第20話 2号炉、臨界
「暴食…」
…おそらくこの「暴食」とやらがシルバー王国を襲った魔王軍の幹部なのだろう。
『近衛騎士団出撃せよ!』
と、皇帝の号令が響く。
すると舞台に白い鎧を身にまとった騎士たちが空を飛んでくる。
そして暴食を包囲するように移動する。
「ふむ?ワレの相手はこ奴らか?」
近衛騎士…か。
…にしてもこいつ随分余裕そうだ。
「そちらで疲労困憊の人間2体がユニークスキル持ちなのだろう?ふはは楽な戦いになりそうだな」
なるほど、ユニークスキル持ち二人が戦闘不能なとこを選んできたってわけね。
と近衛騎士の中で一人、他と比べより豪奢な鎧を身に着けた男が前に出る。
「私の名はザギル…近衛騎士団団長であり…貴様を討つものだ!」
あれが…近衛騎士団団長。
「ワレを…討つ?ふははは、それは面白い…お前程度が、か?」
近衛騎士団団長ザギルは暴食の言葉を無視して剣を構える。
その剣はまるで夜空のように黒い刀身を持っていた。
…なにか特殊な剣なのだろうか。
「…あれはインペリアルソードだよ」
と、私を横に下ろしたプライムがそう言う。
何とも安直なネーミングだね…。
「知っているのか雷電」
「は?雷電?誰」
「あ、何でもないです」
やばい、突然異世界の知識が…というか雷電ってマジで誰?
「…まあいい…あの剣には強力な破邪の効果が付与されているんだ」
「…へぇー、そうなんですか」
と、小声で話していたが。
「…いざっ!」
ザギルが暴食に向け突撃していく。
ザギルが振り下ろした剣を暴食はどこかから取り出した剣で受け止める。
…うーん、やはりユニークスキルを持ってないとこの程度の踏み込み速度か…。
あれ?あの暴食が持っている剣見覚えが…あれは。
「…クルトさんの剣」
「クルト…大剣聖のかい?」
「…はい」
あれはクルトさんの剣つまり…。
とザギルと戦っている暴食が言う。
「そうだ!よく気が付いたな!大勇者の娘よ!ワレは大勇者以外の勇者たちをすべて食った、そして奴らのユニークスキルを手に入れたのだ!」
…クルトさんとソフィアさんとラルフさんを…食った?しかもユニークスキルを…奪った?
…なるほど、だから暴食か。
「故に…」
突如、暴食は動きを止める。…何故?
「…ふっ!」
当然のようにザギルのインペリアルソードが暴食を切りつける。
「馬鹿め!破邪の効果で滅びるがいい!」
そうザギルは勝ち誇るように言う。
しかし…インペリアルソードは…暴食の甲殻を一切傷つけられない。
「…なぜだ!」
ザギルが驚愕の表情で言う。
「…馬鹿は貴様だ…ワレは言ったろう?ユニークスキルを奪ったと?」
「…まさか」
「ユニークスキル『大聖女』、その加護により我に破邪の効果など聞かぬわ!」
瞬間、暴食はザギルを拳で殴りつける。
「ガハッ!」
そのままザギルは鎧の破片を飛ばしながら吹き飛んでいく。
そして観客席の下の壁に激突し…動かなくなる。
観客たちの悲鳴がこだまする。
…いや、近衛騎士団団長…普通に負けてるんだけど。
「…お兄様」
「…はは、相変わらずのプライドだけは一人前の役立たずだね…近衛騎士団」
…護衛対象にめちゃくちゃ辛辣な評価されてる…近衛騎士団…。
というか、ここのところ私の中での帝国の評価が下がる一方なんだけど…大丈夫かなこれ。
「だ、団長!…クソ、囲んで叩くぞ!」
近衛騎士たちがそんなことを言いながら抜刀する。
…近衛騎士…なんか雑魚盗賊みたいなこと言ってるけど…。
「…お兄様、戦えますか?」
「…遺憾ながら…スキルのクールタイム中だから…無理だね」
若干顔を歪めながらそう言うプライム。
…ふむ、プライムはもう当てにならないと。
さらに私の原子炉は致命的なダメージをおって再起不能…ね。
「…カッ!」
「「「「うわああああ」」」」
と丁度、近衛騎士たちが暴食の放った衝撃波でまとめて吹き飛ばされた…もうやめたら?近衛騎士。
「…さてワレはもう雑魚共の相手はあきた!さっさとメインディッシュを頂いて、帝都を滅ぼすとしよう」
そう言いながらこちらに向かってくる暴食。
「…ここまでか」
プライムがそう諦めたよう言う。
「諦めるのが早いですね、お兄様?」
「…なに、奥の手を使うさ、相打ちになるだろうけど」
奥の手があるのね。
相打ちに…か。
「ほう、面白い!プライム・アイアン!受けて立つ」
「ニア…」
「…どうしましたかお兄様」
「…帝国を、頼んだよ」
…プライムが死んだら帝国のユニークスキル持ちは私一人になってしまうからね。責任重大だ。
だが…。
「お断りします」
「…なぜだい?」
「それはですね、暴食は私が倒すからですね」
「…は?」
困惑するプライムを無視して…起動する。
2号炉を。
2号炉全制御棒引き抜き、出力上昇、臨界、出力100%、定格運転、安全装置解除、出力さらに上昇、臨界超過。
別に…私の中の原子炉が一つだけと言った覚えは…ないよね?
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