなかに紛れてしまってゼッジの姿は消えてしまっていた。
「どうしよう……」
村ではありえない人の多さと、どこに何があるのかもわからない初体験の大きな街に、シーヤは絶望しながら周囲を見回した。
持っている金は薬を買うためなので、それを使って宿に泊まるわけにはいかない。夜になる前に薬を買えればと思ったが、迷子になってしまい薬を売っている場所もわからず夜になってしまった。仕方なく建物と建物の狭い隙間で、マントにくるまって寝ることにした。
「とにかく薬を売っている場所を見つけないと」
翌日シーヤはセキア病の薬を探して、ただひたすら歩き回る。しかし初めての人混みで、何度も人にぶつかっては謝り、いつの間にか流されて目的の場所に行けなかったり。いつの間にか太陽は頂点をすぎている。
「はあ……どうしよう」
いつの間にか人通りの少ない通りにいたシーヤは、肩を落として足を引きずるようにして歩いていた。
なんとかミラを救いたい一心でここまで来たが、自分には無理だったのかと諦めかけていたそのとき、一軒の店が見えた。そこにある棚やカゴには何種類もの植物の葉や茎が並べられていた。
「もしかして!」
シーヤの村には病気や怪我のとき薬草を使って治療してくれる老婆がいた。その家にも同じように葉などが置いてあったので、あそこならセキア病の薬があるかもしれないと思った。
「セキア病の薬はありますか!」
「うわっ!」
突然飛び込んできて大きな声を出したシーヤに、この店の店長である太った男は驚いて、指でつまんでいた銀貨をカウンターの上に落としてしまい、慌てて手で押さえた。
「急に大きな声をだすなっ!」
「す、すいません……でも、セキア病の薬がほしくて……」
「セキア病?」
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