題:5
昔から早起きだけが自慢やった。
「何処やねん、ここ……」
薄暗い部屋ん中、知らんヤツらが周りで寝とった。でも、俺はこんな光景を知っとる。よう読んどったデスゲームだとか、サバイバルホラーもんの場面そのものや。で、こういう時、俺みたいなやつは最初に死ぬ。突然現れた化け物に食い殺されるか、アホみたいな罠に掛かって死ぬんや。
「嫌や。そんなん嫌や」
俺はあのまま安全な部屋ん中に引きこもっていたかっただけやのに。こんなことならもっと鍛えとけば良かった。近くでイビキかいとるマッチョみたいに筋肉があればマシな活躍が出来たやろうに。でも駄目や、今からじゃ遅すぎるわ。
あぁ、オカン……ごめんなぁ。こんな息子で。頼りなくて、アホのくせして怠けもんで。結局、何の親孝行も出来んかったなぁ……。いつの間にか自分の手も涙で見えんくなっとった。
「なんや……?」
手だけやない。全身が透けて見えんくなっとる。透けとるというか、周りの色に合わせて体が色を変えとるみたいやった。
「たこ焼きの食いすぎやろか……はは、タコみたいになってもうたわ……」
でも、これなら隠れられるわ。俺は部屋の隅に膝を抱えて丸まった。俺は絶対生き残る。ここに隠れとけば無敵や。雷様でもへそが盗れへん。
何回も触られて、叩かれて、蹴られて……聞こえてくる声にも耳塞いで、ようやくなんも聞こえんくなった。
……なんか暑いなぁ。なんやろか、他の奴らが動きすぎて室温が上がったんとちゃうか。それにしてはなんか寂しいなぁ。あんまり暑いと俺、真っ赤な茹でダコになってまうで。
……オカンのたこ焼き食いたくなってきたなぁ。
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